第二十九話
人間とは不自由の中に自由を求める生き物だ。
二日後、俺は目の前に積み重ねられた書類を見て、切実に感じた。昨日は暇すぎて何もやる事がないと愚痴って、最終的に残業まがいの行為に走った。自由の中で、不自由を求めたと言う事だ。そんな俺だが、今はすぐにでも仕事を放り出したい気持ちに襲われていた。
「ごめんね麻斗君」
目の前の女性は胸の前で手を合わせ、頭を下げた。遊軍の構成員の1人である。
「まさか麻斗君の所にスポーツ大会の書類が回ってないなんて思って無くて……ね?」
テヘッと舌を軽く出し謝罪をされた。ね?じゃ無いんですよ!!
「俺もそういや話が来て無いなとは思ってはいたんですよ」
苦笑いをしながら書類をペラペラとめくる。これらは二周年式典の前日に行われる、スポーツ大会の詳細が書かれた書類である。スポーツ大会とは閉鎖されたネフェティアでのストレスを解消するために設けられたイベントである。
一つの組織をチームと考えて行われる対抗戦で、競技の総合点で勝敗が決まる。言ってしまえば市民運動会のようなものだ。
本来は月一で行われているものだが、今回は二周年式典と合わせて行って二日間かけての大行事となった。町は賑わい皆幸せ、と言いたい所なのだがこれが逆に問題になった。
二周年式典の雑務を行ってばかりで、スポーツ大会の扱いが雑になってしまったのだ。
遊軍から出される書類は副代表の俺が中身を確認し、印を押して各組織に送り出されることになっている。
だが各組織に送るはずの書類は作成された後、しっかりと俺に送ったものだと思われていたそうだ。それがご丁寧に倉庫の入り口のダンボールに入ったままでさぁ大変。俺はこれからこの書類の中身を全て確認して印を押さなければいけないらしい。
更にそこから各組織に内容を確認してもらい、そこから修正を加えていく作業が待っている。他の組織への連絡のため手抜きは許されない。遅延していることも踏まえて謝罪の必要があるかもしれない。
「分かりました。後は俺の方でやっておきます」
「ごめんね麻斗君」
「大丈夫ですよ。各組織に直接持っていくので馬の手配お願い出来ますか?輸送よりその場で確認してもらったほうが早いので」
馬はネフェティアの唯一の移動手段である。生産の家畜として飼育されているのもだが、町内には馬道という専用道路も設備されており、タクシー代わりに使われる事が多い。俺も複数の組織をハシゴする時に良く利用している。
「いつものね、分かったわ。任せて頂戴」
「それじゃ一時間後ぐらいによろしくお願いします」
女性は親指をビシッと立てた後、俺の部屋から颯爽と去っていった。俺は早速書類の確認作業に入る。自分で一時間と言ったのだ、それまでに終わりにしなければ。




