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陰キャの俺、なぜか文芸部の白髪美少女とバスケ部の黒髪美少女に好かれてるっぽい。  作者: 沢田美


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陰キャ、人生終了のお知らせ ー勉強という名の拷問ー

 翌朝。

 

 俺はいつも通り隠密効果最大で登校していた。

 

 俺の隠密――いや完全ステルス機能とでも言おうか。それは俺の気配を完全に消すことができる、俺だけのユニークスキルだ。

 

 このスキルがあれば、俺は誰にも気づかれず学校生活を送れる。完璧なぼっちライフの必須スキルだ。


 しかし、それもたまに壊れることがある。

 

 そんなことを思っていた時、俺の前に浅葱が現れた。


「おはよ! 高一くん!」


 ――壊れた。


 陽キャ代表の一人と出くわしてしまった。

 

 浅葱、不知火先輩、瀬良先輩は俺のこの完全ステルス機能を無視して貫通攻撃をしてくる化け物だ。

 

 俺のユニークスキル、完全に無力化されてる。


「あ、おはよう……」


「元気ないね。どうしたの?」


 あぁ、そういえば昨日のテスト勉強は本当に疲れたな。

 

 俺の脳裏には、ほぼ完全に拘束された俺が必死に猛勉強していた光景が過ぎる。

 

 瀬良先輩の容赦ない指導。不知火先輩の爽やかな笑顔での詰め込み教育。

 

 あれは地獄だった。


「はぁ……テスト期間だから今日もあるのかな……」


「え、何が?」


「いや、何でもない」


 いっそのこと逃げようかな。

 

 そんなことを考えながら、俺は教室に入り自分の席に座った。


「ねぇ、高一くん」


 歩み寄ってきた浅葱が声をかけてきた。

 

「どうした?」


 俺が言うと、浅葱はどこか詮索するような顔つきで俺に問いかけた。


「噂で聞いたんだけど、昨日瀬良先輩と不知火先輩が高一くんに拷問してたって聞いたけど、それホントなの?」


 なんだ拷問って……いや、拷問だったなあれは。

 

 陰キャ孤独孤高モブキャラの俺からすれば、あれ以上の拷問は受けたくないものだ。


「うん! 拷問されてた! 辛かった!」


「な、なんか急にキャラ変わったね」


「いや、浅葱。あれは地獄だったぞ」


 俺は真剣な顔で言った。


「特に英語……単語を何百も覚えさせられて、その上古文やらなにやら、覚えられるものは全て叩き込まれた……あれほどの生き地獄はたまったものじゃない」


 俺がそう言うと、浅葱は苦笑いをしていた。


「で、でも……それって高一くんのためだよね?」


「そうなんだろうけど……死ぬかと思った」


「大げさだよ〜」


 そんな会話をしていた時、四宮先生が教室に入ってきた。

 

 全員の視線が前に向かう。


「はい、皆さん。もうすぐテストがあると思うのですが、しっかりと勉強できていますか? まぁテストが終われば夏休みなので頑張ってくださいね!」


 相変わらずおっとりとした口調と優しい雰囲気をしている。

 

 夏休み……そうか、もうすぐ夏休みか。

 

 そして、そこから連絡事項が告げられた。


 ※ ※ ※


 昼休み。

 

 俺は教室を出た。

 

 今日は母から弁当を作るのを忘れたと言われたので、俺は売店でパンを買いに向かった。

 

 廊下を歩きながら、俺は考える。


「今日も勉強会あるのかな……」


 できれば避けたい。全力で避けたい。

 

 そんなことを思いながら売店に近づいた時――。


「おや! 珍しい」


 嫌な声が聞こえた。

 

 嫌な気配と予感がする。

 

 俺がビクビクと震えながら視線を前へと向けると、そこには不知火先輩が立っていた。


「ひぃ!」


 昨日の拷問のようなテスト勉強が脳裏をよぎる。

 

 反射的に後ずさりしてしまった。


「人の顔を見てその反応されると少し傷つくな〜」


 不知火先輩が少し不満そうに頬を膨らませる。


「す、すみません。でも昨日の拷――テスト勉強が脳裏をよぎって……」


「あぁー、まぁでも私たちが教えたからある程度の学力が着いたんだから、結果オーライじゃない?」


 不知火先輩は笑顔で言う。

 

 その笑顔が、今は悪魔に見える。


「私も今日も教えたいけど、もうすぐ大会があるから勉強教えられないの。だから由良に頼んどいたから」


 ――え?


 何言ってんだこの人ー!?

 

 え!? 俺またあの拷問を受けるの!?

 

 な、なにゆえ!?

 

 い、いや、これは断れ! 断るんだ俺!


「あ、いやー、俺今日実は予定が――」


 俺が必死に言い訳を並べようとした時、背後から異様なオーラを感じた。

 

 それは不知火先輩と同様の女王のオーラ。

 

 いや、それ以上かもしれない。

 

 俺は咄嗟に視線を後ろに向けた。


「瀬良先輩!?」


「あら、奇遇ね。私も売店でお昼ご飯を買いに来たの」


 瀬良先輩が優雅に微笑んでいる。

 

 だが、その笑顔の奥に――何か黒いものを感じる。


「そ、そうですか……それじゃあ! 俺帰りますね!」


 逃げるようにその場から去ろうとした時、瀬良先輩の氷のような視線が俺を刺す。

 

 足が、動かない。

 

 金縛りにあったように、その場に固まってしまった。


「今日の放課後、待ってるからね――高一くん?」


 その声は優しいのに、なぜか恐怖しか感じない。


「は、はい……」


 俺は観念して頷いた。


「よろしい。じゃあ、お昼も一緒に食べましょうか」


「え、お昼も!?」


「当たり前でしょう? 昨日の復習をしないとね」


 瀬良先輩は笑顔で言う。

 

 不知火先輩も「頑張ってね」と爽やかに笑っている。


「……ぼっち生活、どこ行った」


 俺は小さく呟いた。

 

 いや、ぼっち生活だけじゃない。俺の人生が終わった瞬間だった。


 ※ ※ ※


 結局、俺は瀬良先輩に連行され、文芸部の部室で昼食を取ることになった。

 

 パソコン室の机に、瀬良先輩と向かい合って座る。


「さ、食べながら復習しましょう」


「食べながら……ですか?」


「ええ。時間は有効に使わないとね」


 瀬良先輩はそう言って、参考書を開いた。


「じゃあ、昨日覚えた英単語。10個言ってみて」


「い、今すぐですか!?」


「当たり前でしょう?」


 俺は必死に記憶を辿る。

 

 昨日、あれだけ叩き込まれたはずなのに――。


「え、えっと……」


「3秒経ったわ」


「ちょ、待って! 思い出すから!」


「5秒」


「せ、先輩、鬼!」


「7秒」


「わ、分かりました! 言います!」


 俺は必死に単語を言い始めた。

 

 瀬良先輩は満足そうに頷いている。


「ふふ、ちゃんと覚えてるじゃない」


「そりゃあ……あれだけ叩き込まれたら……」


「でも、まだまだ足りないわね。今日はもっと覚えてもらうから」


「も、もっと!?」


 俺の悲鳴が、部室に響いた。


 ――俺の平穏な昼休み、どこ行った。


 そう思いながら、俺は再び地獄の勉強会に身を投じるのだった。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

このお話が少しでも面白いと感じていただけたら、ぜひ「♡いいね」や「ブックマーク」をしていただけると嬉しいです。

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