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終焉の呪い子たち(さいごののろいごたち)  作者: 藤宮空音
第4章 夏休み開始編

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72/72

簡易完結:その後の展開及び結末

こんなところまで読み進めてくれた読者の皆様へ。


突然のことですみませんが、こちらが最終更新となります。

完結まで頑張りたいと何度も言っていたにも関わらず、結局このような結果になって大変申し訳ないです。

せめてものけじめとして、今後考えていた展開、決まっていた要素の全てをここに記し、最後とさせていただこうと思います。


今後、部分的に切り取ってどこかで再構成する可能性はありますが、『終焉の呪い子たち』として今後この連載を更新する可能性は限りなく低いと思います。でも、気が変わりやすいタイプである自覚があるため、断定的なことは言えず申し訳ありません。

以下、第68話の続き、第69話「帰還」になるはずだったものの下地です。




レミアは蒼い小鳥と、人影に向かって走っていく。


レミアが声をかけるよりも先に、ペパーがこちらに気付いた様子で、(そば)に立つ男性に話しかけた。

すると、男性がこちらを見て、レミアの姿を確認すると、駆け寄ってきた。


「レミアちゃん!」

「あれ……!? アランさん!?」


レミアが男性の姿を確認して、驚いた様子で声を上げる。すると、アランは人差し指を口の前に持ってきて、「シーッ」というジェスチャーをした。


「あっ……、"お父さん"、迎えにきてくれたの!?」

「そう。教授からの頼みでね。帰りは俺が道を共にしろって。ミントから急にいなくなったって聞いたけど、一体何があったの!?」


ロベルトからの頼みで来てくれたらしいアランは心配そうな様子でそう言った。


「それがね……」


学校の中で異空間に迷い込んだこと、絵画の中に吸い込まれたこと、母の形見のヘアピンが助けてくれたこと、郊外に住む知り合いの子が助けてくれたこと。

最後の部分はあまり深掘りされたくなくて、レミアは少しぼかして説明した。


そうやって、レミアはアランにこれまで起きたことを説明したのだった。


***

翌日。

レミアは、アラン、ノア、ペパーと共に馬車に揺られていた。

昨晩は帰ってきた時間が遅く、寮で一晩過ごしてから帰省することになったのだった。

もちろん女子寮に入るわけにはいかないアランは、元々近くの下宿所の部屋をとっていたようで、そこで一泊したらしい。


「それにしても大変だったね……。体の調子は大丈夫?」

「今は全然大丈夫です! ご心配いただきありがとうございます」


レミアは両腕でグッと握りこぶしを作って笑ってみせるとそう言った。


「……でも、不思議なことがたくさん起きて、正直少し動揺しています……。魔力を得るとこういう日常になるのかな?」

「うーん……、はは。魔力が強すぎるせいかもね」


アランはレミアの言葉に対し、困ったように頬をポリとかくと、誤魔化すように笑った。


レミアはアランの顔をじっと見つめる。


(うーん、何か隠してそう……だけど、魔力が強いからっていうのは一理あるのかも。魔力が増大して絵の中に吸い込まれたっぽかったし、エドも魔力暴走を起こしてるって言ってた……)


「そういえば、おじさんが魔力を減少させる魔道具を作ってくれているんですよね?」

「うん、そうだね。この前完成したっぽかったから、帰ったらたぶん渡してもらえると思うよ」


それを聞いてレミアは少し安心する。

その魔道具があれば、魔力の暴走も多少はマシになるだろう。


そして安心したのも束の間、突如ガタンと馬車が急停止し、体がグラリと揺れる。


「な、何……!?」

「すみません! 子どもが……」


御者が後ろを振り返ってそう言う。


「俺が確認してくるよ」


アランはこちらを制止するように手を掲げると、扉を開け、馬車を降りた。


「た、たすけてください……!」


突然、か細く助けを求める声が聞こえた。


(たすけてって言った……?)


レミアが外の様子をそっと確認すると、初等部か中等部くらいに見える幼い男の子がアランの足にしがみつくようにしているのが見えた。


「すみません、坊っちゃまは少しわがままなんです。ご迷惑をおかけして申し訳ありません」


男の子の方に注目していたら、奥に控える男性に気が付かなかった。執事のような格好をしたその男性は、アランに向かってペコリとお辞儀をすると、小さな男の子の手を引いた。


しかし、男の子は目に涙をいっぱい溜め、首を横にぶんぶんと振ってその手を振り払った。


「パパとママに会いたい! パパとママのとこに戻して!!」


(誘拐されている……?)


レミアの頭には最悪のシナリオが過る。

すると、執事らしき男が男の子の横に膝をつき、目線を合わせると、こう言い放った。


「坊っちゃま、忘れたのですか? お父様とお母様はあなたを捨てられたのですよ? このように駄々を捏ね続けるようでしたら、お館様に言い付けますよ」


すると、男の子は急に大人しくなる。


「すみません、差し出がましいことを言うようですが、この年齢の子に対して、少々厳しすぎるようでは?」

「……いえ。これがこの家の教育方針ですので」


2人のやりとりを訝しんだアランがそう言い放つも、上手く躱されてしまった。


「……そうですか」

「それでは私たちはここで。お騒がせいたしました」


そういうと、男性は立ち上がって男の子の手を引いて歩いて行ってしまった。


アランは立ち尽くしたまま、その後ろ姿を無言で見送ると馬車に戻ってきた。


「……ただいま」

「男の子、大丈夫なんでしょうか……?」

「あ、見てたの?」


アランは席に腰掛けながらそう言った。


「はい」

「……どうかな。出来れば保護したかったけど憶測で色々やると、いわれのない罪を着せられたとかなんだとかで大事になる可能性もあるからね……。今後逆に助けづらくなるかと思ってあれ以上何も出来なかったよ……」

「たしかに、そうですよね……」


レミアは感心した。アランは男の子のために色々考えて対応してくれていたようだ。自分だったら焦ってそうはいかないだろう、と考える。


そんなこんなで長い馬車旅を終え、そびえ立つ山々を背景にしながら、田舎の土地を有効活用した、木々に囲まれた広い広いロベルトの研究所に、レミアは帰還した。



70話

→いよいよ実家に帰省し、ロベルトに再会。そこで、完成した魔力を減少させる魔道具を手渡される。

「悪ぃな。もっと早く渡せてれば良かったけど」

その後、そういえばなぜ王立研究所にいたのかレミアは質問した。奇跡の魔力発現&紫ピンズのレミア・ミューの育った環境を調べたいとの名目で、国がロベルト研究所に立入調査を願い出た。国や人間社会といった面倒なものが嫌いなロベルトは、それを退けるため、ロベルトが王立研究所に赴くのと引き換えに、立入調査を拒否したのだった。

長旅で疲れているレミアは休むことを提案され、そのまま自室に戻り、すぐ眠ってしまう。

変な時間に寝てしまったため、レミアは変な時間に起きてしまい、飲み水を取りに行くところでノアとロベルトの会話を盗み聞きしてしまう。ノアがロベルトに学校で起きた今までのことを説明しており、ロベルトは「やっぱそろそろ話しとかないと危ねーかな……」と言っていた。レミアはそこで物音を立て、盗み聞きしていることがバレてしまう。

結局、次の日しっかりと話を聞かせてもらうことになる。


71〜75話くらい

→ベッドに戻ったレミアは、またあの夢を見る。眼下の紫色の炎と、4つ分の人影。その内の1つはやはりエドワルドで、その姿は以前よりもハッキリとしていた。それから、2つの人影もぼんやりと姿を現し始める。片方はヴァンになり、もう片方はヴァンの近くにいた少女、フィオナと為った。そしてもう1つ。それが帰省する途中で出会った、小さな男の子によく似た姿をしている気がした。

そして、夢から覚めたレミアはロベルト、ノア、ペパーと机に向かい合って座り、面談のような形で話を聞かされることになった。

今まで自分の身に降りかかっていた様々なことには理由があるらしい。突然魔力が発現したのもその1つだとロベルトは言う。

レミアはここで、自分が"呪い子"であるのだと告げられた。

突然のことに頭が真っ白になるレミアを置いて、ロベルトは話し続ける。全て仮説であるが、以下、ロベルトの推測。

赤ん坊のときに呪いを暴発させ、それが魔力貯蔵器官を傷付けた。その影響で長らく魔力なし(本当は微魔力あり、一般的な検査では見つからない量)となっていたが、負の感情に引っ張られて、今まで眠っていた呪いの力が目覚める。呪い自体が魔力を底上げする性質があるため、その影響で、今までほぼ0に等しく微々たるものだった魔力が力を増して姿を現した。また、呪いにより魔力が底上げされているため、魔力が強い。

