第8話 ピザ
「ほら、そんなに拗ねるなよ。ピザ食べようぜ、ピザ」
「拗ねてないっ」
俺は出前したピザをカリナに差し出す。
帰りがけに出前をネットで注文しておいて、先ほどちょうど良いタイミングで届いたのだ。
宅配ピザは良い。
すぐに食べれて、食器の汚れも少ない。残っても冷蔵庫にいれておけば翌日も食べられる。
まあ、今のうちに、使える冷蔵庫はないのだが。
そんなことを考えていた俺の差し出したピザの載った皿を、カリナが勢いよく取ると、そのままピザへ、かぶりついていく。
俺たちはいま、カリナが設置した結界石によって生まれたセーフポイントで、ともに食事をしていた。
ぶっちゃけ俺はダンジョンの中に入るのは気がすすまなかったが、結界石によるセーフポイントは絶対に安全らしい。
さらには、俺が創成したカリナの顔面結界石はこれまでに無いほどのサイズだったこともあり、セーフポイントの範囲が、かなり広くなったらしい。
まだ、どれくらい広いのかは未確認だったが少なくとも家、数戸分のサイズは余裕で越えているとか。実際、顔面結界石の設置場所は入り口付近よりかなり奥らしく、ここからはその存在すら視認出来なかった。
まあそんな訳で、俺は諸々のお詫びがてらピザを持参して、こうしてダンジョンのセーフポイントでカリナと食事をしているのだ。
「──おかわり」
「はい。どうぞどうぞ」
うつむいたまま皿を出してくるカリナ。
俺はいそいそとピザを取り分けていく。
先ほどよりは落ち着いてピザを口に運んでいくカリナ。
意外と口が小さいのか、こうしてうつ向いて食べている姿はどこか栗鼠とかハムスターっぽい。
──普段はあんなに凛々しいのに。それにしても、これはこれで、ちょっとキャンプみたいで楽しいな。
セーフポイントには、俺たちが座っている折り畳みの椅子二脚と折り畳みのミニテーブルの他に、カリナの設置したらしきテントがたててある。
そのテントに吊るされたカンテラの光が周囲を照らす様は、夜のキャンプっぽい雰囲気を醸していた。
──これらのキャンプ道具も、カリナを創成した時に一緒に創成された荷物に入っていたってことだよな。
俺は不思議な気分でそれらのキャンプ道具を眺めていると、目の前に空の皿が差し出される。どうやらまたおかわりらしい。
俺はまだまだ残っているピザを気前よくカリナへと渡していくのだった。
◇◆
「ふぁ~」
結局昨晩はピザを二人で食べ尽くすと、俺は部屋に戻り、カリナはあのままセーフポイントのテントで寝たらしい。
「おはよー」
俺は冷蔵庫を開けながらそっと声をかけてみる。
人の気配はない。
どうやらすでにカリナは探索に出たようだ。
冷蔵庫のドアごしに覗いたセーフポイントにはがらんとした雰囲気が漂っている。
──社畜の俺の朝はなかなか早いと思っていたのだけど、カリナの早起きはそれを上回るか。
俺は不思議な感慨にふけりつつ、出社の準備をしていく。
今日はなんだかいつもより頑張れそうな、そんな自分に苦笑しながら、誰もいない冷蔵庫に行ってきますと告げると、俺は家を出るのだった。




