第6話 帰還
「まだ、帰ってないようだな」
俺は冷蔵庫ダンジョンのドアを開けるとそっと中を覗き込む。
結局、カリナは探索に出たその日のうちには帰ってこなかったのだ。
そして、翌朝。
こうして再び確認しているのだが、やはりカリナが帰ってきた形跡すらなかった。
そして社畜の俺は、そろそろ出勤の時間だった。
朝飯用に買っておいた菓子パンを手早く食べて、ぬるい缶コーヒーで流し込むと、朝食を済ませる。
昨日、新しい冷蔵庫を買ったのだが、残念ながら即日配送は無理で、次の休みに届けるように手配した。
なのでしばらくは外食と中食で済ます予定だ。
──一応、カリナの分もパン買ったけど……。仕方ない。これは昼飯にするか。
このまま出勤してしまっていいのか、ちょっと悩んだが、どちらにしろ社畜の俺に休むという選択肢はない。
後ろ髪を引かれながら、俺は玄関から出ていくのだった。
◆◇
「ただいま……」
帰りの挨拶。もしかすると返事があるかもと思ったが、室内は静かだ。
今日は幸いなことに終電前に帰れた。
俺は手にしたスーパーのビニール袋を床におくと、念のため冷蔵庫を開けてみる。
「──あ、カリナ!」
「おお。強矢か。遅いぞ」
特徴的な銀髪の後頭部が、部屋の明かりに照らされてキラリと光る。
「すまんすまん。仕事だったんだ。というか、無事だったんだな」
「もちろんだ。強矢に槍を捧げたこの玄道カリナともあろう者が、この程度の探索でくたばるとでも?」
冷蔵庫のドアに詰まっていた人物とは思えないほどの自信だ。
探索に行って、何だかんだで気分が良いのかもしれない。
「いや、そんなことを言われても……」
「ふ、つれないな。まあ、いい。それよりもこれを見てみろ。今回の探索の成果だ」
「──あー、凄いね?」
「そうだろそうだろ」
満足げに自慢するカリナ。確かに冷蔵庫ダンジョンの扉の向こうは凄いことになっていた。
凡人の一般人の俺には見たことのないものばかり。
たぶん、いろんなモンスターの討伐ドロップなのだろう。
「でも、何で部屋に入らないで、そっちに? 鎧?」
「それもあるが、これだけの物を部屋には持ち込めないだろう? ここに置いておいて目を離したらモンスターに盗られるしな」
「あー、なるほど。って、それじゃあどうするの、それ」
「そう、それだ。サポートを頼みたい。創成して貰いたいものがある!」
「うーん。ちなみに?」
「結界石だ」
「結界石──」
「そうだ。ダンジョンではとても貴重だが、強矢の創成AIスキルなら創成出来るんじゃないかと思ってな」
「ちなみに結界石って、なんだっけ?」
──あ、ずっこけた。カリナって、意外とノリが良いのかも。
それは凛々しい女性らしからぬ、完璧なずっこけだった。