呪いには種類があり、レミアの呪いは「撥ね返す力」

イレーナに魔法を向けられたときに、撥ね返しただろ、と言われ、たしかにそうだ、となる。

また、呪いは負の感情に引っ張られて爆発しやすいらしい。呪いの起源は怨む気持ちである故、自分が色々奪われたから、奪え!!と、呪い子たちは皆聞こえる。呪いは制約が多く、使いすぎると痣が浮き出て、その痣から全身に電流が走る。また、「奪え!!」という声が頭中にガンガンと響き、理性を保てなくなる。

魔法を撥ね返す魔法は存在せず、これは明らかに呪いの力である。カトレア・シェンメリーはこのことに気付いているようだ、とロベルトは言った。

呪い子に関することは全て禁忌とされているのに、なぜそんなに呪いに詳しいのか、とレミアはロベルトに問う。

すると、ロベルトは研究所の地下にレミアを案内した。そこには、ロベルトが国から隠れて密かに呪い子の研究をしてきた形跡が残っていた。

レミアはそれが、ロベルトの専門分野からは遠いことに気付く。彼はなぜ呪い子について研究していたのか、それを本人に訊くと、ロベルトは神妙な顔で「真実を知りたいか」とレミアに投げかけた。「長い話になる。お前にとって、残酷な話にもなる」彼はそう言った。両親の死について詳しく知ることにもなる。レミアはそれでも覚悟を決めて頷いた。


76〜85話くらい

→時はロベルトの学生時代に遡る。

ロベルトはルシュペー研究専門学園の高等科1年生で、高等科からの入学組だった。研究を専門に学べる場所としては、国内最高峰の学園であったが、ロベルトにとっては退屈で仕方がなかった。授業のレベルも周りのレベルも先生のレベルも低く、時折話のわかる教授を見つけては、その研究室に入り浸る……、というようなことを続けていたある日だった。卒業生の面倒を見るから忙しいとのことであらゆる研究室を追い出され、代わりの話し相手を紹介された。

教授から指定された教室で待つも、中々待ち人は現れず、そろそろ帰ろうかと腰を浮かせたところで、廊下の方から言い合いのような声が聞こえてきた。

「だーっから、俺はガキのお守りなんてやだっつってんの」

「アナタこそガキみたいなこと言ってないでちょっとくらい会ってあげなさいよ!」

そんな風にとある女の子に引きずられるようにやって来たのが、レミア・ミューの父であり、当時ルシュペー学園高等科2年生だったメルト・ノクターンであった。そんな2人を見て、ロベルトは「なんだこいつら」と思った。こんなふざけた人間を寄越してくるなんて、と教授を恨み始めた頃、メルトが「1番好きな論文は?」とロベルトに問い、どうせわかるわけないだろうと思いながら、最近読んだ中で1番難解な論文を答えたら、存外話が出来るどころかメルトが格上なことがわかった。それをキッカケに、メルトとロベルトは急速に仲良くなる。お互いに、周りのクラスメイトたちとは出来ない高難度な話が通じることが、とても嬉しく、とても楽しいようだった。

それからしばらく経った頃、2年生が専門分野を選択する時期になる。ロベルトはメルトに何の分野にするのか訊いたが、まだあまり決まっていないようだった。数日後、メルトは、呪い子の研究を専門にすることにした、と言った。ロベルトはそれを聞いて、正直失望した。なぜ? どうしてそんな御伽話のようなものに関する抽象的な研究をするのか? メルトほどの人であれば生活、文明、医学、環境、歴史、だって、何だって変えてしまうような研究が出来るはずなのに。ロベルトはとても納得出来なかった。だから、執拗に訊いたのだ。なぜ呪い子の研究なんかするのか、と。

メルトは「ヨンナの手伝いがしたいから」と言った。そんなメルトに、ロベルトがすかさず「はぁ!? 他人のために研究分野を決めるの!?」と噛み付くと、メルトはロベルトのその勢いに、吹き出すように笑って手で制止する。そして、遠くを見つめてふっと柔らかく目を細めると、「俺のためでもあるんだよ」と言った。その目線の先には、学園の庭の木の高い枝に腰掛けるヨンナ・サーウェルの姿があった。彼女こそが、メルトとロベルトを引き合わせた人物であり、後にレミア・ミューの母親となる少女だった。

「……俺に幸せをくれた、たった1人の大切な人だから、俺の人生はヨンナに捧げたい。ヨンナの願いを叶える手伝いが出来るなら、それが彼女の笑顔に繋がるなら、俺はそうしたい」恥ずかしげもなく、メルトはそう言った。ロベルトは、あの人のことすげー大好きじゃん……、と思ったが、茶化す気も起きず黙って聞いていた。すると、「マジでこれ恥ずいからヨンナには内緒な?」と彼は照れながら言う。ロベルトは、目を逸らしながら頷いた。何というか、気まずくて少しむず痒かった。

2人が呪い子の研究で忙しくなると、ロベルトはまた暇になってしまった。本や論文を読み漁るものの、それもすぐに読み切ってしまう。自分も何かの研究に専念すれば良いことはわかっていたのだが、ロベルトは知識を増やしたり、謎を解明したりすることそれ自体が好きであり、特に研究したいことがあるわけでもなかった。

そこで、メルトとヨンナの研究を覗きに行くことにした。

そのまま雑用などを手伝っているうちに、彼らがなぜ呪い子の研究をしているのか、知ることになる。


86〜90話くらい

ヨンナ・サーウェルには、呪い子の姉がいた。彼女の名はルーナ・サーウェル。しかし、世間では、呪い子は伝承やおとぎ話の存在で、実在するなんて誰も思っていなかった。もちろん、それはヨンナもだった。

しかし、姉が13歳を境に呪いの力が開花する。ルーナは優しくお淑やかな子であったため、負の感情があまり出ていなかった影響で最初はその呪いの力を制御出来ていた。しかし、15歳を迎えた頃、呪いの力が強まり、度々自我を失い、怪物のようになってしまっていた。そんなルーナを不気味がり、その存在を隠蔽したい家族の手により、ルーナは屋敷の一部屋に幽閉されてしまう。

呪いが開花してからも、家族から幽閉されてからも、ヨンナだけはルーナの元に毎日通って毎日話をした。人を傷付けてしまう自分のことをかなり気に病んでおり、落ち込むルーナをヨンナはいつも元気付けた。彼女が笑うと、自分も嬉しかった。だから、毎日、毎日、彼女を笑わせた。そんなある日、自我を失い、醜くなってしまう自分を恥じ、見られたくないとルーナは零す。それが酷く哀しくて、ヨンナはルーナを静かに抱きしめた。この日、ヨンナはルシュペー研究専門学園の中等科に進み、呪いを解く方法を見つけて帰ってくることをルーナに誓う。実は密かに受験の準備を進めていたことをここで明かしたのだ。ヨンナ、12歳のとある夜だった。

それからヨンナがルシュペー学園に進学し、2人が会える機会はとても減ったが、長期休みには必ず帰省し、姉妹の絆をより一層深めた。

ルーナにとって、ヨンナは心の支えであり、光であった。今まで彼女と過ごした日々がルーナの心を照らしていた。だから、離れ離れでも大丈夫だった。

「ありがとう、ヨンナ。私の、いちばんたいせつで大好きな、たった1人の妹」

彼女のそんな呟きが一人ぼっちの部屋の暗闇に消えていった。


91〜95話

ロベルトは2人の手伝いをするうちに、2人の出会いを知ることになる。2人の出会いはルシュペー学園中等科2年生の頃らしい。

メルト・ノクターンは一言で言えば問題児だった。優秀な研究者一家に生まれ、親の期待通りの賢さを持ち、その頭脳をもって研究者の道を行くことを強要されていた。自分の意思など尊重されず、ノクターン家の子どもに生まれたならばこう生きる、というようなことが嫌で、ささやかな反抗心でメルトは毎日全ての授業をサボっていた。学校の庭の木の下でいつも通りサボっていたそんなある日、「あぶなーい!!」という声とともに、上から女の子が降ってきた。それが、メルト・ノクターンとヨンナ・サーウェルの出会いだった。メルトは、上から降ってくるだなんて絶対ヤバイ女だ、関わらないでおこうと思っていたものの、ヨンナの方は、到底中等科の生徒には理解出来ないような難しい本を読んでいるメルトに興味深々で、度々現れては話しかけてきた。

