第二十二話
俺は二周年式典の書類をまとめていた。俺たちがネフェティアに住み着いて二年になるその日、町総出の祭りが開かれることになっている。規模的には学園祭と言った所だ。その日はネフェティアのほぼ全ての仕事が止まり、住民全てが祭りに興じることになっている。屋台なども出て、ステージでは催し物も行われている。
そこでは伊織のライブも開かれることになっている。これは一周年式典の時からもリクエストが多く、祭りの最後にある特大の花火と合わせて祭りの二大イベントになっている。
そんな大きな行事を遊軍が中心となって執り行っているので、どうしても仕事が多くなってしまう。
役所ごとにまとめた書類には、役割分担や準備等の情報が記載されておりその指示に従って人が動くことになっている。だからこそ、どの役所にどの仕事を分担させるかが重要となる。
後で仕事が多いだのと文句を言われたくは無い。そこから更に個人の屋台などの立地場所の連絡を、個別で行わなければならない。
高校生の俺にこんなこと任せるなよ。とついつい文句を言いたくなるが、元の世界では生徒会長をやっていたという過去を持つので、これといって苦痛には感じていなかった。その意味で俺も遊軍の一員であると言う事だろう。
一段落ついた所で時間を確認する。5時半を回っている、窓越しから見る外はやや薄暗くなり始めた頃だ。今のネフェティアの季節は研究が調べた結果五月になっている。これから更に日が伸びていくというわけだが、流石に夜遅くなるとまだ肌寒い。
恵理を迎えに行く必要もあるので、俺は書類をまとめて仕事を切り上げる。しっかりと部屋の鍵を閉めるのだが、また園が代表室からマスターキーを取り出すのを考えると、なんとも空しい気持ちになった。
遊軍はその性質上、夜中も営業を続けており、二十四時間住民の対応が行えるようになっている。俺は交代で夜間業務に入った同僚と軽く挨拶を交わし、建物を出て研究の本部を目指した。
夕方、この時間になると多くの人々が自分の住居へと帰っていく。夕飯の時間が建物ごとに決められており、それを逃すとお預けを食らってしまうからだ。
俺たちのような少数のところならばある程度融通は聞くが、大所帯ではそうもいかない。1人のペースに合わせていては全体が回らなくなってしまうのだ。颯爽と帰る人々とすれ違いながら、俺は進んでいく。方向的に、俺と併走する人はいなかった。
辿り着いた研究の本部にはまだ煌々と明かりが点いていた。彼等には家という感覚は無く、園や博人さんと同じように仕事場で寝食を行う割合が多い。だからここには食堂が設けられていた。
だがそれにもかかわらず恵理等の本当に生活習慣を省みない人間は、食堂に行くことすら億劫なのか簡易食料で腹を満たしている現状であった。明かりはあるが人の気配がしないほど静寂なこの建物は、一種のホラー的な感覚を覚える。




