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第三十三話

 研究と教育を訪れた後、警察に向かった俺たちは他の組織と同じように待合室で待つよう伝えられた。

「麻斗、私はちょっとラフレシアでも摘んで来るよ」

 待合室に向かう最中、夕月は突拍子もないことを言い出して俺とは別の方向に進んで行った。

 いや普通にお花摘みに行くで良かっただろ、という突っ込みは空振りに終わった。他の場所で確認してもらっている時に暇そうにしていたので、無理に付き合わせるのも悪いと感じた。

 一人で待合室までの廊下を進んでいると、進行方向に総樹の姿を見つけた。職場が警察なのだから見かける可能性はあるのだが、なんと今の総樹は仕事中にもかかわらず二人の女性と仲良く談笑している。

 社交性があり顔もいい―友人としては性格難―総樹は中々モテるのだ。

 仕事しろよ!と声をかけるのも無粋だと感じ、俺はわざわざ迂回しようと体を反転させる。

「あ、おい麻斗!」

 なんでお前はそこで俺を呼びとめるかな。俺の気遣い空しく、総樹は女性に別れを告げて、俺に向かってくる。

「なんだよ来たんなら声かけてくれよ」

「いやいやあの空気で声かけるとか、流石の俺でもそれぐらい読めるぞ」

 どちらかと言えば空気読めてないのはお前の方だがな。

「ンなこと気にすんなって、俺とお前の仲だろ?そんで、何しに来たんだ?」

「スポーツ大会の企画書の確認。こっちのミスで遅れたから俺が直接出張ってるの」

「あぁ確かに何も指示受けてないわ。大変だなぁ副代表様は」

 人の気も知らないで総樹は爽快に笑った。

 ちょうどいい、ここで確認させてもらおう。

「なぁ総樹、ちょっと時間いいか?」

「ん?まぁ今は休憩だし話するぐらいなら大丈夫だが」

「ならちょっと耳貸してくれ」

 事が事だけに大きな声で聞く事はできない。すると総樹は何か納得したように数回頷いた。

「お前が何を聞きたいかが分かった」

「マジで!?」

「あったぼうよ。俺を舐めるんじゃねぇ」

 総樹は偉そうに胸を張る。

「でもお前守秘義務って知ってるか?」

「人並みにはな。でもそれを承知で聞いてるんだ」

 本来なら警察が行っている捜査に外部の俺が首を突っ込むのは論外である。今の俺は組織間の過度な干渉をしないという決まりに明らかに違反している。それは当然理解している。

「まっ、そうだよな。お前がこういったことを放っておけない奴だって分かっているから、俺もお前が何を聞きたいか分かったんだからな」

 仕方ないと言うように総樹は呆れたため息を吐く。

「悪いな」

「いいさ、俺としてもお前の意見を聞いてみたいからな。それでだ。率直に言うとお前が聞きたい神隠しの件について大きな進展は合った。それもかなり大事だ」

「なんだ?」

「一晩だけで五件。昨日話した神隠しと同じ事件が上がってきてる」

「五件!?いくらなんでもそれは」

「あぁ流石にありえないと思ったよ。だけど大マジだ。被害者の共通点も何もない。強いて言うなら全員が問題とされる行為を何もしていないってとこだよ。警戒令をしいた途端にこれだ。警察の面目丸潰れだよ」

 経った一晩で五人が消えた。これはいくらなんでも異常である。

 俺の考えならこの件は俺以外の誰かが仕組んだことだ。そうするとその誰かは一気に五人を殺したと言うことになる。

 果たしてそれが可能か。誰にも見られず気付かれず、いつもより警戒が強い深夜に五人の人を殺す。

 常識なら不可能。

 しかし俺なら、俺ならそれを可能とする力を持っている。それはつまり、その犯人も俺と同等の力を持っているということ。俺や伊織と同じ、世界を少しだけ変えられる力を。

 これは思った以上に大変な事態になっているようだ。

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