この頭脳があれば、呪い子について何か新しい視点をもらえるかもしれない、ヨンナの方には最初、そんな下心があったが、メルトと話し、仲良くなるうちに彼の人間性自体に興味が湧き、気付けば惹かれていった。

全授業をサボりつつも、隠れてしっかり勉強しているところ、頼み事をしても嫌だと言いつつなんだかんだしっかりやってくれるところ、最初はずっと警戒していたのに今ではもう懐いて甘えてくるかわいいところ。

一方で、メルトはこんな問題児である自分を全く咎めることなく受け入れてくれたヨンナに心を開き、関わる内に彼女の志の高さや内に秘めた思い、太陽のように周りを照らす精神性に惹かれていった。


96話〜

すみません、ここからは更に簡易的になります。

2人が高等科3年生(ロベルトが2年生)の夏、突然呪い子に関する一切が禁忌となる。教職員たちが噂をしているのをいち早く聞きつけ、禁忌の認定に国が関わっていることを知る。(実情は、7年以内に生まれる呪い子が世界を滅ぼすという予言が出たため、禁忌認定される)

最悪、突然国の衛兵に捕まりかねないと読んだヨンナは、学園からの逃亡を計画。後処理をロベルトに任せ、メルトとともに失踪する。

国はなぜ呪い子研究を禁忌としたか?

ヨンナは解呪の研究をしていたから、問題なかったのではないか?

→口ではどう言おうとも、呪い子の研究をされることにより、その研究結果によっては国に反旗を翻す不穏分子になり得ることがあるため、一律で禁忌に。

(昔も一時的に呪い子の研究が禁忌になっていた時代があったが、英雄伝説が継承されない事態は避けたく、呪い子の話と英雄伝説は切り離せないため、物語や演劇に於いては許可が出る。そんなような歴史がぐちゃぐちゃと積み上がり、物語の中に登場する呪い子は統一感のない結果となった)


そして逃亡から5年後、ヨンナとメルトが23歳のとき、結婚した2人の間に生まれた子どもがレミアだった。

しかし、レミアが生まれてから数日後、○日〜○日の間に○○番地に生まれた赤子が世界を滅ぼす呪い子だ、と予言が出て、国が寄越した刺客がメルトとヨンナ、レミアの暮らす家にやってくる。

殺されそうになるレミアだったが、なんとその瞬間に「撥ね返す」呪いの力が発現し、撥ね返った力により、周囲にいた刺客、両親を全員殺めてしまう。

死の間際、ヨンナとメルトは生き残ったレミアをロベルトに託すことに決め、それぞれの使い魔であるノアとペパーへ後の全てを頼んだ。新たな追手が来る前にお願い、と頼まれ、ノアとペパーは2人を看取ることなくレミアを連れてロベルトの元へと旅立った。ヨンナは、姉が呪い子であったことから、自分の血筋のせいでレミアが呪い子なのだと、ひとり悲しんだ。そんなヨンナの気持ちに気付いたメルトは、お互いに床に横たわったまま、ヨンナをギュッと抱きしめ、大丈夫だ、と宥めた。ヨンナとメルトはその後、2人きりで静かに息を引き取る。


呪い子の予言や処分については予言の魔法を得意とするヘンリーに一任されており、呪い子の禁忌認定からレミアへの刺客に至るまで全てヘンリーの指示であった。ヘンリーは呪い子を殺すことで消そうとしたが、呪い子は1人死んだら、また1人生まれ変わるという性質があることを彼は知らなかった。更に、呪い子の全体数も知らなかった。


呪い子が禁忌とされてから、国が調査網を厚くしたため、ヨンナの姉、ルーナは見つかり、消されてしまう。

ルーナは人を傷付けてしまう自分のことをかなり気に病んでおり、その命が潰えるとき、穏やかに笑っていたという。彼女にとって、ルーナを殺すために放たれた、自身を焼き尽くす眩い魔法の光は、辛く苦しい人生を終え、罪が許された幸福の光であったのだ。

ルーナが消されたのは呪い子が禁忌となって以降であり、ヨンナ失踪後だったため、2人は終ぞ再会することは叶わなかった。


ノアとペパーにより、2人の訃報を知るロベルト。しかし、悲しむ暇もなく、2人の残した子どもであるレミアの育児が始まる。22歳になり、優秀故に自分の研究所を持っていたロベルトは研究所の皆の力を借りながら、慣れない育児に励んでいく。


ロベルトや研究所の皆の努力の甲斐あってか、レミアは国に呪い子だとバレることなく、魔力なしのまま初等科までの教育を終える。

中等科に上がるためにはどこに入るのにも受験必須になるが、学校はどこも優秀な子を輩出しようと必死(初等教育はほとんどの子どもが受けるが、中等教育からは進路が分かれる)で、魔力なしの子どもなんてどこも入れてくれない。そんな中、ダメ元で出した国最高峰のユーヴェリア学園のみ最下層として入学させてくれることに…!(一番下のクラスをボロボロにすることで、一番下には落ちたくない…!というモチベ上げに使われている)

中等科からは進路が分かれるとは言いつつも、ほぼほぼ全員高等科までは卒業する人が多い。ロベルトは、一応レミアの意思を聞き、レミアも「まぁ別にどこ入っても変わんないし…魔法使えない分、高等学校までは卒業しておきたいし…」とのことで、ユーヴェリアに。


ロベルトは元々魔法科学と魔法数学が得意だったため、魔道具の開発等にも手を出していたが、レミアが大きくなるにつれて、魔力なしへの差別を痛感し、この子が生きやすい世の中にしたいと思うように。魔力量に関わらず誰もが平等に過ごせる社会に少しでも近付けるために、以降、本格的に魔道具の開発に専門的に勤しむようになる。


両親の死の真相、自分の力の真相を知って茫然とするレミア。

これにて第2部終了。



第3部

不正魔道具編

夏休みが終わり、2学期が始まる。

学校内が騒がしい。とある病気に関する噂で持ちきりだった。それは夏休み前にも聞いた、毒に一日中苦しむとか、身体の自由を急に奪われるとかの噂だった。

そんな、落ち着かない様子の学園内の第3学年の校舎に、編入生が1人やってくる。エドワルド・サンダーだ。

ルクスと並ぶほどのイケメンだということで、次の日には学校中が病気の話など忘れて編入生の話題に塗り替えられた。そのため、レミアの元にもエドワルドの編入の噂が伝わってくる。

学校で再会を果たし、2人で話していると、謎のイケメンと成り上がり紫ピンズが親しそうだ、ということでこれまた学校の噂になる。すると、そのことがイレーナ・ジュビムーンを刺激したらしい。イレーナは、エドワルドは自分の彼氏だとか未来の夫だとか何だとかを喚き始める。実はエドワルドとイレーナには面識があった。エドワルドがレストランで働いていた頃に、面倒な注文をたくさんしてきた親娘の正体がイレーナだったのだ。やや苦労しつつもエドワルドはこの騒動を鎮静化させる。


そのプチ騒動が収まると、今度は噂になっていた病気の被害者が学園内に出る。学校側は情報を隠そうとしていたが、瞬く間に生徒中に広まり、学校中の大騒動となる。

それからすぐ、レミアに生徒会の招集がかかる。生徒会には、学校内の表向きの仕事の他に、裏任務というものがあるらしい。裏任務の参加は任意だが、レミアは必須だと言われた。他の参加者は生徒会長のルクス・ウォーレーと、副会長のクラリス・ホンジールの2名。レミアは問答無用で裏任務に連れて行かれながら、裏任務がどういうものかの説明を受けた。簡潔に言えば武大臣率いる魔法兵団の仕事を手伝うことらしい。裏任務のことは本来生徒会メンバーしか知らないが、生徒会メンバー以外の一部の生徒の間でまことしやかに囁かれており、本当かわからないが…と期待半分に裏任務目的(ひいては将来魔法兵団に入るための足がかり目的)で生徒会に志願するものもいる。ルクスもその内の一人。

