陰キャ、テスト本番に至る ー待ち受けるのは地獄か天国かー
テスト当日。俺は完全に覚醒していた。家族と喋れば即座に出てくるのは英単語や漢文の単語。そう俺は出来上がってしまったのだ。
そして、今日も今日とて俺はそのまま校門を通る。幸い瀬良先輩や不知火先輩、浅葱とは出くわさなかった。
――だが、俺は今完全なる未知の領域にいる気がしていたたまれない。
「おはよう! 高一くん!?」
浅葱が驚きながら俺に声をかけた。驚くのも無理はない、なんせ今の俺は人間の顔をしていないにか決まっているからだ。
誰のせいだと思ってるんだよ!
そんなことを少しだけ思いながら俺は、テストの時間まで参考書を凝視していた。
映る単語、目に見える数式、全てが理解できる。これがいわゆるゾーンと言うやつか(多分違う)。
「それじゃ、今からテストを始めるからなー」
テストの監督官がそう言うと、周りの生徒たちは一斉に席に座り、筆記用具のみを出す。
もちろん俺もそれをする。
――チャイムが鳴った。
試験用紙が配られる。
教室中に、紙の擦れる音と、鉛筆を握り直す音が響いた。
俺は、深く息を吸った。
そして、目の前の試験用紙を見つめる。
「……ふっ」
笑いが漏れた。
見た瞬間に、答えが頭に浮かぶ。
あの地獄のような補習が、全部ここで繋がった。
――勝てる。
今日の俺は、“陰キャ界の革命児”だ。
ペン先が走る。
英語、国語、数学。
全ての問題が、脳内でスッと整理され、答えに変換されていく。
(embarrassing? そんなの笑えるほど簡単だ)
(despair? 知ってる。昨日、浅葱に聞かされたやつだ)
(hope? それならもう、俺の中にある)
周りを見ると、みんな必死に唸っている。
しかし、俺は違う。
――瀬良先輩の“恐怖指導”、不知火先輩の“笑顔圧”、浅葱の“元気地獄”を生き延びた俺に、もはや敵などいない。
「残り五分でーす」
監督の声。
だが、俺の答案はすでに完成していた。
余裕で見直しをして、消しゴムのカスを払う。
頭の中が澄んでいく感覚――これが「解放」ってやつか。
俺は机に突っ伏して、魂が抜けかけていた。
「終わった……ついに……」
今日はそのまま帰れる。だから速攻帰宅して、小説のアイデアでも出すか。
そんなことを考えていた時、隣にいた浅葱が声をかけてきた。
「ねぇ、高一くん! このあと時間ある?」
「時間ない、帰る、俺は無理、今日マジ無理」
そんな言葉を乱雑に並べると、浅葱はニヤリと笑った。
「瀬良先輩と不知火先輩も誘おうかなー?」
「行きます、行くんであの人たちだけは呼ばないでください!」
もうこの世界に俺のぼっち生活は存在しないのかもしれないな……。
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