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(๑'ᴗ'๑) 婚約破棄され系女子 ( 漢 ) の生き様  作者: よっちゃん


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【壱】TS悪役令嬢転生系女子~公爵令嬢、覇姫エレクシア

短編シリーズ【婚約破棄の漢たち】を大幅に推敲し、まとめた連載版です。

全体的にあの世紀末の話や男の塾のようなノリですが、女性達(漢)が活躍する話です。よろしくお願いします。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

 覇王としての記憶

 公爵令嬢としての記憶

 どちらも俺の生き様よ

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


 大理石の広間に、ざわめきが満ちていた。

 貴族たちが息を呑み、視線を集める中心で、王太子が得意げに宣言する。


「公爵令嬢エレクシア! 貴様のような、まったく可愛げのない、氷面(ひょうめん)()との婚約は破棄する!

 貴様は俺に微笑まぬ!それが気に入らぬのだ!」


 王太子の声が、大講堂に高らかに響いた。

 ざわり、と空気が揺れる。


 貴族の子女たちの囁き、嘲笑ちょうしょう安堵あんど、期待。

 そのすべてが、鋭い刃となってエレクシアへ向けられた。

 それに異を唱える声は、一つもなく、王太子に逆らう者などいない。


 それでも美しきエレクシアは、うつむかない。

 彼女が孤立しているのは明白だった。


「そして私は、真に清らかで心優しき女性

 ――男爵令嬢リリアーナと結ばれる!」


 王太子の腕にしがみつき、その豊満な胸をこれでもかと押し付けている、男爵令嬢。

 潤んだ瞳、か弱い微笑み、男好きのする顔。

 観衆は「まあ……」「なんて可憐な」と(ささや)き合う。


 ――エレクシアの胸の奥で、何かが小さく(きし)んだ。

 これまでにも、幾度となく感じてきた違和感。

 この世界、この身体、この立場。

 公爵令嬢としての振る舞いを、完璧に演じてきたはずなのに、どこか噛み合わない感覚が常にあった。



 ――その時だった。


「ほお……小僧、 婚約を破棄するなどとは、抜かしおる」


 エレクシアの口から、自身でさえ信じられぬような、およそ令嬢らしからぬ言葉が漏れた。


 次の瞬間、エレクシアの頭の奥で何かが砕けた。

 視界が反転する。


 雪原、血、咆哮(ほうこう)

 幾千の拳と、幾万の断末魔。

 そして強敵(とも)との死闘。

 天を()く闘気、(かばね)の上を往く覇道。


 ――覇王。己はかつて、そう呼ばれていた。

 ただ「強さ」だけで世界を席巻した(おとこ)


(俺は……公爵令嬢エレクシア。そして……)


 エレクシアは、ゆっくりと瞬きをした。


(ふむ……全て思い出したわ)


 胸の奥で、眠っていた炎が目を覚ます。

 背筋を貫く、暴力的なまでの確信。


 ――俺は、力で全てをねじ伏せて来た。

 ――力とは、今生(こんじょう)でも公爵令嬢としての生き様。


 エレクシアは、王太子を見た。いや、見下ろした。


(この程度の、毛も生え揃わぬ餓鬼が…… この俺に向かって(さえず)るとは。ふふふ、面白い)


 口元が、自然と歪む。

 それは社交界の華と謳われた令嬢の微笑ではない。

 かつて覇王と呼ばれた者だけが浮かべる、強者(つわもの)の笑みだった。


「………」


 静かな沈黙が、講堂を支配する。


「それで……話は終わりか、小童(こわっぱ)よ」


 その声は、鈴を転がすように澄んだ、年若き令嬢の麗声(れいせい)だった。

 だが――内包する圧は、漢だけが発する気配。


「こ、こわっぱ? いや、まだ話は終わっていないぞ!貴様を、この俺の王国から……追放する!」


 次の瞬間。


「フハハハハハハ、羽虫(はむし)ごときが、この俺を追放とはな!なかなか(さえず)るではないか!」


 胸を震わせエレクシアが(わら)う。


「きさま!殿下に向かってその無礼な態度は何だ!」


 王太子の取り巻きの一人、次期騎士団長と言われる側近が、エレクシアを力で組みしだこうと走り寄ってくる。


 剣を抜き、獣のような笑みを浮かべて踏み込んだ、その瞬間だった。


(わめ)くな雑兵(ぞうひょう)!」


 エレクシアのスカートの(すそ)が揺れた。


 細く、白く、神に愛された造形の脚。

 氷像(ひょうぞう)(ごと)き美を宿す、公爵令嬢の脚が(あらわ)になる。



  「 陰嚢(いんのう)粉砕脚(ふんさいきゃく)