学園を出発し、街に着くと、レミアはこれからやることを告げられる。どうやら病気の原因を潰すために街に来たようだった。流行り病の解決に、医療班ではなく魔法兵団が駆り出されるなんて不思議だと考えていると、視界の端に暴走状態のヴァンとフィオナが現れ、彼らの目の前の人々が急に倒れたり苦しんだりし出す。あまりに突然のことに思考が停止し、その場から動けなくなってしまったレミアに、ルクスが「びっくりしたかい? 彼らは”呪い子”。呪いの力で人々を苦しめているんだ。僕たちの任務はね、呪い子の殲滅さ」と説明する。説明している間にも、ルクスはヴァンとフィオナに向かって魔法攻撃を続けていた。

レミアの心臓は焦ったように早鐘を打ち続けていた。自分が呪い子であることを知られたら、消される。そんな恐怖が全身に広がっていく。

結局、ヴァンとフィオナが強すぎて彼らを捕まえることが出来なかったのだが、彼らが捕まらなくて良かった、とレミアは少し安堵する。きっと、彼らは正気じゃないだけだ、普段の彼らが人を攻撃するなんてありえない、と自分に言い聞かせていた。

それから、レミアは呪い子の殲滅任務について聞かされる。国の優秀な予言師の力により、今後1年もしないうちに5人の呪い子により世界が終焉を迎えるとの予言が出ているようだった。5人集まるとまずいらしいので、とにかく数を減らそうとしている段階らしい。今は予言に関わらず、毒の呪いと身体の自由を奪われる呪いに苦しんでいる国民が増えたため、一刻も早く彼らを消す計画らしい。魔法兵団のその任務を、ユーヴェリア生徒会のルクス、クラリスも手伝っているのだという。


ルクスには、ルーシーという妹がいた。約5年前、彼女は毒の魔法により1日中苦しんだ後、その後遺症で動き回れる時間が極端に減ってしまい、1日のほとんどをベッドで過ごす生活を余儀なくされた。それは今も続いている。そんな妹の姿を見てルクスは胸を痛め、絶対に許せないという思いを抱くようになる。そしてそれが呪い子の仕業によるものと知り、武大臣であるいとこのジークから話を色々聞き出し、同年代に世界を滅ぼす5人の呪い子がいるかもしれないという情報までたどりつく。それを踏まえ、彼は生徒会に所属することを決め、まずは学園内にいるかもしれない呪い子から洗い出して潰していくのだ、彼らを野放しにしてはいけない、との考えの元、日々目を光らせている。レミアの登場は渡りに船、という風に思っており、強い彼女がいれば、呪い子の抑圧も今までより好転していくだろうと踏んでいる。卒業後はジークのいる魔法兵団に所属予定で、必ず呪い子を葬り去るという目標がある。

クラリスは、そんなルクスの役に立ちたくて、裏任務をともにしている。ルクスにはその行動の理由を明かしていないため、ルクスはクラリスがなぜ裏任務についてきているのか知らない。彼女の人生計画に何かしらの形で役立つからなんだろうなくらいの認識。


一方、呪い子サイドでは、ヴァンとフィオナが頻繁に魔力暴走や呪いの暴走に苦しめられるようになる。その原因をほぼ確信したヴァンはザーガを問い詰める。ザーガが、これを付けていればお互いの位置がわかる、と勝手にヴァンとフィオナの指に嵌めた指輪型の魔道具、それが何か悪さをしているとしか思えなかった。実際にお互いの位置がわかる魔道具として使えているが、何か、これが魔力を不必要に底上げしているような、そんなものに思えるのだ。

調べてみるから貸してとザーガは言うが、ヴァンとフィオナは、その指輪は効果が切れるまで外れないとザーガが言っていたではないか、と訴える。困った様子のザーガはエドワルドが帰ってくるまで待とうと説得する。エドワルドには今ユーヴェリア学園でやってきて欲しいことをお願いしていて、それが呪い子を呪いの力から解放できる石を盗ってくることだという。納得するしかない2人はそれで渋々引き下がる。フィオナは無意識の間に色んな人を傷付けてしまうのが嫌だと泣いた。ヴァンはそれを慰めることも出来なくて、ただ拳を強く握りしめて俯いた。これ以上呪いの被害者が増えないように、エドワルドが早く帰ってくるのを待つしかなかった。


裏任務を終え、レミアは数日間悩んでいた。あの2人が呪い子だということは、エドワルドもほぼ確定で呪い子なんじゃないか、と。よく見る夢のこともあってか、レミアはほとんどそう確信していた。そして自分も呪い子であるとエドワルドに明かすか悩んでいた。そもそもエドワルドが呪い子だったなら、ルクスの手によって消されてしまうのではないか、そんな思いも過る。呪い子のことを語るときのルクスの目は、とても冷え切っていて怖かった。


それから数週間。色々と悩みつつも、勉強に追われたりしていると、ほどぼりが冷めたようで、病気の話はほぼ聞かなくなる。そういえばどんどん裏任務に駆り出される回数も減っていっていた。レミアは、その度に対人で魔法を向けると怖くなって上手く魔法が使えなくなる、というのを演じてなんとか2人を攻撃することを避けていた。

そんなこんなでそろそろ中間試験を迎えようかというところで、新たな問題が勃発する。それは不正魔道具の使用だった。不正魔道具の流通量が急激に増え、数多の生徒がそれを手に出来てしまったらしい。魔力を不正に底上げする生徒が次々と現れ、増加しすぎた魔力に、魔力暴走を起こす生徒も出てきて、学園は大騒ぎ。中間試験は一時、日程未定の延期になり、学園側は教師も生徒会も、総出で不正魔道具の取り締まりを強化することになる。

そんな魔道具使用者を見ていると、レミアはその姿がヴァンとフィオナに重なることに思い当たる。ずっと悩んでいたが、意を決してエドワルドに全てを話し、相談することを決める。

レミアが呪い子だと知ると、驚いた様子のエドワルドだったが、彼の方も思い悩むと、何かを決めたらしい。自分がとある石を探しにこの学園に来たことを明かした。ヴァンとフィオナを助けることにも繋がるらしいから、早く探し出すことに協力してほしいと言われる。彼によると、元々呪い子を呪いから解放する石がユーヴェリアにあるから、探してこいとのことで編入することになっていたが、先日追加の手紙が来て、ヴァンとフィオナをその石の効果で助けてほしいとの連絡があったようだ。ただ、具合が悪いとしか書いていなくて不審に思っていたところ、レミアの不正魔道具と魔力暴走の話を聞いて、彼は腑に落ちたようだった。


それから、時間が空いている放課後は、エドワルドと協力して”石”を探す日々が始まった。延期された中間試験を終えても、期末試験が近づいてきても、石は中々見つからない。そんなある日、レミアは夏休みに異空間に繋がってしまった鏡を見つける。あのときはここを抜けちゃって、と話していると、今回もまたズルンとすり抜けてしまうレミア。今度はついてきたエドワルドも一緒に、再び異空間へと足を踏み入れてしまう。そこでソルナの肖像画と再会すると、ソルナの肖像画の目の前の雪山の絵の向こう側に部屋が存在し、その中に石があると、ソルナが教えてくれた。でも部屋の開け方はわからず、さらにその石は危険だと言う。それがなぜかと問うと、約15、6年前の話だとソルナは話し出した。

ソルナの肖像画の前を通る肝試しのようなものが流行っており、無理矢理連れて来られた男の子とその他4人が肖像画の前を通りに来たらしい。しかし、絵の目の前を通った人の命を奪ってしまうケミルはもうすでに亡くなっており、噂だけが独り歩きをしている状態だったため、何も起こらなかった。それが不満だったらしい4人はソルナの肖像画や、目の前の雪山の絵を色々弄ったり、魔法攻撃をしたりしていた。お前も何かしろと男の子が突き飛ばされて、雪山の絵にぶつかると、突然、絵が開いて部屋が現れた。その後、脅された男の子が先頭でみんなが部屋に入っていって、奥にある紫にゆらめく石を手に取った瞬間、部屋も石も消えて、全員ソルナの目の前で倒れていたらしい。

