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終焉の呪い子たち(さいごののろいごたち)  作者: 藤宮空音
第4章 夏休み開始編

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【第62話】再会④

炎が燃える音がする。

視界は紫色に染まっている。


あぁ、またこの夢だ──。


両隣には2人ずつ、誰かがいる。相変わらず真っ黒な影のようだった。

しかし、左隣の背の高い影が、煙のように揺らめいて、段々とその姿を現し出した。紫を奥に秘めた薄いグレーの瞳、それから、後ろで一つに結ばれている白橡(しろつるばみ)色の髪の毛。その姿は、エドワルドそっくりだった。


「エド……?」


レミアは(おそ)(おそ)る手を伸ばす。すると、目の前のエドワルドがパッと消え、代わりに、こちらを覗き込んでいる様子のエドワルドと目が合った。

レミアはそのまま首を左右に動かして、周りの様子を(うかが)う。数冊の本だけが端に置かれているシンプルな木の机。シンプルな木の椅子、中の見えない棚、クローゼット、オレンジ色のランプ魔道具、それから、自分が寝ているらしいのは、この部屋唯一のベッドだ。

状況から察するに、どうやら目が覚めたようだった。


「レミア? 大丈夫……?」

「……エド……だよね?」


(……エドだったよね……?)


今まで何度も見ていた夢。初めて影のベールがめくれた時だった。だけど、あの不穏な夢にエドワルドが関わっていることが、なんだか不安だった。


レミアは先ほどの夢を思い出しながら、目の前のエドワルドをぼんやりと見つめる。いまだぼーっとしている様子のレミアを見て不安になったのか、エドワルドは再び同じ言葉を投げかけた。


「だ、大丈夫……?」

「あっ、うん、ごめん。大丈夫……」


レミアはそう答えて上体を起こす。実際、体調は全く問題がなく、普段通りに思えた。どちらかと言えば、どことない不安に(さいな)まれている精神状態の方が、いつもより良くないとも言えそうだった。


「あれ? そういえば私、どうしてここに……?」


そう言いながら、レミアはこれまでの経緯を思い出してみたが、熱に浮かされていた間の記憶が、少し曖昧だ。学校に忘れ物を取りに行って、それから……、異空間に取り込まれてしまって、そこからさらに絵の中?に取り込まれてしまって、それで…………、気付いたらここに……?

やはり重要なところが抜けている気がする、そう思っていたら、ふと手の中で何かを握りしめていることに気付いた。


そうだ、母の形見のヘアピンだ。


「そっか、レミアもわからないんだ……。申し訳ないけど、俺もわかんなくて……。俺はフィオナに呼ばれてリビングに行ったらレミアがいたから……」


(そういえば、エドはそんな感じで連れて来られてたかも……。あのふわふわした女の子が「フィオナ」ちゃんかな)


レミアはもう一度、手元のヘアピンに目線を戻す。もしかしたら、これのおかげでここに来たのかもしれない。

そうだ。思い返してみれば、ヘアピンが光り出してここに来たのだ。


「待って、私わかったかも。これがきっと助けてくれたんだ……! ここに連れてきてくれたんだ!!」


レミアはそう言って、ヘアピンをエドワルドに向けて掲げる。エドワルドはそれを数秒ほど見つめると、「あぁ! あれ!?」と言って立ち上がり、机の引き出しからほぼ同じものに見える、銀のヘアピンを取り出してきた。かつて、レミアが屋台で買って、エドワルドに預けたものだ。


「言われてみれば、何か引き出しの方が光ってる夢を見た気がするんだけど、夢じゃなかったってことか……。これって、本当に対になる魔道具だったってこと……?」

「たっ、たぶんそうだったんだと思う……」


2人は、頭を突き合わせて2つのヘアピンを確認する。だが、特に変わったところはなく、長方形で平べったい、普通のシンプルな銀のヘアピンだった。


「これが魔道具かどうかって、どうやって調べるのかな……?」

「うーん……、ごめん。魔道具はあんまり詳しくなくて……。俺にもよくわかんないな……」


ヘアピンをくるくると回して、360度から確認したが、魔法陣のようなものは見当たらない。


「1回しか使えない、とか、魔法陣がすり減ったり欠けちゃったりとかってあるのかな……」

「……どうなんだろう。ごめん、何もわからなくて……」


レミアの疑問に答えられず、エドワルドは落ち込んでいるようだった。ただ、必要以上に落ち込んでいるようにも見える。


(な、何かあったのかな……。気のせいならいいんだけど……)


「ぜ、全然大丈夫! 私もわかんないもん! ただ、このヘアピンが私をここに連れてきてくれたのは確かだと思うんだ……」


レミアはエドワルドを励ますようににっこりと笑ってそう言う。魔道具の詳細はよくわからないが、よく考えてみれば、かなり奇跡に近いことが起こっていた。もしこれがなかったら、あの場から一生出られなかったのではないだろうか……。そんな嫌な想像が頭を過って、ゾッとする。


「本当にこれがあって良かった……。私、このヘアピンに向かって助けてってお願いしたの。そしたらヘアピンが光り出して、気付いたらここにいたんだ」

「”助けて”? 何かまずい状況だったの?」


レミアの説明に、エドが眉根を寄せて心配そうな様子でそう言った。


「あぁ……えっと、不思議な空間?に取り込まれちゃって、出られなくなってたの」


そこまで言って、レミアはハッと気付く。


「ペパー!! 大変!! それに、ノア! おじさん!! みんな心配させちゃってるかも……!? ど、どうしよう……。え! 今って何時!?」

「今は夜の8時なんだけど……」


焦った様子のレミアを見て、エドワルドが心配そうに答える。どうやら、レミアの真後ろに時計が設置されているようで、エドワルドの視線を追うように振り向けば、たしかに時計は20時を少しすぎた時間を指し示していた。


「な、……え? とっ、時計壊れてたりしない……?? ご、午前中だったはずなんだけど……」

「いや……、時計は合ってるはず。俺の感覚的にも夜の8時かな。外で夕日を見た記憶があるよ」


レミアが動揺しながらそう言うと、エドワルドは自分の記憶をひとつひとつ確かめるように、ゆっくりと言った。


「そんな……。もしかして、異空間の中は時間の流れが違ったのかな……」

「残念だけど、そうかもしれない……。俺もレミアがここにあまり長居するのはよくない気がするから、帰ろう。俺が送るよ」


エドワルドがそう言ったちょうどそのとき、やや遠くの方でギィィ、ガコッと、何か重そうな扉が開くような音がした。


(何の音だろう?)


レミアはやや警戒しながらそう考える。いくらエドワルドという知り合いがいたからといって、ここは安全な場所ではないかもしれない。それに、エドワルドが「俺もレミアがここにあまり長居するのはよくない気がする」と言ったのも引っかかる。


「ッやばい!!」


そんなレミアの一方で、物音を聞くなり、エドワルドが顔を青くして音も立てずにサッと立ち上がった。


「ごめん、ちょっとしばらく隠れてて欲しい!」


今度は、エドワルドが先ほどのレミアくらい焦った様子でレミアの背中を押すと、クローゼットの扉を開いた。


「ごめん。本当に申し訳ないんだけど、ここで息をひそめてて欲しくて。狭いし暗いし本当ごめん」


エドワルドは早口でそう言うと、反応も確認せずに、急ぎながらも優しくレミアをクローゼットに押し込めると、パタリと扉を閉めた。


(え、ちょっと、何──!?!?)


閲覧ありがとうございます!

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