第5話 探索の開始
「では!」
「……気をつけて」
そそくさと冷蔵庫に向かう玄道カリナ。
よほど探索がしたかったのだろう。なんだか嬉しそうだ。
そのまま冷蔵庫の扉を開けると、頑張って、中へと入ろうとしていた。
ただ、鎧と槍がつっかえるようで、なかなか苦労している。
「──狭い、な」
気がつけば、冷蔵庫にはまって動けなくなったカリナが呟く。
「独り暮らしにしては、大きめの容量なんだけど」
「……それより、引っ張ってくれるか?」
「えー」
「サポート!」
「はいはい。えっと、ここか──少し肩をあげて……はい、そのままそのまま。じゃあ、引っ張るぞ」
すぽんとカリナが抜ける。
「はあ、はぁ、助かった。ナイスサポートだ。強矢」
急に名前で呼んでくる。
「いや。あ、槍。預かるから、まずは鎧脱いだら?」
「そうか。わかった、頼む」
なぜか両手を広げて背中を向けてくるカリナ。
どうやら、脱がせろと言うことらしい。
「──え、やったことないんだけど」
「指示する。これもサポートの一環だ」
「いやー。さすがに、それはちょっと」
鎧とはいえ、本当にいいのだろうかと悩む。だいだい、本人が卑猥なことはNGだと、ついさっきぬかしていたではないか。
「サポートっ! サポートっ!」
「はいはい」
何でもサポートと言えばいいと思っているなコイツ、と思いながら、言われるがまま、努めて無心になって俺はカリナの脱がせていく。
手になにか触れている気がするが気のせいに違いない。
意外と鎧の構造はシンプルで、作業自体は難しくはなかった。
身軽になったカリナが、今度こそ冷蔵庫を通り抜ける。
それでも、いろいろギリギリだ。
どことは言わないが、鎧で押さえつけられていた部位が解放されたことで、今度はそちらが引っ掛かりそうになっている。
とはいえ鎧とは違って柔らかい分、ぎゅっと手で押さえ付けることで、無事に通り抜けれたようだ。
「よし。それじゃあ次は中で着けるのを頼む」
「え、むり。ダンジョン入りたくない」
「なん、だと!」
「それは絶対無理」
「じゃあ、そこから手を伸ばしてくれれば届くだろ」
「まあ、それぐらいなら……」
俺は鎧を冷蔵庫ごしに手渡す。
それを体に当てていくカリナ。
俺は先程の脱がした行程を遡るようにして、カリナの装着を補助していく。
「ほら、できたぞ。最後に、これ」
荷物とショートスピアを渡してようやく完了だ。
「助かった。では、征ってくる」
「はいはい、いってらっしゃい」
格好よく出立したカリナを見送ると、俺は冷蔵庫のドアを閉め、ため息をつく。
これからも出入りの度に、カリナとのこのやりとりが待っているという、予感がしてならない。
まあ、ぶっちゃけ嫌ではない。嫌ではないのだが、俺の平常心が著しく試されている気がする。
「……とりあえず、普通に使える冷蔵庫がないのは困るよな。買いにいくか。あとは、しばらくしのげる量の、食料だな」
俺は深く考えるのをやめると、残り少ない休日を使って買い物へと向かうのだった。




