猫いろいろ(2)
前回では純血種の猫について書いたが、飼い猫の大多数を占める雑種もまた、多種多様である。
単純だが、雑種猫の性格は、結構毛色で分かれるように思う。例えば、こんな感じだ。
○赤トラ
よく知られる、ボス猫カラー。
実際この色のオス猫は、怒るとチンチラ以上に手がつけられない。わたしの知る限り、診察室の天井付近の壁を走って暴れた唯一の猫。
飼い主にとってはとてもいい猫だ。ただし、他の猫には容赦はしない。「人には優しく猫には厳しく」がモットー。
○キジ
茶色地に焦げ茶の縞のある、よくあるタイプ。サバ柄とも呼ばれる。白地とのマーブルも多い。
性格は極めて温順で、誰にでも愛想よく振舞う。愛想が良すぎて、よく丸々している。動くのはそんなに好きではなく、日向で和んでいたいほう。
なぜだかこの毛色の猫は、さほど太っていなくても糖尿病を患うことが多いので要注意である。また、便秘も多い。よく食べて動かなければ、自明の理である。
○三毛
お姫様タイプ。自分は人間だと思っているのではないかというくらい、人に馴染む。
活発で明るく、ちょっとわがままで気が強い。純血種でも、三毛の子は一際警戒心が強い印象を受ける。緊張しすぎると、かちんこちんに固まってしまう。
サビ(錆)と呼ばれる茶+黒のまだらの毛色も、三毛の種類である。
三毛にオス猫がいないと言われる理由は、X染色体上にしか存在しない色があるためで、これが発現するにはXX(メス)かXXY(遺伝子異常のオス)となるしかない。
○白
神経質。白のブルーアイは聴力が弱いと言われるので注意。(ただし聴力の有無の鑑別は難しい)
警戒心が強いので、特定の人間以外は人も猫もあまり寄せ付けない。上記の三毛もそうだが、気が強い子ほどなぜか長生きする傾向があるように思う。年をとると、さすがに多少角が取れてくるが。
アルビノの印象からか、白い毛色の動物は弱いという先入観念があるが、実は猫には「白色優性遺伝子」がある。遺伝的に白色が優性なのだ。この遺伝子をもった猫は必ず白猫になる。これを知っておくと、誰かに自慢できるかもしれない。
○黒
のんびりおっとり。見えにくい色のせいか、怪我をしてくる率が圧倒的に高い。
相手に強気に出られると流されてしまう。ケンカをしたら絶対に負ける。神秘的な雰囲気は微塵もない、マイペース。
○白黒
頭がいい。嫌なことはずっと覚えているので、幼少時に嫌なことをされると人嫌いが著しい。
一度慣れるとべたべたになる。ふと気がつくと人に寄り添っていたりする、甘えん坊。遊んでもらうのが好きで、三毛と同じくらい活発。
思いつくままに二篇も独断と偏見で書き連ねてみたが、猫嫌いの人には大変苦痛な一時だったかもしれない。
だが、時に形容で使われる「猫のような性格」というものが、到底そんな一言では片づけられないというのがよくお分かりになっていただけたのではないだろうか。
猫は、犬よりも人の好き嫌いが分かれる動物であるように思う。
その是非はさておき、確かに猫は、犬のように人の生活の手助けをするように躾けることは、性質上また体格上問題があるかもしれない。
しかし、人が古代よりコンパニオンアニマルとして選んだこの生き物は、人に寄り添い、寄り添われることで互いに豊かな生活をおくることのできる、希少な動物であることは間違いないのだ。
たとえこの先あなたが猫を飼うことがなくとも、今度もしも見知らぬ猫にばったり出会ったら、彼または彼女の性格をちょっと想像してみるのも面白いと思う。
彼ら(彼女ら)もまた、人と同じように十猫十色なのだから。