(3)オレンジなお知らせ
<※月18日>
仕事から帰ったら、長三形の見た目にも派手なオレンジの封筒が届いていた。
送り先は(財)骨髄移植推進財団。
さらに赤い文字で「重要」「親展」とあれば、もう仕事で疲れた脳みそにも合点がいく。
とりあえず、べりべりと封筒を開けるが、書いてある仰々しい内容と見慣れない単語類をダウンロードするのにしばし時間がかかった。というか、手にのしかかる紙束の厚さがおかしい。重いのだ。
――……食べてからにしよう。
申し訳ないが自分の都合を優先した。
腹ごしらえをして、改めてオレンジの封筒の中身と向き合う――が、やっぱり字が目を上滑りする。
なんだこの問診の多さは。しかも裏表。正直、クオカードでも当たります的なイベントがなければやっていられない。
こういうめんどくさいものは苦手だ。献血は行くのが面倒、その点骨髄バンクは登録さえしとけばいいから楽ちん♪なんて考えていた自分のほっぺたを摘まみ上げたい気分である。
だが、めんどうなものを放置すると後でもっとめんどうになることは、人生経験上よーく分かっていた。さくさく記入して、面倒事は目の前から撤去するに限る。撤去必須な内容は、A3三枚の裏表ぎっしりにのぼったと記憶している。
このとき来たのは「今回あなたは骨髄提供のコーディネートです」というお知らせだ。
「コーディネート」を日本語で言うと「調整」。文法的にどうかという気がするが、言わんとするところは分かる。分からないわけにはいかない。
ようは、ドナー候補になれますか、という問い合わせだ。
まあ、一応そのためにバンクに登録しているので、候補になるのは何の問題もない。問題は、上記にも書いた問診の多さだ。
しかも身長・体重・血圧まで計るようになっている。血圧計のない人はどうしろと?
さらには家族の同意欄まであり、最終的にわたしはオレンジ一式を親のところに持っていった。
「なにそれ」
「骨髄バンクの問診票。コーディネートなんだってさ」
ここで「コーディネートはこうでねえと!」なんて言われていたら、ちょっとした親子喧嘩勃発だ。
幸いクールギャグが展開されることはなく、父の血圧計を借りて計った数値も正常値。
「〝家族の同意〟」
「まあ、やってみんさい。やらんと分からんし」
だよねー。
身長・体重を適当に書き込んで、封をして翌日職場から投函。
よしっ。しばらくこれで音沙汰はあるまい!
安易な憶測は、夜露のようにさっさと消えた。
数日後、職場の昼休憩中に携帯に一本の電話がかかったのだ。