秋桜・桜色
またもO県ネタ。
コスモスの咲く季節になった。
ピンクと紅色の一重が可愛らしく、群れて風に揺れている景色は心まで秋晴れになる。
ところが南のO県では、これが通じない。
O県のコスモスといえば、黄色。オレンジ。
もう、どこをどう見ても夏色にしか思えない風景だったりする。
最近は内地でも、このキバナコスモスがよく植えられていたりするが、初めて見たときは目から鱗だった。それはもう、可憐さとは程遠い溌剌とした花だ。
そしてこの県では、よく知られているように、桜もまた別物である。
開花時期は1月。日本で一番早いのか、もっとも遅いのか微妙に迷う季節柄である。
色は、濃き緋。
あの春の夢が霞となって地上へ降りてきたような、やさしい薄紅色ではない。
くすんだ曇天の中にも、はっと目を惹く艶やかなマゼンタ。その華やかさゆえ、幹はよけいに節くれだって黒々と映り、花を纏い立つ姿は一種異様な迫力をもって見える。
そのせいか、O県でお花見の習慣はみられない。最近は内地の影響でする人もいるようだが、
「あの桜を見て、お酒を呑もうとは思わない」
のだそうだ。
確かに、悪酔いしそうな鮮やかすぎるピンクではある。
余談だが、かの県の友人は、最初「桜貝」がなぜ薄桃色なのかが、全く理解不能だったという。
内地の桜を見て、ようやく意味が分かったらしい。
ところ変われば、全国共通と思っていた固有名詞も、その意味を違えるのだ。
いろんな花があるように、いろんなコスモスがあったっていい。
いろんな桜があってもいい。
いろんな人が、あっていい。
いろんな自分が、居てもいい。
南の島の二つの桜は、なぜだか、わたしにそんなことを教えてくれた気がした。
O県の桜は寒緋桜(かんひざくら)といいます。