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陰キャの俺、なぜか文芸部の白髪美少女とバスケ部の黒髪美少女に好かれてるっぽい。  作者: 沢田美


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陰キャ、バスケで奇跡を起こす ―ボッチの本気、見せてやるよ―

 スポーツ施設「ラウンド・カースト」に来ていた俺は、バスケットコートの上に立っていた。

 広々としたコートには、強い照明が降り注いでいる。ワックスの効いた床が光を反射して、妙に眩しい。

 

 目の前には全国大会出場を前にしたバスケ部エース不知火優花。

 

 彼女は余裕そうな笑みを浮かべて、軽くボールをドリブルしている。その動きだけで、只者じゃないオーラが溢れ出てる。

 

 舐めるなよ、小中をぼっち陰キャで過ごしてきた俺の実力。

 

 ……って、何の実力だよ。ぼっち力か?

 そう自分にツッコミを入れながら身構える俺の周りには、陽キャ集団。

 敵――いや、今は仲間というべきか。漫画とかでよくある終盤にかけてかつての宿敵が味方になるような、そんな心強さがある。


 ちなみに、相手チームには瀬良先輩と不知火先輩がいるチーム。そして、俺のチームには浅葱と陽キャ集団の一部――いや待て、女王が二人も敵にいる……終わったくない? これ負け確じゃない?


「じゃあ、始めよっか!」


 不知火先輩が軽くボールを弾ませながら、こっちを見てニヤリと笑う。

 その笑顔、完全に獲物を前にした肉食獣のそれだ。

 コートの外には、他の利用客たちが興味深そうに見ている。美人の先輩二人がいるから、当然か。


「た、高一くん……大丈夫? 顔、めっちゃ青いけど」


 浅葱が心配そうに声をかけてくる。

 大丈夫なわけないだろ。敵に女王二人とか、バランスおかしいって。


「ちょっと待ってください! これ戦力差ヤバくないですか!?」


「何言ってんの? お前ら男子の方が有利だろ」


 陽キャ男子の一人がヘラヘラ笑ってる。

 いや、お前ら分かってないな。あの二人、人間じゃなくて化け物だぞ。


「高一くん、覚悟はいい?」


 瀬良先輩が挑発的に微笑む。

 その目が、マジで怖い。まるで氷の刃みたいに鋭い。


「ちょ、待って! せめてルール説明を――」


「普通のバスケだよ。五対五。十点先取」


 不知火先輩があっさり答える。

 十点先取……つまり、ゴールを五回決めれば勝ち、か。シンプルだけど、きつい。


「それじゃあ――始め!」


 誰かの掛け声と共に、ボールが宙に投げられた。


 ※


 試合開始三秒。


「っしゃ! 取ったぜ!」


 陽キャ男子がジャンプボールを制する。

 身長差で有利だったのか、ボールを掴み取った。

 おお、やるじゃん。このまま攻めれば――


 次の瞬間。


「はい、カット」


 不知火先輩が鬼のようなスピードでボールを奪い取った。


「は、速っ!?」


 目で追えなかった。一瞬で、間合いを詰めて、ボールを奪った。

 そのままドリブルで一気に突っ込む。

 陽キャ男子たちが必死に追いかけるけど、誰も追いつけない。まるで風みたいに、コートを駆け抜ける。


 シュッ。


 綺麗な弧を描いて、ボールがゴールに吸い込まれる。

 ネットが小気味良い音を立てて揺れた。


「はい、2点!」


 不知火先輩が余裕の笑み。

 試合開始十秒で先制点取られた。


「う、嘘だろ……」


「マジかよ、あれ……」


 陽キャ男子たちが呆然としてる。

 いや、だから言っただろ。あの人、化け物だって。


「さ、次行くよ!」


 浅葱が声をかけて、俺たちは態勢を立て直す。

 深呼吸。まだ始まったばかりだ。


「よし、今度こそ!」


 陽キャ男子がボールを持って攻める。

 パスを回しながら、ゴールに近づく。


「いいぞ!」


「ナイスパス!」


 俺にボールが回ってきた。

 手に伝わる、ボールの重み。

 チャンス! シュート体勢に――


「甘いわ」


 瀬良先輩が目の前に立ちはだかる。

 その瞳、マジで鋭い。まるでこっちの動きを全部読んでるみたいに。


「ひぃっ!」


 思わず後ろにパス。

 でも、そのパスの軌道を不知火先輩が読んでいた。


「ごちそうさま」


 飛び出してきてカット。

 またもや一気に突破。

 そのままシュート。


 シュッ。


「4点」


 不知火先輩、二本目。


「やっべぇ……全然敵わねぇ」


「マジかよ、あの二人」


 陽キャ男子たちが完全に戦意喪失してる。

 まだ始まって一分も経ってないのに。


「み、みんな! 諦めないで!」


 浅葱が必死に鼓舞する。

 汗を拭いながら、真剣な表情でこちらを見る。

 その真剣な表情に、俺は少しだけ勇気をもらった。


「……そうだな。まだ終わってない」


 俺は拳を握る。

 負けるにしても、せめて一点くらいは取りたい。


 ※


 それから五分。


「8点」


 不知火先輩、四本目のシュート。

 ネットが揺れる音が、まるで勝利の鐘みたいに響く。


「ぐっ……」


 俺たちのチームは、まだゼロ点。

 完全に一方的な展開だ。

 息が上がり、足が重い。


「高一くん、大丈夫?」


 浅葱が息を切らしながら声をかけてくる。

 彼女も必死に走り回ってるけど、女王二人には全く敵わない。


「ま、まぁ……なんとか」


 俺も息が上がってる。

 普段運動しないツケが回ってきた。

 足が震えて、視界が揺れる。


「あと二点で終わりだね」


 不知火先輩が余裕の表情。

 瀬良先輩も涼しい顔してる。汗一つかいてない。


 くそ……このまま負けるのか?