それから数十分して助けがきて、治癒の魔法を使える女の子が無理矢理連れて来られた男の子を真っ先に治そうとしていたのだが、身分(ピンズ)で優先順位を決めろだの何だの言われて一番後回しになっている間に彼だけ死んでしまったのだという。身分だの何だの上の言うことを聞いて友達を死なせてしまった自分を、彼女は酷く責めていたという。それから何時間も、彼の亡骸の側で泣いたまま、離れなかった。


そんな重い話を聞かされて絶句しているレミアの横で、エドワルドは何かを考え込んでいる様子だった。そして、エドワルドは、その治癒が使える女の子はカトレア・シェンメリーではないか、と問う。すると、ソルナはうーん……と考え込んだ後、そんな名前だったかもしれないと答えた。


石のありかがわかったのは良いものの、話によれば随分危険な石らしい。どうしようかと話しながらレミアは雪山の絵に触れてみるが、当然何も起きない。そもそも部屋の開け方もわからないのだ。エドワルドは、呪い子の肖像画、呪い子の石、もしかして……、と呟くと絵に向かって何かの力を発動した。すると、すんなりと部屋が現れ、レミアは呆気にとられる。

何をしたのかと聞くと、呪いの力を使ったらしい。どうやら、エドワルドは完全に呪いの力を自分の意思で操ることが出来るようだった。部屋が空いたのは良いものの、ザーガの言うことも信じきれないし、石に触れるのはまだ辞めておこうか、ということで2人は一度帰ることに決めたのだが、この異空間から出る方法が相変わらずわからなかった。

困り果てている2人に、ソルナが出口を教えてあげようかと提案する。レミアがぜひお願いしようと口を開いたところで、交換条件があると、ソルナは言った。


彼女からの交換条件は、姉であるルナリアに会わせてほしい、というものだった。大きな絵画を持ち運ぶのはどう考えても目立つが、ここから出られないよりはマシかという話になって渋々その条件を呑むことになった。

夜になるまで待ち、なんとか浮遊魔法で持ち上げながら人の少ない校舎を走り抜けて、2人はソルナを女子寮の入り口まで運んだ。予想が間違っていなければ、彼女が姉のルナリアのはずだとレミアは考える。

すると、入り口の前では寮母のネネが待ち構えていた。「アナタが厄介事を持ち込んでくるって占いに出た」と言って、レミアとエドワルドを見やると面倒くさそうに大きくはぁとため息をついた。そのままネネは、ここは女子寮だからと言ってエドワルドを男子寮に追い返し、残ったレミアとソルナの肖像画を見つめると、数秒経ってから口を開き、早く会わせてあげたら?と言った。ネネが止めたのにと少しモヤモヤしながらもレミアはソルナを中に運ぶ。そして、2人は感動的な再会を果たす。無事役目を終えたレミアは、疲れていたのもあり、まだ話し続けていた2人を何も考えずに並べて置くと、顔が見えない!とソルナから猛烈な批判を受けた。そうだった、と慌てて向かい合わせにしようとしたが、なんと奇跡的に2つの絵画の部屋が繋がったらしい。ソルナがルナリアの絵の方に移動すると、誰もいなくなった方の絵画はキラキラと消えてゆき、2人は1枚の絵画に収まると、泣きながらも幸せそうに笑った。


予言師のヘンリー・ルッチマンは、うっそうとした田舎の森にある別荘に久々に訪れていた。そこには、早々に見つけ捕らえた幼い呪い子、タルモ・セルディを軟禁していた。彼の様子をこうして時々確認しにくるのだ。夏頃に通行人の馬車の前に飛び出し、助けを求めた事件があったと聞いたときはヒヤヒヤしたが、現状こうして何も問題が起きていない状況に、ヘンリーは満足していた。呪い子は5人集結させないようにしつつ、一人はこうして囲っておくことで、後々自分の功績のために利用しようと考えていた。そうして彼は、ユーデリック・ウォーレーを出し抜いて成功した将来を思い描いてはほくそ笑んだ。


それから数日後の週末、レミアは王立図書館に来ていた。石がどんなもので危険なのかそうでないのかを調べるため、ペパーをロベルトの元に確認に向かわせ、自分は文献を探しに来ていた。この王立図書館は国内随一の蔵書数を誇っており、何かしらの手がかりが見つかるのではないかと思ったからだった。とはいえ、呪い子に関することは禁忌認定されており、直接的な文献は閲覧できないため、英雄伝説あたりを探すのが関の山だ。

そんなことを考えながらうろちょろしていると、後ろから急に「どんな英雄伝説をお探しで?」と声をかけられた。振り返って声の主を確認すれば、高価そうな服を身にまとい、胸ほどまである長い髪を片側に纏めて結い、モノクルをかけたスラリとした男性が目の前にいた。いでたちと声をかけてきたことから察するに、この図書館の管理人だろうか、とレミアはぼんやりと考える。「あぁ……えっと……、なるべく色んな種類のやつを……」と、レミアはしどろもどろに答えた。すると男性はにこりと笑って、ではこちらはどうですか、と3冊ほどぱぱっと手に取っておすすめしてきた。レミアはそれを遠慮がちに受け取る。

「呪い子について知りたいなら、何の意味もない本ですけどね」

彼が突然そう言うので、レミアはバッと顔を上げて、目の前の男の瞳を見つめる。なぜバレたのだろうか、不安で暴れる心臓を押し付けながら焦る頭で必死に考えた。そもそも、バレたらどうなるのだろう。捕まるのだろうか。数秒間見つめ合った後、彼は口を開くと「おいでなさい。特別に、文献を見せてあげましょう」と言って、レミアを管理室の奥へと案内した。レミアは疑問と不安で胸をいっぱいにしながらも、呪い子の文献見たさにその男性についていったのだった。


連れて行かれた場所は、王立図書館の地下だった。その一角に禁忌本コーナーとして、呪い子に関する本がまとめられていた。持ち出しはダメです、閲覧するならここで、と男性が言うので、レミアは渋々その場でパラパラと立ち読みしていった。男性が壁に背を預けて立って、少し離れたところからこちらを見ていたため緊張して内容が中々頭に入ってこない。

そんな中、なんとか読み取った内容としてはこうだった。ロベルトの憶測はかなり当たっていたようだ。

・呪いは元々持っている魔力を底上げする性質がある

・呪いにも強さの差がある

・呪いには種類がある

・命を脅かす呪い子は滅多に生まれない

・呪い子は常に5人存在する

・初代呪い子の魂が5つに分かれて飛び散ったから、と言われている

・初代は殺すことが出来なかったため、今もどこかに封印されている

・呪い子は1人死んだらまた1人生まれる

・呪い子に遺伝や規則性はない

・呪いの起源は恨む気持ち

・呪い子の脳内には「奪え!」という声がこだまする

・呪いの声によって理性が保てなくなることがある

・呪いを使いすぎると痣が浮き出て、その痣から全身に電流が走る

・呪いの発現は後天的なことが多く、成長してから呪い子になることが多い

「呪い子は1人死んだらまた1人生まれる」など、魔法兵団も知らなそうな気になる内容も何個かあったが、結局石についての情報は全く得ることが出来なかった。

すると、「終わりましたか?」と男性が声をかけてきた。目的の結果は得られなかったが、レミアは早くこの空間から解放されたくて、はい、と頷く。すると、男性がツカツカとレミアの方に歩みよってきて、顔に向かって手を伸ばしてくる。怖い!と思って目を瞑ると、顔の横でカタン、と本を手にする音が聞こえた。なんだ、本をとっただけか、勘違いして恥ずかしい、とレミアは反省する。

「レミア・ミュー。あなたはオルロード様を満足させられますか?」

突如、名前を呼ばれてレミアはビクッと反応する。なぜ名前を知っているのだろうか。そもそも禁忌本のコーナーに連れてきてくれている時点でおかしい。というかずっと怪しい。

「オルロード様にとって面白味のある、満足のいくシナリオを、舞台を、完成させられるんでしょうか」

彼が何を言っているのかわからずに固まっていると、男は持っていた本をパタリと閉じた。

「……期待しておきましょうか」

特にこちらを見ることもなくそれだけ言うと、彼は地上に向かって歩き出した。閉じ込められたら嫌だとレミアも小走りでついていき、それ以上何の言葉を交わすこともなく、2人は解散した。

そしてその帰り道、王立図書館の管理人の時点で文大臣のレオナード・グレゴーだったのでは?と今日の出来事を思い返していた。


一方その頃、女子寮の入り口では、ソルナが永遠にルナリアに話を聞かせていた。ルナリアはそれを嫌がることもなく、にこやかにずっと話を聞いている。ネネは1週間以上も続くその話し声にうんざりし始めていた。

