表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
陰キャの俺、なぜか文芸部の白髪美少女とバスケ部の黒髪美少女に好かれてるっぽい。  作者: 沢田美


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

51/57

陰キャ、リア充イベントに飛び込む ーそこは魔境かそれとも楽園かー

 文化祭前日。


 学校中が慌ただしい空気に包まれていた。


 廊下には、各クラスの装飾品が並べられている。段ボールで作られた大道具、色とりどりのポスター、手作りの看板。生徒たちが忙しく行き来して、最終確認をしている。


 教室からは、リハーサルの声が聞こえてくる。笑い声、怒鳴り声、楽器の音。学校全体が、一つの祭りの準備に向けて動いている。


 その喧騒の中で、俺は文芸部の部室にいた。


 最終チェックをしている。謎解きの仕掛けが正しく動くか、問題に間違いがないか、装飾に不備がないか。一つ一つ、丁寧に確認していく。


 部室の窓からは、校庭が見える。


 そこでは、ステージの設営が行われていた。大きな舞台が組み上げられ、音響機材が運び込まれている。明日は、ここでバンド演奏やダンスが披露されるのだろう。


「……すごいな」


 小さく呟く。


 文化祭。


 昔の俺なら、絶対に関わろうとしなかった行事だ。


 教室の隅で、一人で本でも読んでいただろう。準備にも参加せず、当日も適当にサボって。そうやって、やり過ごしていたはずだ。


 でも今は――。


 俺は準備の中心にいる。


 謎解きゲームという企画を考え、みんなと一緒に作り上げた。明日は、実際に来場者を迎えることになる。


「……本当に、変わったな」


 窓ガラスに映る自分の顔を見る。


 少し疲れた顔。でも、どこか充実している顔。


 昔の俺とは、確実に違う顔をしていた。


「高一くん、最終チェック終わった?」


 扉が開いて、瀬良先輩が入ってきた。


 手には、飲み物が二本握られている。


「あ、はい。大体終わりました」


「そう。じゃあ、休憩しましょう」


 瀬良先輩は俺の隣に座って、飲み物を一本渡してくれた。


 冷たいお茶。缶の表面には、水滴が滴っている。


「ありがとうございます」


「どういたしまして」


 二人で、静かに飲み物を飲む。


 部室には、静寂が戻っていた。さっきまでの喧騒が嘘のように、静かだ。


 窓の外では、夕陽が沈み始めている。オレンジ色の光が、部室を優しく照らしている。


「明日、楽しみね」


 瀬良先輩が呟く。


「……そうですね」


「緊張してる?」


「少しだけ」


「ふふ、私も」


 瀬良先輩は微笑んだ。


 その横顔が、夕陽に照らされて美しかった。


「でも、きっと上手くいくわ」


「……どうしてそう言えるんですか?」


「だって、みんなで頑張って作ったもの」


 瀬良先輩は俺を見た。


「あなたが考えて、優花が飾って、浅葱ちゃんがまとめて、私が問題を作った」


「……はい」


「みんなの想いが詰まってる。だから、きっと上手くいく」


 その言葉に――俺は、少しだけ勇気が湧いてきた。


「……そうですね。頑張ります」


「ええ」


 瀬良先輩は優しく微笑んだ。


 そして――少しだけ、距離を縮めた。


「ねえ、高一くん」


「はい?」


「あなた、変わったわね」


 またその言葉だ。


 でも、今回は――嫌じゃなかった。


「……そうですか」


「ええ。入学した頃は、もっと……閉じこもってた」


「……否定できません」


「でも今は、ちゃんと前を向いてる」


 瀬良先輩は俺の目を見た。


「それは、とても素敵なことよ」


 その言葉に――俺は、顔が熱くなった。


「あ、ありがとうございます……」


「どういたしまして」


 瀬良先輩は少しだけ笑って、また前を向いた。


 二人で並んで、夕陽を見る。


