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第四十話

「具体的には何をしたんだ?」

 俺は出来る限り冷静を保つように心がけた。

「この宿舎に送られる食料物資が人数より一人分多く搬入されていたそうよ」

 一人分。軽く聞こえるが、物資が限られているネフェティアでは決して少なくない数だ。食料は家事で定められた数が生産から各宿舎へと届けられるシステムになっている。大人子供、男子女子でそれぞれ量が変わってくる。

 そしてこの宿舎の食料の管理は桜がやっている。家事に所属しており実際に料理をする人物が把握した方が良いというのと、桜自身が立候補したからだ。つまり桜以外の居住者は自分達の宿舎にどれほどの量の食料が運び込まれているのかを把握していないということだ。

 それが仇となった。今回の事件、管理を桜に一任していたため、状況的に桜に犯行は可能である。詳しいシステムは知らないが、家事の桜ならば発注の数を変えることも出来ただろう。疑われる要素は十分という事だ。

「でも桜がやったっていう確実な証拠でもあるのか?」

「そこまでは知らないわ。でも、桜以外に疑われている人間がいない事、更に物資が多く運び出されていた事実。例え真実がどうであれ、結果は変わらない。もう時間の問題よ」

 見せしめ、その言葉が俺の頭の中に浮かんだ。再び同じような事が起きないようにそれなりの罰を与える。

「ふざけんなよ……」

 俺はふつふつと湧き上がる怒りを抑えようと必死だった。

 あの桜が罪に問われる?一緒に食事を取らないだけで拗ねて、朝ちゃんと起きないだけで頬を膨らませるほど俺たちを大事に考えている桜が。誰よりの俺たちの事を考えてくれる桜が。

「……」

 俺は立ち上がり、ドアの前へと進んだ。

「止めなさい。今行った所で門前払いが目に見えているわ」

 俺の意図を察したのか、恵理が声を張り上げる。恵理の言う事が正しいことであるのは分かる。そんなことは分かっている。だが、そんなもの俺には関係無い。そんなもの止まる理由にはならない。

「麻斗!」

 恵理が似合わない大声を上げる。だが誰が邪魔をしようと、俺は進むつもりでいた。

 するとドアノブに手をかけようとした時、独りでにドアが開かれた。

「はいはい、そこまでにしとこうぜ」

 陽気な声と共に、部屋に入ってきたのは総樹だった。俺を通さないとでもいうのか、ドアの前で仁王立ちする。

「悪いが総樹、そこをどいてくれ」

「ここを通りたければ俺を倒してから行け! か~、言ってみたかったんだよねこの台詞」

 総樹はやんちゃ坊主のように無邪気な表情で笑う。今はその笑顔が憎たらしい。だが大丈夫だ、理性はまだ保てている。

「総樹、冗談に付き合っている暇は」

「冗談じゃねえよ」

 少年のような笑顔が一瞬にして豹変した。ドスの利いた鋭い表情。頭半分上から見下される威圧感。一切の笑みは消えていた。

「桜の事は聞いてる。だが、今は冷静になれ。殴りこんでどうこうなるものでもない」

 元々大きい総樹の体ではあるが、今は部屋の入り口を一切の隙間なく覆い隠している錯覚を覚える。ボクシング経験者という事で総樹の喧嘩の強さは俺もよく知っている。

 過去に発狂した人間を鮮やかにノックダウンさせたのは今なお語り草だ。

 そんな総樹と俺が対峙している。十割で俺が負けるだろう。俺が力ずくで通ろうとも、直ぐに総樹に捕まり、鳩尾を殴られるビジョンが見える。

 だが、それが逆に俺の感情を高ぶらせた。

「何でだ、何で邪魔をする。今こうしている間にも桜は苦しんでいるんだぞ!俺が、俺が傍にいてやらないと!!じゃないと!!」

「冷静になれ麻斗!!桜はお前の妹じゃない!あの時とは違うんだ!」

 次の瞬間、俺の意識は突然ブラックアウトした。

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