そんなある日、ソルナが喋るのを突然やめ、「あ、あなた! あのときの!」と言うので、ネネが気になって様子を確認しに行くと、そこには妹のカトレア・シェンメリーが立っていた。

ネネは深呼吸をする。今度は逃げなかった。

ソルナとルナリアを見たからだろうか。自分も姉妹を大切にすべきだと思ったんだろうか?、そんな風に考える。

ネネは、治癒魔法が得意で、代々医大臣を務めてきたシェンメリー家の長女として生まれた。成績も良く、肝の据わり方も評価され、家中の期待を背負っていたが、高等科に入ってもなお、終ぞ治癒魔法が使えるようになることがなく、家中をがっかりさせた。しかも、治癒魔法を使えないくせに本人はケロリとしており、その反抗的な態度かつ、一番得意な魔法は予言の魔法というふざけた魔法だということで、シェンメリー家を勘当されることとなった。妹のカトレアとは仲が悪いわけでも、特別良いわけでもなかったが、カトレアの方が評価され出してからは、なんとなくネネの方から彼女を避け続けていた。そして、そのまま大して話すこともなく、ネネが高等科を卒業後、カトレアの在学中に家に何の痕跡も残すことなく颯爽と姿を消したのだった。

カトレアの方は、何をしても言われても飄々としている姉のことが好きで尊敬していたからこそ、自分のいない間に姿を消したことがものすごくショックだった。

そんな時を経て、2人は再会を果たす。それぞれの心の内を話して、少しだけ、本当に少しだけ。だけど決定的に、わだかまりが解けて関係性が変わった。

そんな2人の様子を、肖像画の2人も優しく笑って見守っていた。それから約1週間後、もう話したいことは全て話した、と、ソルナとルナリアは動かなくなった。

幸せそうなその表情のまま、本当の絵画へと変わってしまったようだった。


時はそろそろ2学期も終わろうかというところ、季節は冬になっていた。

結局ロベルトの方でも石についてのことはわからなかったらしい。

レミアはおそらく学期最後になるであろう裏任務に駆り出されていた。そこで事件は起きた。行き過ぎた正義感を持った市民が抑圧を手伝うとのことで放った大きな暴発魔法がレミアに襲い掛かったのだが、それを無意識に呪いの力で撥ね返してしまったのだ。それをきっかけに身体に痣が浮き出て苦しむレミア。魔法を撥ね返す魔法が存在しないこと、痣が浮き出たのを目撃されたこと、そのどれもが、もう学園には留まれないことを意味していた。驚きと失望が混ざったような表情をしているルクスとクラリスを残し、レミアはヘアピンを使ってエドワルドの元に瞬間移動する。

すると、そこは異空間だった。ヴァンとフィオナが街にまた現れたことを聞きつけ、もう躊躇している暇はないと、エドワルドもちょうど石を持ち帰り、学園を去ることを決めたところだったらしい。

エドワルドが意を決して石を手に持ったが、特に何も起こらない。しかし、その後彼は少し顔を歪めた。どうしたのかと問おうとすると、レミアの身にも異変が起こり始める。この石に近付くと、なんだか頭痛やめまいがしたり、息切れがしてきたり、耳鳴りがしてきたりするのだ。「もしかしたら、量が多すぎると良くないのかもしれない。毒と薬は紙一重って言うし」とエドワルドは言った。2人は急いでこの前ソルナが教えてくれた出口から外に出た。するとそこは、学園ではなく、郊外の呪い子たちの隠れ家だった。レミアは慌てて今出た扉を確認しようと後ろを振り返る。しかし、そこにはただただ田舎の景色が広がるだけだった。レミアはなんでと驚いていたが、エドワルドは、強く念じた場所に出るゲートだったのかもしれないと言った。この前は元の場所に帰りたいと思っていたから、女子寮の前ではなく、最初にくぐり抜けた鏡の前に出たのではないか、とそう言った。そうして2人は隠れ家へと急いで入っていった。


一方で、数日後、街と学園は大騒ぎになっていた。

呪い子であるレミア・ミューを学園内に引き入れたとし、その責任を問われたヘンリー・ルッチマンは役職を解雇され、国外追放される予定だったが、その予言の力が他国に流出してはならないとのことで、国内の牢に生涯収監されることになった。また、ヘンリーの逮捕をいち早く聞きつけたザーガが、国が動くよりも早く軟禁されていた呪い子のタルモを救出しに行き、隠れ家へと連れ帰った。

そして、それと同時に5人の呪い子によって半年もしない内に世界が滅びるとの予言が、世間に通達される。信じて怯える者、信じず楽観する者、様々な者がいたが、世間は大パニックに陥り始める。


蛇足:ユーデリック・ウォーレー(ルクスの父親かつ、ヘンリーが敵視している同級生)について

46歳。三英雄、ザイン・ウォーレーの末裔。次男。要領が良く、なんでもこなすが、長男がそれを上回る天才だった故、自分の才覚に無自覚であり、地位などには全く興味がなく、全てのことがバカらしくくだらないと思っていた。自分に何かと突っかかってくるヘンリーがなぜ自分をそんなに気にかけるのかもわからなかったし、彼にも全く興味がなかった。本人がこんなだし、長男が王の補佐官を継いだので、結婚や後継には全く興味がなく、なんとなく王城で文官として働いていた。(王城の文官はめちゃくちゃすごい)そんな退屈な人生で、27歳のときに、妻と恋に落ち、28歳のときに子ども(ルクス・ウォーレー)を授かる。妻と子どもに夢中。それ以外はわりとどうでも良い。(この世界の基準で言うと、結婚がかなり遅め)

ちなみに、ユーデリックとルクスは一体どこからその力が…?と思うほど細身で、どちらかというと、運動よりも勉強の方が得意な(言ってもそれでも近接戦上位)、ウォーレー家としては珍しい2人。なんだかんだ無口マイペースかもしれない。



無事に石を隠れ家に持ち帰った2人を見て、レミアのことも歓迎するザーガ。だが、石はこれだけでは効果を発揮せず、あと4つの石と組み合わせる必要があるらしい。しかし、それぞれの石の在り処はわからないのだと言う。それを聞いたエドワルドとヴァンが、ふざけるなとザーガに掴みかかる。すると、ザーガは君たちの生まれ故郷のどこかにある可能性が高いと言い出した。ザーガが指をさしたのは、エドワルド、ヴァン、フィオナ、タルモの4人。ザーガの思いつきで言ったことに振り回されているように感じたエドワルド、ヴァンが納得のいかない表情をしていると、国中に呪い子の予言の噂が広がっているから、多くの人が君たちを探し出して殺そうとするだろう、この家もいずれ見つかる、とそう付け加えた。


結局家から出て逃げなければならないなら、ということで、5人は石を探しつつ逃げる旅に出ることを決めた。(ノアとペパーはレミアの騒ぎをいち早く聞きつけ、捕まる前に女子寮を出てロベルトの研究所へと逃げ帰っている。)

旅に出るにあたり、不正魔道具によるヴァンとフィオナの暴走が懸念点だったが、出発して数日後、魔道具の効果が切れたのか割れて壊れた。


ここからは、それぞれの故郷を巡りながらの過去編と石の獲得になります。

簡易的になりますが、以下、過去です。



ヴァン

スラム街で生まれ、お金がなく、育てることができないと母親に売られる。奴隷として働かされていたが、幼少期から魔力が高く、呪いも早く(7歳頃)から発現していて、主に歯向かえてしまったため、そのまま脱走。とはいえ、この年齢の子どもが1人で生きていけるわけもなく、スラム街の隣街の道端で倒れているところを拾われて孤児院まで届けられる(スラム街ほど治安は悪くないので、倒れている子どもがいたらなんとかしてくれるが、みんな自分の生活で手一杯で引き取る余裕もないので孤児院まで届ける対応。スラム街の隣なだけあって、そんなに高貴な街でもない。これは比較的優しい対応をされている)

しかし、孤児院でも暴れすぎて(基本問題児)(俺は俺がやりたいようにやる!がスタンス)14歳のときに追い出される。

その後、暴れ狂って道中色んな人に毒を与えながら、ラシフィール家を破壊→フィオナと出会う。

色々やらかしすぎて普通に指名手配中。

奴隷時代に主の屋敷の、子どもの部屋に侵入して本を読み漁っていたため、知恵・知識はそのときに身につけた。幼いながら、情報が大事である、情報が欲しい!というのを本能で悟っていた。

孤児院でも色々勉強はさせられていた。勉強は嫌いではなく、処世術になると確信していたので積極的にやっていた。普段は暴れ回っているのに勉強中はいやに静かで真面目なので、周り中のあらゆる人間から怖がられていた。


こんなに凶暴なヴァンがフィオナと一緒にいる理由→俺の力が効かない…!おもしれぇ…!!


