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終焉の呪い子たち(さいごののろいごたち)  作者: 藤宮空音
第4章 夏休み開始編

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【第68話】逃走④

浮遊ジャンピング走りに慣れてくると、ヴァンがレミアに向けて、身体強化魔法を施した。


「えっ! 今何したんですか!?」

「身体強化かけた。もっとスピード出せるようになったはずだから飛ばせ!」

「えぇ!? あなたがスリルを感じたいだけですよね!? これ以上スピード出すの、危険じゃないですか!?」

「知らねぇ! 走れ!」

「めちゃくちゃだぁ〜〜!!」


2人はやや言い合いしながらも、順調に進んでいく。

渋るような返答をしたレミアだが、実はもっとスピードを出してみたい気もしていたので、障害物の少ない野道を言われた通り、少し急いでみた。


風が頬を切り、ビュオォと風切り声が聞こえる。


「あははっ!」

「怖っ!」


楽しすぎて思わず笑い出すレミアに、ヴァンがすかさずツッコミを入れる。


そんなこんなで、2人はあっという間に王都に着いた。

外れの街と比べて、こんな時間なのに王都はまだ少し賑わいがある。笑い声の漏れる飲み屋、目が痛くなるような光を放つ、煌びやかな店。


「学校はどこにあんの?」

「あそこです」


ヴァンの質問に、レミアは斜め上を指差して答えた。

学園は、王都内では田舎の山の方にあるのだ。


「……まだあんのか」

「そうですね……。もう少し歩かないといけないです。けど、もうこの辺で大丈夫です! この度は本当に」

「いや、もう少し送る」


道中を共にし、道案内を任されてくれたヴァンに対しレミアがお礼を言おうとすると、彼はそれを制止する。


「え……? いや、申し訳ないので……。ここまででも大変助かりましたし……」


(それに、楽しかったしね……)


まだ遠慮の姿勢を見せていると、「行くぞ」とレミアの腕をとってヴァンは歩き出した。


「ぁえ、ありがとうございます……」


2人は暫く無言で歩いていたが、ふとヴァンが口を開く。


「エドとはどういう関係」

「エドですか? ん〜……」


レミアはそう聞かれて、答えに困ってしまった。

エドは別に友達、……ではないが、知り合いよりは交流がある感じがする。


「助けてくれた……と、いいますか、パンを買ってくれたのが出会い……、ですかね……。関係性は、よくわからないです」


レミアは、当時のことを思い返しながら、少しずつそう答える。


「あ! そういえば、その出会いから毎週会っていた期間があるんですが、急にエドが来なくなって……。それについて何か知っていたりしませんか?」

「ん? あぁ……、そうだな。ザーガのおっさんの特訓が始まったんじゃね? 働いてたレストランも辞めさせられてたしな」

「えっ……? 辞めさせられた……?」


レミアが思わず、足を止めて聞き返す。


「そ。ザーガのおっさん、勝手なとこあっからな〜。急に勝手な特訓始めた理由も俺らは知らねぇし。エドはさすがに知ってんのかもしれねぇけど」


ヴァンは、足を止めたレミアを気にすることなく、歩き続けながらそう答えた。


(……色々気になるけど、エドが自分の意思で来なくなったわけじゃないのかも……?)


レミアはそう考えると、少し、ほっとした。

自分のことが、嫌になったのではないかと、少しだけ不安に思っていたからだ。

尤も、エドワルドに再会したときは、状況が状況だけにそんな不安も忘れていたのだが……。


「まーエドは困ってる奴を放っておけない性分(しょうぶん)みたいだからな。俺には理解出来ねぇけど、あいつにはあいつなりの経験と考え方があるんだろうよ」

「……そうなんですね」


意外にも、エドワルドを理解している様子のヴァンに、少し驚いた。


そうこうしている内に、学校の建物の、尖った先っぽが木々の間から見え隠れするようになってきた。かなり近くまで歩いてきたらしい。


「あれ?」

「どした?」


レミアが遠くの方を目を凝らして見てみると、小さい蒼い小鳥と、男性らしき人影が見えた。


「ペパー……!?」

「お、知り合いか?」

「た、たぶん……!」


レミアはもう一度目を凝らして1羽と1人を観察してみる。

小鳥の方は、ほぼペパーで間違いなさそうだった。男性の方は暗くてよく見えないが、こんな日にあんなところにいるとしたら、ロベルトだろうか?と、レミアは考えつく。


「んじゃ、俺はこの辺で」

「あの! 今日は本当にありがとうございました……!」


レミアがバッと勢いよく直角にお辞儀をしながらお礼を言うと、ヴァンは何でもないと言う風に答えた。


「はっ。気にすんな。俺も貴重な体験をさせてもらったからな」


そう言って、くるりと(きびす)を返すと、こちらを振り返ることもなく、手をヒラヒラとさせて夜の闇の中に消えていってしまった。


(自由な人だったけど、頼りがいがあったなぁ……)


レミアはその後ろ姿を見ながら、しみじみとそう思った。

そして、自分を待つもののところへと、急いで駆けていったのだった。

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