 その一歩は、まるで舞踏だった。

 静謐(せいひつ)で、優雅で、寸分の狂いもない。

 舞姫(まいひめ)円舞曲(ワルツ)を刻むように、

 氷上を滑るかの如く、音もなく踏み込む。



 グチャッ!


 嫌な音が響いた。

 騎士(それ)は世にもおぞましい断末魔をあげ、崩れ落ちる。


 主人を失った剣が乾いた音を立てて床を転がり、

 もはやそれを握る者はいない。


 学園の大広間に、重い沈黙が落ちる。


 エレクシアは、花弁がこぼれるようなあどけない微笑を浮かべ、小首をかしげて言った。


「未熟者!漢たるもの、()()()()()()()()

 我が師の鋼嚢(こうのう)であったならば、逆に俺の脚が砕け散っていたわ!」


 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


 床に転がる無胤(むいん)騎士(かばね)(うめ)きが、ようやく静まった頃。


 王太子は顔面を引きつらせ、喉を鳴らしながら一歩後ずさった。


「……エ、エレクシア――きさま、いったい……」


 エレクシアの視線が、氷のように鋭く突き刺さる。


「――青二才(あおにさい)よ」


 低く、しかしよく通る声。


「婚約は、先ほどうぬが一方的に破棄したはずだ」


 にこり、と上品な笑みを浮かべたまま、続ける。


「エルドレイン公爵令嬢と呼ばぬか、この阿呆めが」


 一歩、王太子へ近づき、完璧な姿勢で言い放つ。


 王太子が、顔を真っ赤にして口を開いた。


「……エレクシア、こんな事をして、ただで済む――」


 ――パァンッ!


「ぶふぇええ」


 乾いた音と無様な声が大講堂に響き渡った。

 白く美しい手のひらが、王太子の頬を正確に打ち抜いたのだ。


 勢いよくよろめいた拍子に、彼の懐から、


 ―― ひらり。


 レース付きの、女性物の下着が床に舞い落ちた。


 一瞬の静寂。


 次いで、会場中の視線が、その一点に吸い寄せられる。


 エレクシアはそれを見下ろし、 誰もが見惚れるような、妖精のような笑顔で小首をかしげた。


「うぬは……まだ、おなごの肌着に執着しておったか。

 メイドの、香りの残る腰布など集めおって」


「ふむ……確かめねばならぬ」


「スキル――秘戯(ひぎ)暴映(ぼうえい)


 王太子の背後、虚空に巨大な幻影のスクリーンが浮かび上がった。


「な、何だこれは――!?」


 映し出されたのは、


 ――女性の下着の数々。


 ショーツ、レース、フリル。


 それらを並べて眺め、匂いを嗅ぎ、(よだれ)を垂らして恍惚(こうこつ)とする王太子の秘め事。


 広間が、凍りついた。


「……この助平(すけべえ)が、俺はそれとなく、止めるように注意したはずだが?」


 エレクシアは腕を組み、汚物を見るような目で告げた。


「や、やめろおおおお!!」


 王太子は床に崩れ落ち、みっともなくのたうち回る。


「えええ、ハロルド様、そんな趣味が……け、汚らわしい」


 男爵令嬢リリアーナが、引き気味に(つぶや)いた。


「ほう?小娘よ、この矮小(わいしょう)下衆(げす)が汚らわしいだと? では……次は貴様の番だ」


 エレクシアの視線が、男爵令嬢リリアーナへ移る。


「貴様は“純潔”を誇っておるようだが……」


 幻影が切り替わる。

 夜の街、仮面、甘い言葉。そして怪しげな館の一室。 複数の男と、尻を出し、振り乱しながら快楽にふけるリリアーナの姿。


「純潔は守っているようだが、その貴様の不浄の穴は、欲望に(まみ)れているようだな」


「ち、違う! これは、違――!

