陰鬱な目覚め
一日更新で頑張って生きたいと思います
空気の匂いを感じた。
それはつまり、俺は生きていると言う事か。
「はっ……」
理解したその事実に、俺は吐き捨てるように息を吐き、嘲笑した。なんとも言えない虚脱感が襲った。それがたった今目を覚ましたことによるものではないことは分かっている。
自分が生きていたこと、生き残ってしまったこと。そこから来るものだった。後悔、そうとしか表現できない。
今俺はベッドの上に横になっていた。見上げる天井、それは俺が住んでいたあの宿舎の天上に凄くよく似ていた。
ここはどこだ?俺は……一体?俺は東へ進んで、それで……。
思い出そうとしたところで、頭に激痛が走った。そして更なる後悔が一気に押し寄せ、俺の心をまるで洪水のように荒れ散らかしていく。過呼吸になったかのように息苦しく、酷い吐き気を覚える。
分かっていた。自分にとって過去は、ただの自分の歴史を意味しているだけではない。
泣いてしまえばどれだけ楽なのかと思った。思いのたけを叫び散らして悶える事が出来ればどれだけ幸せか。
『私と一緒に居てくれませんか?』
ふと、その言葉が脳内を反響する。自然と言葉にならない感情が込み上げた。それに堪えるようにベッドの中で身を縮め思わず握った拳に、骨が力に耐えられず悲鳴を上げた。
何を間違えたのか、今の俺には分からない。どうすればよかったなど、俺には分からない。
ただ、ただただ悔しくて。何も出来なかった自分が悔しくて。
目の前の不幸を防げなかった自分がふがいなくて。
助けてあげる事が出来なくて。
そして誰もいなくなって。
俺だけが残って。
悲しさと悔しさでとうとう涙が溢れた。救えなかった存在を思い、かつて無いほど胸が痛んだ。心で泣いた。
だが俺の思いは決して届かない。どれだけ省みようとも、失ったものは戻ってこない。あの不思議な空間には決して届きはしない。もう存在しない。俺が生きていた楽園とも、監獄とも呼ばれたあの世界はもう存在しない。あの場所で一緒に過ごした人も皆……。
「……」
嗚咽を交え、俺はベッドにしがみ付くように泣きつく。やがて、泣き疲れた俺の意識は自然と薄れていった。