陰キャ、LINE交換で人生バグる ー青春ラブコメに強制転職ー
「そういえば、小説のネタは探せた?」
昼休みが終わりかけた頃、不知火先輩が机越しに俺へ問いかけた。
小説のネタ……か。ギャグ小説に使えそうなネタは全然見つからなかった。どちらかといえば、恋愛とかラブコメっぽいシーンばかり浮かんでくる。
――どうなってんだ、俺の脳内。
俺はため息をつきつつ、不知火先輩に視線を向ける。
「ネタも何も、ラブコメに使えそうなネタしか出てこなかったんですよ。ギャグ小説書こうとしてるのに!」
「――じゃあラブコメ書けば?」
「は?」
思わぬ一言に、間抜けな声が出た。だが彼女の表情は真面目そのものだ。
ラブコメ? 俺が? ラブコメみたいな青春なんて送ったことないんだけど!?
「あのですね、先輩。俺こう見えて、青春ラブコメ的な経験ゼロなんですよ。それに恋愛小説って知識がな――」
そう言いかけた瞬間、不知火先輩が満面の笑みで俺の腕を掴んできた。
「じゃあさ、私と青春ラブコメっぽいことしに行かない?」
なんの屈託もない笑顔。
その破壊力に、俺は思わず視線をそらした。
「それじゃあ、青春ラブコメのネタ探しに、土日のどっちか遊ぼ」
「――遊ぼ!?」
な、何言ってるんだこの人……モブキャラの俺がメインヒロインと遊ぶ!? そんなフラグ、存在していいのか!?
混乱する俺を置いて、不知火先輩は軽く手を振る。
「それじゃあ、連絡取りやすいようにLINE交換しよ!」
「LINEですね、わかりました――うわっ!? ら、LINE交換!?」
「そうだけど? どうしたの?」
やばい。完全に流れを支配されてる。このままだと俺、ジャンル不明のギャグ小説から、普通のラブコメに転職させられるぞ……!
「……あ、そういえば! 携帯の充電なかったんだった! アハハ!」
「モバイルバッテリーあるよ、貸す」
「あっ! LINEのアプリ入れてなかった!」
「入れ方教える」
「ぐああッ……! 逃げ道、皆無!!」
どうあがいても勝てない。俺の抵抗は、ギャルゲーでセーブデータを消した瞬間くらい虚しい。
「もしかして、私とLINE交換するの嫌だったり?」
不知火先輩が少し不安そうな顔をした。
……しまった、そんな顔されたら断れねぇ。
「あ、いや、良いですよ。交換しましょう。えっと、これでどうですか?」
俺はQRコードを表示して差し出す。
すると、不知火先輩はくすっと笑って――
「あれ? LINE入ってなかったんじゃなかったの? 嘘つき?」
「い、いいから! 早く追加してください!」
彼女がスマホをかざすと、俺の画面に『友達が追加されました!』の文字。
……家族と企業公式アカしかなかった俺のLINEに、まさか不知火先輩の名前が並ぶ日が来るとは。
「それじゃ、またね。高一くん!」
「は、はい……」
――俺の静寂なぼっちライフ、完全終了。
※
放課後。今日は文芸部の活動日だ。
俺はパソコン室で、アイデアノートを見ながらギャグ小説の原稿を書いていた。
カタカタと軽快なキーボード音。だが、ふと隣を見る。
「あの人……化け物かよ」
瀬良先輩が信じられない速さでタイピングしていた。
もはや秒間何文字レベルだ。
俺も負けてられない! そう気合を入れ直したその時――
「あ、そういえば先輩。今週の土日に、不知火先輩と遊ぶことになったんですけど、どうしたらいいですかね?」
素直な疑問を口にした瞬間、キーボードの音が止んだ。
――静寂。
次の瞬間、耳元で声がした。
「優花と遊びに行くの?」
「ひぃっ!? せ、瀬良先輩! 近いです!」
「私は?」
「……え?」
一瞬、時間が止まった。
――私は? って何!? まさかの嫉妬展開!?
「え? 先輩も行きたいんですか?」
「――行かせて」
「率直すぎる……。じゃ、じゃあ今から不知火先輩にLINEで――」
「私ともLINE交換しなさい」
「――え、えぇぇ!?!?」
真剣な表情で迫る瀬良先輩。
お約束の逃げセリフを言う暇もなく――
「あ! そ、そういえばスマホの充電が――」
「モバイルバッテリー貸すわ」
「LINE消してたんですよ!」
「私が入れてあげる」
「ぐぬぬ……!」
なんでこの人たちは陰キャの防御スキルを完全に貫通してくるんだ。
「……わかりました。交換します」
観念して瀬良先輩とLINEを交換する。
またもや『友達が追加されました!』の文字。
俺の孤高なぼっち伝説は、いま完全に崩壊した。
「これからの俺の青春ラブコメに、ご期待ください」
――てなわけあるかいッ!! アホか俺!!
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