 静かな時間が流れる。


 でも、この沈黙は――心地よかった。


「……先輩」


「ん?」


「俺、明日……頑張ります」


「ええ。期待してるわ」


 その言葉を胸に、俺は――拳を握った。


 明日は、文化祭。


 陰キャの俺が、初めて本気で取り組んだイベント。


 絶対に、成功させたい。


 そう思った。


 ※ ※ ※


 文化祭当日。


 朝から、学校は異様な熱気に包まれていた。


 校門には、大きなアーチが設置されている。色とりどりの風船が飾られ、歓迎の横断幕が掲げられている。


 校内には、すでに多くの来場者がいた。


 生徒の家族、卒業生、近隣の住民。様々な人々が、学校中を歩き回っている。


 教室からは、呼び込みの声が聞こえてくる。


「焼きそば、いかがですかー!」

「お化け屋敷、やってますー!」

「クレープ、美味しいですよー!」


 どこも賑やかだ。


 俺は――文芸部の部室にいた。


 開場前の最終準備をしている。問題用紙を並べ、ヒントカードを配置し、受付の準備を整える。


 浅葱と不知火先輩も一緒だ。三人で手分けして、準備を進めている。


 瀬良先輩は、少し遅れてくると連絡があった。何か用事があるらしい。


「よし、準備完了!」


 浅葱が明るく言う。


「うん、バッチリだね」


 不知火先輩も満足そうだ。


 俺も――部室を見回した。


 謎解きゲームの舞台。


 自分たちが作り上げた空間。


 壁には、ミステリアスな雰囲気を出すための装飾が施されている。机の上には、問題が並んでいる。部屋の隅には、ヒントが隠されている。


 全てが、準備万端だった。


「……よし」


 小さく呟く。


 緊張するけど――楽しみだった。


 その時、部室の扉がノックされた。


 コンコン。


「はい、どうぞ」


 浅葱が返事をすると、扉が開いた。


 そこに立っていたのは――。


「おはよう、みんな」


 瀬良先輩だった。


 でも――いつもと違う。


 髪を下ろしている。軽く巻かれた黒髪が、肩に掛かっている。


 服装も、制服ではなく私服だ。黒のワンピースに、薄手のカーディガン。大人っぽくて、どこか神秘的な雰囲気を纏っている。


「せ、瀬良先輩……?」


 俺は思わず声を出した。


「どう? 今日は特別な日だから、少し気合い入れてみたの」


 瀬良先輩は微笑む。


 その笑顔が――めちゃくちゃ綺麗だった。


「に、似合ってます……」


「ありがとう」


「由良、綺麗!」


 不知火先輩も感嘆の声を上げる。


「瀬良先輩、めっちゃ可愛い!」


 浅葱も興奮している。


「ふふ、ありがとう。じゃあ、始めましょうか」


 瀬良先輩はそう言って、受付の席に座った。


 時計を見ると、開場時刻の5分前。


 もうすぐ、お客さんが来る。


「……緊張するな」


 俺は小さく呟いた。


「大丈夫よ」


 瀬良先輩が優しく言う。


「みんなで作ったんだから」


 その言葉に――俺は、頷いた。


 そして――。


 開場のアナウンスが流れた。


「文化祭、開場します」


 校内放送の声が響く。


 文化祭が――始まった。


 俺の初めての、本気の文化祭が。


 心臓が、ドキドキと高鳴っている。


 でも――楽しみだった。


 この瞬間を――待っていた。


「さあ、来るわよ」


 瀬良先輩が言う。


 数秒後――。


 部室の扉が開いた。


「あの、謎解きゲームって、ここですか?」


 最初のお客さんが、来た。


 俺たちの文化祭が――始まった。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

このお話が少しでも面白いと感じていただけたら、ぜひ「♡いいね」や「ブックマーク」をしていただけると嬉しいです。

応援が次回更新の励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