「待てよ……」


 ふと、俺は気づいた。

 あの二人、確かに強い。けど――


「もしかして、俺たち戦い方間違ってね?」


「え?」


 浅葱が首を傾げる。


「いや、だってさ。あの二人に正面から挑んでも勝てるわけない。なら――パスを回して、翻弄すればいいんじゃないか?」


 俺は陽キャ男子たちを集めて、作戦を伝えた。


「なるほど……それなら行けるかも」


「よし、やってみるか!」


 みんなの目に、再び光が宿る。

 拳を合わせて、円陣を組む。


 ※


「お、なんか作戦会議してる?」


 不知火先輩が興味深そうに見てる。


「ふふ、どんな作戦でも無駄だと思うけど」


 瀬良先輩も余裕の笑み。


 その自信、今から砕いてやる。


「行くぞ、みんな!」


 俺たちは散開する。

 いつもと違うフォーメーション。

 コート全体に広がって、パスコースを作る。


「ん?」


 不知火先輩が少し警戒する。


 浅葱がボールを持って、ドリブル。

 不知火先輩が迫る――その瞬間、パス。


 ボールは陽キャ男子へ。

 瀬良先輩が追う――でも、またパス。


「あ、なるほど。パス回しで翻弄する作戦ね」


 瀬良先輩が気づく。

 でも、もう遅い。


 パスが繋がる。一つ、また一つ。

 コートの端から端へ、ボールが飛ぶ。


 最後のパスが、俺の元へ。


「高一くん!」


 浅葱の声。


 俺は――ゴール下に走り込んでた陽キャ男子へパス。


「もらった!」


 彼がシュート――


 バシッ!


 不知火先輩がブロック。

 その跳躍力、人間じゃない。


「甘いよ」


 でも、ボールはまた俺の方へ転がってくる。


 チャンス!


 俺は必死にボールを追う。

 足が震えてる。息も上がってる。

 心臓が破裂しそうなくらい、激しく鳴ってる。


 でも――


「これで、終わりじゃねぇんだよ!」


 ボールを掴んで、シュート体勢。

 目の前に瀬良先輩が立ちはだかる。


「させないわ」


 でも、俺はフェイク。

 体を捻って、逆方向へ。

 これは――漫画で見た動き。


「!」


 瀬良先輩の横をすり抜ける。

 ゴールまで、あと少し。


 不知火先輩が迫る――でも、俺はもう跳んでる。

 全身のバネを使って、跳ぶ。


「入れぇぇぇ!」


 全力で放ったボール。

 手から離れる感触。


 スローモーション。

 ボールが、ゴールに向かって飛んでく。

 綺麗な弧を描いて、回転しながら。


 周囲の音が消える。

 見えるのは、ボールとゴールだけ。


 カーン――


 リングに当たる金属音。


 シュッ。


 そして――ネットに吸い込まれた。


「入った……入ったぁぁぁ!」


 陽キャ男子たちが歓声を上げる。

 コート外の観客からも、拍手が起こる。

 浅葱も飛び跳ねて喜んでる。


「やったね、高一くん!」


「お、おぅ……」


 俺は息を切らしながら、ゴールを見上げた。

 初めて、決めた。

 この感覚――悪くない。


「へぇ、やるじゃん」


 不知火先輩が笑顔で拍手してる。


「ええ、見直したわ。高一くん」


 瀬良先輩も微笑んでる。


 その笑顔見てたら、なんか嬉しくなってきた。

 疲れも、少しだけ吹き飛んだ。


「でも――まだ終わってないよ?」


「え?」


 不知火先輩が再びボールを持つ。

 その目が、また鋭くなる。

 完全に、スイッチが入った顔だ。


「次で決めるから。覚悟してね」


 そして――あっという間に2点追加。

 もはや誰も止められない。


「10点。試合終了!」


 結局、俺たちは負けた。


 ※


「お疲れ様!」


 コートの外で、みんなで水分補給。

 俺は床に倒れ込んでた。

 汗が止まらない。息も整わない。


「疲れた……マジで疲れた……」


「でも、最後のシュート良かったよ!」


 浅葱が笑顔で言ってくれる。

 タオルで汗を拭きながら、キラキラした目でこちらを見る。


「あぁ、あれは奇跡だ。二度と決まらない」


「そんなことないよ。高一くん、センスあるって」


 不知火先輩が隣に座る。

 ペットボトルを俺に差し出してくれた。


「今度、ちゃんと教えてあげよっか? バスケ」


「い、いえ、遠慮しときます……」


 死ぬ。絶対死ぬ。


「ふふ、残念」


 瀬良先輩も笑ってる。

 タオルで髪を拭いながら、優雅に座る。


「でも、楽しかったわ。久しぶりに本気で動いた気がする」


「マジすか……俺、もう動けないんですけど」


「軟弱ね」


「うるせぇ」


 みんなで笑い合う。

 気づけば、陽キャ男子たちとも普通に喋ってる。

 肩を叩き合ったり、ハイタッチしたり。


 あれ? 俺、ぼっちじゃなくなってね?


「さて、次はどうする?」


 浅葱が聞いてくる。


「次……まだあんの?」


「当たり前じゃん! まだ夕方だよ?」


 不知火先輩がニヤリと笑う。

 その笑顔が、悪魔に見える。


 ――俺の地獄は、まだまだ続くらしい。


「誰か……助けて……」


 俺の悲鳴は、体育館の照明の下に消えていった。



最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

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