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あるピアニストのための楽曲  作者: 今日子
第一幕 《逝ける王女に捧げる舞踏曲》
2/34

prolog

少女がくるくると回る。

静かに立っていれば足元まで素直に流れる淡いピンクのドレスの裾が、少女の動きに合わせて軽やかに舞い、踊りに美しい流れを作っていた。

くるくる。くるくる。

その踊りに合わせて聞こえてくるのは、古典的な、しかし美しい旋律だ。

これはなんという曲だったか……。

ただ少女の踊りを見つめるだけだった女の視線に気付いたのか、少女はくるりと向きを変える。その動きに合わせて、ドレスの裾が大きく翻り――その動きに視線を奪われていた女は、遅れて初めて少女の顔を見て、驚愕をあらわにした。何故ならその顔は――。




《逝ける王女に捧げる舞踏曲》

ヴァランタン=レマ(Valentin=Lema)がパトリシア王女の肖像画に刺激を受け、作曲したと言われている。彼の周囲の音楽家、加えて彼自身でさえ評価は芳しくなかったが、繊細な旋律はクラヴィーア曲の代表として今でも親しまれている。晩年、記憶障害を患ったレマはこの曲を聴き、「なんて綺麗な曲なんだろう。誰が作ったんだ?」と言ったという逸話が残っている。(中略)なお、この曲は「死んだ王女に捧げる葬送歌」ではなく「今は死んでしまった王女が踊っていた舞踏曲」であるとレマは言っていたようだ。



「『古典音楽の考察』クヌート=ヴァイスマン著より抜粋」

 


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