ヴァンの毒は健康を一時的に奪うだけで、死には絶対に至らない。1日毒に苦しんだら、必ず自然に回復するもの。



フィオナ

身体の自由を奪い、操ることができる呪い子。一度に操れるのは1人まで。忌み子とされ、家の地下牢に長らく幽閉されてきた。

脳内に聞こえる「奪え!」の声に従い、呪いを使いすぎて気が狂った(自我を失った)ヴァンがラシフィールの家を大破壊したことにより、自由になる。ヴァンには感謝しているが、この時点ではそれ以上の感情はない。出来ればあんまり関わりたくないけど、放っておくとヤバそうだし、身寄りもないのでヴァンと行動している。ヴァンが暴れすぎないよう、無闇に呪いを使おうとしたら身体の自由を奪って抑制している。エドワルドと出会うまで、2人でひっそりと身を隠して暮らしていた。フィオナは教育を施してもらえなかったので、フィオナが街で本を買ってきて、ヴァンから色々学んでいる。(ヴァンは孤児院でもちゃんと勉強させられていた)



タルモ

13歳。3歳のときに国に見つかり、殺処分されそうになるが、ギリギリ生き延びる。その事実を知ったヘンリーにより、国の監視・保護下に置くとして家族と引き離される。この時点では何の呪いも発現していないため、両親は抵抗するが、それも虚しく連れ去られてしまう。

元々控えめな性格なのと、軟禁されていたのが相まってオドオドした性格。

呪いは一定の時間、五感を奪う。時間は奪う人数に比例するが、一度に1人だったら半日程度。

奪っている間はタルモ自身の感覚も鈍くなる。



エドワルド・サンダー

前王弟と王城のメイドとの間に生まれた不義の子。母親(シェリー・サンダー)は人目から隠れてエドワルドを生み、ボロボロの体で生家に帰るが、その無理が祟ってか、粘るもののエドワルドが5歳のときに亡くなってしまう。その後、エドワルドはシェリーの弟夫婦に邪魔にされて酷い扱いを受けていたが、本人の負けん気と7歳頃から発現し始めた呪いの力に気圧され、不気味がられて修道院の近くに捨てられる。

エドワルドの呪いは、「奪い、与える」呪い。生気、病気、痛み、などを奪うことが出来る。上記のものを与えることが出来る。自分の中にないものは与えられないため、自分が病気を患った→他人に与えるは可能。奪う→すぐ与えるは可能。蓄えることは出来ないので、奪う→時間経過→与えるは不可能。この力がもっと早くからあれば母さんを救えたのに。彼は感情の読めない瞳でそう言う。


その後、修道院で育った彼は、呪いのことを隠し続けてきたが、12歳のときに制御できなくなり、ついにバレる。しかし、その奪い、与える力が修道院内で神格化され、神の子として崇められる。呪いの力を使うことを強要される場面も多々あり、その過程で皮肉にも呪いのコントロールを覚える。それが後々どんどん広がり、「魔力を与えてくれるらしい」「生まれ持った魔力量で全てが決まるこの世界に革命が起きる」と、尾ひれがついて広がり、一つの宗教のように彼を崇拝する勢力が広がり始める。そんな環境下にはずっといられないし、嫌だと考えた彼は15歳のときに脱走を試みる。何人かの命を犠牲にしつつ、命からがら逃げ、たどり着いた先でヴァン、フィオナと出会う。

(シェリーも誰との子かは黙っていたため、両親、シェリーの弟夫婦も知らない)


シェリーのメイド仲間が王弟と密会しているのを知っており、身体的特徴(王弟と顔立ちがそっくり)から王族であるとの噂が急速に広まる。王族の血筋であることで、熱狂的な神格化が進む。

途中、エドワルドを取り戻したいエドワルド信仰派の人々に見つかりそうになり、逃げまどったりする。



呪いの強さ順

レミア≒エドワルド>タルモ>フィオナ>ヴァン

(じゃんけんみたいなもので、自分より強い呪いには逆らえない。つまり、フィオナに身体の自由を奪う呪いを使われたヴァンは、それを振り切って毒の呪いをフィオナにかける、などは出来ない。逆にフィオナはエドワルドに呪いをかけることができない。より強い呪いが弱い呪いを弾くから。呪いの相性が良ければ、呪い使用で負かすこともできる→ヴァンの毒をエドワルドが吸収で奪い対処など。エドワルドはフィオナの呪いなどは奪うことが出来ないので、呪いのデフォで呪い自身が勝手に弾いている)




呪い子サイド5人の旅の合間にオルロード(国王)とレオナード(文大臣)の過去編が入ります。


オルロード・ルンノベ

32歳。王のその本性は冷酷無慈悲。誰も彼も駒でしかなく、その中身は空虚。優しく穏やかに見えるその瞳の奥は常に冷え切っている。玉座に興味もなければ血筋に興味もない。ただ、自分の人生を好きなように生きたかったのに、王族故に叶わなかった。兄弟の中で魔力が一番強く、故に王の座を勝ち得たが、国王という役職ではその魔力を有意義に使うこともなく、なんて無意味なのだろうと感じている。実力主義社会であることを鼻で嘲笑うものの、城には優秀な者が集まるべきであることに特に疑問はないため、改革するつもりもない。彼は国で起こる全ての事象を、演劇を鑑賞するようにただ、傍観しているだけなのだ。あぁ、なんてつまらない人生。

レオナードは彼の幼馴染。レオナードの知識だけが、彼の瞳を輝かせる。あぁもっと君の話を聞かせてくれ。君だけが私を楽しませてくれるのに、あぁ、君は別の誰かの物になってしまうんだね。君だけは、私が手に入れたかったのに。(これはレオナードの結婚のことを指しており、国王、レオナードともに血筋の維持のために親が決めた婚約者と結婚する以外はできない運命であることを指している)(国王からレオナード、レオナードから国王に明確な恋愛感情はないが、お互いにお互いをものすごく大切な人であると認識している)


レオナード・グレゴー

32歳。現、文大臣兼王立図書館長。オルロードと同い年。オルロードの忠臣であり、オルロードとともにいられるのであれば、地獄の底でも付いていく。オルロードは王の才覚に恵まれすぎていることはわかっているが、王族であり、王になることが約束されているが故に感情を失っていってしまったのが何とも悲しかった。グレゴー家は知識に秀でた家系。レオナードもグレゴー家長男として、幼少期からとにかく勉強をたくさんさせられ、少しでも間違えれば鞭打ちの刑が待っていた。それゆえに、完璧でいられないことに恐怖を覚えるようになる。そんな彼の光として、心の支えとなっていたのがオルロードだった。オルロードは完璧じゃないレオナードを笑顔で受け入れてくれた。手を引いてくれた。信じられるのはオルロードだけだった。そんな彼を…そんな彼を変えてしまった。許せない。レオナードは、将来の文大臣として王の側仕えの予習でよくオルロードとも会っていた。彼らにとって、抑圧された日常の中でお互いだけが光だった。(オルロードは鞭で打たれるようなことはなかったが、出来が悪いことがあると飯抜き&部屋に軟禁などはよくあった)

呪い子の予言が出てからというもの、レオナードは図書館長の権限を最大限に利用し、実は一番先に真実に気付き、王に共有していた。


オルロード様は、呪い子の予言が出てからというもの、幾らか楽しそうである。鑑賞中の演劇が少しばかり楽しいものになったのだろう。喜ばしいことである。陛下は昔は好奇心旺盛な元気なお子であった。しかし、いつからだっただろうか。彼の瞳は虚ろに濁り、何の光も灯さなくなってしまった。なんて悲しいことだろう。俺がどうにか出来たら良かったのに。あなたは優秀だったから。