 て、てめえ!ち、ちくしょう、やめろお!」


「笑わせるな!阿婆擦(あばず)れが」


 エレクシアは、襲いかかってきたリリアーナの、無駄に豊満な片乳(かたちち)を手で鷲掴(わしづか)みにすると、そのまま腕で抱え、尻を露出させる。


 バシーン!


「この愚か者め!」

「ぎゃああああ」


 バシーン!!


「自分を安売りしおって!」

「ひぎいいい」


 エレクシアは、氷細工のようなその手で、リリアーナの尻を容赦なく何度も打ち据える。


「しかし、手段は()(かく)、天を掴み、喰らわんと、なりふり構わず(むさぼ)り尽くすその姿は、この俺も感じ入ったぞ」

「ふふふ、男爵令嬢リリアーナ、なかなかの剛の者よ」


 王太子はリリアーナの裏切りを目の当たりにし、頭を抱えてブツブツと(うめ)いている。


「まったく、情けない凡愚(ぼんぐ)だ。

 おなごは元来自由な生き物。

  (おとこ)が真に愛した女なら、 誰を愛そうが、 どんなに汚れていようが、 最後に己の横におれば良いのだ」

雌狐(めぎつね)リリアーナよ、貴様が気に入ったぞ。この変態(ごみくず)など捨てて俺と共に来い」


 エレクシアはそう言うと、すべてに背を向けた。


 そして―― 卒業会場の出口、その前で立ち止まる。


 ゆっくりと振り返り、真に高潔なる淑女(しゅくじょ)のみが成し得る、一点の乱れもない完璧なカーテシーを(ささ)げる。


 静かに、しかし確かに響く声で、


「我が三年間の学園生活に――一片の悔いなし。

 我が覇道、付いて来たくば来るが良い。


 では者共、さらばだ!」


 赤いドレスの裾が(ひるがえ)る。

  覇姫(はき)は振り返らない。



 その背を、誰も止められなかった。



★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆


 成楼(なろう)書房刊『古代宴席武装史概論』より



 ――陰嚢粉砕脚いんのう・ふんさいきゃく ――

 覇姫(はき)流体術・秘奥義。

 人の肉体には、鍛錬によって鋼と化す部位と、いかなる達人であろうとも守り切れぬ“死角”が存在する。

 陰嚢粉砕脚とは、相手の重心移動・呼吸・踏み込みの刹那を見極め、下半身の急所にのみ存在する一瞬の空白へ、 必殺の一撃を放つ技である。

 ・脚に闘気を(まと)

 ・舞踏の一歩の如く踏み出し

 ・敵が“女が相手だ”と油断した瞬間に放たれる。

 ゆえに、防御不能。

 記録によれば、これを受けなお立ち上がった者はいない。その恐るべき破壊力は、時の皇帝の勅命(ちょくめい)により、男同士の戦いでは禁じられ、肉体的に不利とされた女のみが行使を許された――対男専用の必殺の一撃である。


 余談だが、エレクシアが履く尖踵(ハイヒール)。後世においては「装飾靴」「社交用履物」として知られるそれは、 本来、靴ですらなかった。

 一説に、糞尿(ふんにょう)を避けるために(かかと)を高くした、などと語られるが、 それは平和な時代に作られた、あまりにも浅薄(せんぱく)な俗説である。

 真の起源は、 古代において用いられた、対男専用の戦装束(いくさしょうぞく)。男の重装甲が最も脆弱となる“股間(こかん)装甲の死角”。そこへ正確無比に打ち込むため、 踵は刃の如く削がれ、 体重・踏み込み・回旋力のすべてを一点に集束させる構造となった。

 特に、宮廷・宴席・舞踏会といった 「武装を解いた男が油断する場」において、 その威力は絶大であったという。

 現代に残るハイヒールとは、その戦闘性を削ぎ落とし、 無害化された“残骸”に過ぎぬ。



挿絵(By みてみん)



 ――秘戯暴映ひぎ・ぼうえい――

 覇姫のみが扱う禁断の秘術。

 相手の深層意識を強制的に覗き、誰にも知られたくなかった「秘め事の記憶」を 幻像として衆目の前に暴き出す恐怖のスキル。


挿絵(By みてみん)

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。 もし少しでも面白いと感じていただけたら、 ブックマークや評価で応援してもらえると嬉しいです。

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