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鴇色雑記  作者: 鴇合コウ
いろいろ雑記
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夢色の島(4)

(4)覚めたい夢


 この島の自然を語るのに外せないのが、この話題である。

 それはでかでかと、学校の構内にも立て看板として警告が促されている。

『ハブに注意』


 またまたーと思う内地の人は、真面目に足元に気をつけるべきだ。駐車場で見かけること数回(ハンターが身近にいたので助かった)、たまに掲示板に注意書きが貼ってあったりする。

『○月○日 中庭で180センチのハブが捕獲されました。注意してください』

 この前バドミントンしてたよね、なんて笑いながらも、胸中は冷や汗ものだ。自分の身長を超える生き物には、できればガラス越しにお目にかかりたいと願うのは人間の本能である。

 クサリヘビ科であるこの毒蛇は、同科のマムシと比べ、毒1滴の致死量は少ないという。ただ、大きいため注ぎ込まれる量が多い。そしてエグい。

 タンパク質を破壊していく出血毒が激痛と腫れと出血を引き起こし、命が無事だったとしても、傷口は抉れて無残な状態を晒すことになるのだ。さらに気性が荒いため、会うとキングコブラより危険といわれる。

 コブラは威嚇のために肋骨を広げるが、そのせいで攻撃角度は180度ほどなのだ。

 対してハブは、そんな威嚇ポーズなどとらない。攻撃角度は360度。自由自在である。


 そんなハブを捕獲するコツを同級生に聞いてみた。答えは一言。

「心」

 なのだそうだ。

 蛇の捕獲には、振り向いて咬まれないように首の後ろを押さえるのがポイントなのだが、それを逃して敵がこちらに気付こうものなら、命を掛けた睨み合いとなるのだ。

 このときに怯んではいけない。獲るか獲られるか――目で相手を圧しつつ、素早く首を押さえるのだという。

「心で相手に勝つ」

 得意げに同級生は語ったが、危険と背中合わせの心理戦に勝利して、得られるのは蛇一匹。割りに合わないような気もするが、得たものの大きさは物の大小ではないのだろう。


 ちなみに成蛇となったハブの大きさは、約1~2メートル。寿命は20年ほど。

 この危険な毒蛇を駆除するために、かつて内地からイタチを持ってきて放したこともあるそうだが、後の調査でほとんどの島でイタチはいなくなっていた。

 ハブに駆逐されたのだと、まことしやかに伝えられている。

 やはり出会ったときは、三十六計逃げるに如かず。悪夢へと変わる前に、さっさと目覚めてしまったほうがよさそうである。




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