俺はあなたがどの道を選んでも最後までついていきます。悪に染まろうと、ともに堕ちてゆきます。



無事に石を5つ集めた5人。石を寄せると、徐々にくっついて1つの大きな石となった。

その瞬間、頭の中に「解放せよ!!」という声が響き渡り、皆理性を失う。無意識のうちに引っ張られるように歩き出した。

5人が引き寄せられるように向かった先には、集めた石をそのまま大きくしたような紫色の禍々しい石があった。すると、どこから出てきたのか、興奮した様子のザーガが出てきて、今までのオドオドとした様子が嘘かのように「これが封印の石!! 初代呪い子が封印されているというこの石が見たかったのだ!!」と言った。その大きな声に、皆ハッと理性を取り戻す。呪いから解放されるという話は?とフィオナが問うと、ザーガはそんなの嘘だと鼻で笑った。それを聞いたフィオナは絶望する。皆、ザーガに騙されたのだ。そのやり取りを見たヴァンが怒りに任せてザーガに向けて毒の呪いを放つと、その呪いはザーガを避け、その背後の大きな封印の石に吸い込まれてしまった。そして、ヒビが一本走ったかと思うと、また呪い子たち皆の頭の中に「奪え!」という声が響き渡り、理性を失って暴走状態に入ってしまう。


ここからは呪い子と魔法兵団の戦いに入ります。


呪い子たちは皆暴走状態で理性がなく、べらぼうに強いため、人数の差があれど戦いは力が拮抗していて長引く。

そんな中、レミアの頭にノアがアタックして、レミアの理性が戻ってくる。

ロベルトがずっと研究し、開発に勤しんでくれていた魔道具を持ってきてくれたようだった。ノアに続いてペパーと、息を切らした様子のロベルトが走って駆け寄ってきた。

レミアはロベルトやノア、ペパーに被害が及ばないよう、残り4人全員に軽い魔法攻撃で衝撃を与えて、目を覚まさせた。理性を取り戻し、攻撃を辞めた様子の呪い子たちに、魔法兵団も攻撃をやめた。そんな魔法兵団側の中には、複雑な表情をしたルクス・ウォーレーとクラリス・ホンジールがいた。

ロベルトが持ってきてくれたのは、呪い子を呪いの力から解放する魔道具だった。しかし、ロベルトによれば、何とか間に合ったが、完全な完成品ではないとのこと。呪いの力を消すと同時に、魔力も完全に消してしまうらしかった。

魔法至上主義のこの世界で、魔力なしとしてこれからを生きていく。

しかも、人々を傷つけた呪い子であるという罪を背負ったまま。

レミアはどうすればいいかわからなかった。

すると突然、ノアが認識阻害魔法を広範囲にかけた。そのままロベルトが呪い子たちを隠れられる場所まで引き連れていく。急に呪い子たちの姿が見えなくなった魔法兵団側は騒然とし出していた。認識阻害魔法など知っている人間が少ないからだ。

そして、ロベルトは何の前触れもなく、呪い子たち全員に向けて魔道具を発動した。そして口を開く。

「魔法と呪い、使ってみろ」

そう言われて皆が使用を試みたが、誰も何の力も使うことが出来なかった。

「選べ。この世界で生きるか、それから、表世界で生きるか」

ロベルトがゆっくりとそう言ったのを聞き、皆が息を呑む。表世界とは、たしか魔法が全く存在しない、こことは別の世界のことだ。ロベルトは、行き方を知っているのだろうか、レミアの頭にはそんな疑問が過る。

「あぁ、タルモって言ったっけか? お前は心配しなくていい」

ロベルトがそう言うと、ロベルトの後ろの影から若い男女が一人ずつ現れた。すると、タルモがわっと顔を歪めて泣き出す。

「お前はパパとママが表世界に一緒に行ってくれるって。2人の魔力ももう失くさせてもらった」

タルモが実の両親との再会を果たし、家族皆が抱き合って嬉しさで泣いていた。レミアは良かった、という気持ちと、少しの羨ましさで複雑な感情になる。

すると、「魔法使えねぇなんて生きてる意味ねぇわ。俺は死ぬ。表世界にも興味ねぇ」とヴァンが言った。それから、「……罪を重ねすぎた。生きてたってどうせ牢屋行きだ」と付け足す。彼は本気のようだった。そんなヴァンの様子を見て、フィオナが自分もヴァンについていくと言った。「そこまでして生きたいとも思わないし……。それに、地獄でヴァンを見張らないと」と、彼女はそう言った。

レミアはそんな2人の選択を聞いて酷く悲しくなる。でも、彼らは一番人を傷つけてしまったし、2人には2人それぞれの考えがあって、2人だけの関係性があることも理解していた。だから、彼らの選択を尊重し、受け入れるしかなかった。

「……わかった。お前らはどうする」

ロベルトはそう言ってエドワルドとレミアを見た。

「……表世界を選んだら、おじさんとはもう会えない……?」

「…………会えねぇな」

レミアの質問に、ロベルトがわざと感情を消したような声でそう答える。

「俺のことは気にすんな。俺は俺で元気にやるし、この世界で生きるのは、これからのお前には厳しすぎる。……表で生きたいんだろ?」

そんなロベルトの言葉に、レミアは瞳に涙をいっぱい溜めて、暫く悩んでから、こくんと頷いた。

そうしてレミアは表世界で生きることを決めた。そしてエドワルドもレミアについて表世界に行くことを決める。

ロベルトはレミア、エドワルド、タルモ家族を表世界へと繋がるゲートの前へと連れていく。このゲートもギリギリで見つけたので間に合って良かったと彼は言った。

そして、レミアはヴァンとフィオナにさよならを告げた後、ロベルト、ノア、ペパーと最後の別れを告げた。

大丈夫、離れていても、みんなのことは忘れない。

離れていても、みんながくれた温かさはたしかに私の中に残っている。

大丈夫。私たちはずっと、お互いの心の中にいるから。

だから大丈夫、私はこれから幸せになるためにこの選択をしたんだ。

だから、笑って。だから笑顔でお別れしよう。

私を思い出すときは、この笑顔を思い出して。

そうして言葉を交わしたが、どうしても涙が零れてしまった。

そして最後の抱擁を終えると、レミアはゲートをくぐった。もう二度と戻ってくることのできない一方通行のゲートを。

最後に大きく手を振り合った。お互いの姿が見えなくなるまで。


そして彼らはそれぞれの結末を迎える。

それぞれのトゥルーエンドへと進んで行く。

ありがとう。みんな、ありがとう。


それから多くの月日が経った。

レミアは確かめるように呟く。

ありがとう。私は今、幸せだよ。


≪完≫




補足

レミアはエドワルドと結婚し、穏やかな家庭を築き、末永く幸せに暮らした。(2人の具体的な心理描写もないまま結婚させていてすみません。間に描写を重ね、なんとかここまで持ってくるつもりでした。)


ルクスはレミアや呪い子たちの最期を聞き、彼らが消えた後からなんとなく亡霊のように生きている。

願いは叶ったはずなのに。呪い子は殲滅されたはずなのに、この気持ちは何だろう。胸に、ぽっかりと穴が空いたようで、全然満たされない。願いは……叶ったはずなのに。

学園卒業後、彼は当初の希望通り魔法兵団に所属して、何かを忘れるように日々剣を振るっているという。


クラリスはルクス卒業後も当然最後まで生徒会にいて、次の学年で生徒会長を引き継いだ。

卒業後はきっとルクスを追いかける目的は二の次になり、何か別の自分の人生の目標を見つけて、きっと魔法兵団に入るのだろう。そこで、亡霊のようになってしまったルクスの手を取り、きっとその心を支えるのだろう。彼らはそうして、きっとまた、新たな関係性を築いていく。それに、ルクスも幼少期に出会ったクラリスのことをちゃんと覚えていたようだった。周りはウォーレー家のルクス、という風にしか自分を見て来なかったが、彼女だけは、まっすぐと自分を見ていたから。

だから、そんな彼らにも、きっと新しい風が吹く。


ここまで読んでいただきまして、本当に本当にありがとうございました。

辻褄が合わないところや、疑問が残る箇所もあるかもしれません。そこは、本当にごめんなさい。

彼らの物語はこんな形で幕を閉じてしまいましたが、読むために時間を使ってくれた分の何かがあなたの心に残せていたら幸いだなと思います。

本当にありがとうございました。

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