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終焉の呪い子たち(さいごののろいごたち)  作者: 藤宮空音
第3章 生徒会編

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【第52話】異質

更新が大変遅くなりまして、すみません。

今回少し長めです。

そんな彼らが、お互いの年齢を確認して吃驚(びっくり)したのは、それよりも後のことだったそうだ。


ロイリーは、アンバーが「かっこいい」と言ってくれた自分になりたくて。アンバーは、何も出来なかった自分を変えたくて。


2人は変わる。


そうして、彼らはユーヴェリアへと進学し、学年の差がありながらも、再会したのだった。



――――――――――



「まぁ、こんな感じかな」


アンバーは、話し終えると涼しい顔でそう言った。ロイリーと自分の関係を主張する方が大事なのか、はたまた、もう振り切れたのか。

ロイリーに頭を撫でられているのを目撃された時の赤面はもう、面影(おもかげ)もない。


(お……、思ってたよりもめちゃくちゃ重い…………)


レミアは正直言って反応に困った。

アンバーの顔を見て黙り込んでしまっていると、ロイリーが助け舟を出すようにカットインしてくる。


「こ、こんな話されても困るッスよね……! マジ申し訳ないッス!」


恥ずかしさの残る様子のロイリーは、早く話を切り上げたがっているようにも見えた。


(……ん?)


それを聞いたレミアの脳内には、ある疑問が(よぎ)る。


「あれ? ロイリー先輩のその喋り方って、アンバーくんと出会ったときに辞めたんじゃないんですか?」


レミアがそう聞くと、ロイリーは「あ〜……」と気まずそうに首の後ろを()いた。


「なんていうか……癖、みたいな……? アンバー以外の前だとなんか思ったより抜けなくて……。でも、これは、……俺のお守りみたいなもんなんス」


ロイリーはそこで切ると、少し間を置いて続けた。


「また、ひとりぼっちになるかもしれない、ってそんな思いを、打ち消してくれるんスよ」

「えっ、俺は!?」


ロイリーの言葉を聞いて驚いたアンバーが、脊髄(せきずい)反射のような速度でそう言った。「俺がいるじゃん」的なことを言いたかったのだろう。


「あ……、いや、わかってるッスけど……」


それを聞いたロイリーは、少し焦る。そして、少し(うつむ)くと、ぽつり、ぽつりと喋り出した。


「もちろん、アンバーのことを友達だと思ってないわけじゃなくて。……俺の都合で他人を縛りたくない、っていうか……、いや、そもそも縛れないというか……。やっぱり俺らって他人じゃないスか。人間、ずっと一緒、なんてものは(はな)から無理で、だから、なんていうか……、これは俺が、俺を肯定してあげるための、もので。俺が人間関係の成功を、自分の手で掴み取った(あかし)……、みたいな……。全然まとまらなくてごめんッス」


アンバーは、そのロイリーの言葉を聞いて絶句していた。レミアはその顔を見て、無理もないか……、と同情する。


(これを聞いた感じだと、アンバーくんの存在、ロイリー先輩にとって全然支えになってないよね……?)


一方で、レミアは違和感を覚える。


(っていうか、アンバーくんの言動も行動もあんなにわかりやすいのに、なんで伝わってないんだろう……)


さっき聞いた2人の過去の話と比べて、今のお互いに対する気持ちの重さ、のようなものが異様にアンバランスなのだ。どう考えても、お互いがお互いを救い合っている、唯一無二の存在のように見えたのに、ロイリーは、自分がアンバーに好かれている理由を、自身で掴み取ったものだと思っていないように感じられた。


(まるで、アンバーくんが同情とか、優しさで自分と一緒にいてくれると思ってるみたいな感じ……。また失いたくないから、信じきれないのかな……)


「あ、えっと……」


誰からも何も反応がないので、ロイリーは不安に思ったようだ。困ったように呟くと、不安そうにレミアとアンバーの顔を交互に見始めた。


「あ! 話してくれてありがとうございます! そうなんですね! えっと……」


レミアは、なんとか相槌(あいづち)を打ってそう言いかけたまま、次の言葉が思いつかずに黙ってしまった。そして、チラリと目だけでアンバーの方を確認する。

アンバーは、放心状態のままだった。


(……ダメそうだな)


「えーっと……、ちょっとアンバーくんを借りてもいいですか?」

「えっ? いいッスけど」

「ありがとうございます!」


レミアはお礼を言うと、アンバーの手をガシッと掴んで、ロイリーに声が届かないように数十歩ほど離れた廊下の端、曲がり角付近に早足で連れて行く。ロイリーはぽつりとその場に残されたまま、不思議そうにこちらを見つめていた。


そして、そんなロイリーをよそに、レミアは小声でアンバーに詰め寄る。


「ねぇ! アンバーくんってロイリー先輩と付き合ってるのかと思ってたんだけど!」

「はァ!?」


予想だにしない言葉を聞いて、アンバーは一気に目が()めたようだった。


「ちょ、声でかいって!」

「え? もっかい言ってくれる?」

「声がでかい!」

「違う! それじゃない! もう1個前だよ! バカなの!?」


レミアが言われた通り先ほどの言葉を繰り返すと、アンバーの不満そうな声が飛んできた。今までの数々の言動、行動と相まって、レミアは思わずカチンと来る。


「はぁ!? アンバーくんってほんと言葉もう少し気をつけた方がよくない!? そんなんだからロイリー先輩に(なん)っにも伝わってないんじゃん!!」

「ハァ!? 今それ関係ないだろ! てか何!? さっき付き合ってるとか言わなかった?」

「違うの?」


勢い任せに口喧嘩していた2人だが、レミアはそれを聞いて、きょとん、とする。


「ちっげーよ! なんでそうなるわけ!?」

「ロイリー先輩のこと好きなんじゃないの?」


(だって完全に超めんどくさい彼女みたいな感じだったもんね!)


レミアは謎の自信を持ちながら、そう思う。


「いや、()……、いやいやいや、好き=(イコール)付き合ってるとか思考(あさ)! 恋愛脳すぎんだろ」

「え……? なんか急に私の悪口言ってる?」

「わかんないの? やっぱバカじゃん」

「違うって! 恋愛のことよく知らないだけだし!」

「恋愛初心者の癖に俺に講釈(こうしゃく)垂れようってワケ?」

「いやいやいや! 恋愛どうこうじゃなくて、私が指摘したのは、アンバーの人間性ね??? ほんと言葉強くて良くないよ???」

「アンタに色々言われる筋合いないね。てか何? 話、それだけ? 俺こんなことでロイリー先輩との時間奪われてるわけ?」


言い合いは、お互いに気に障ることを言いながらヒートアップしていく。レミアは気付けばいつの間にか、アンバー"くん"ではなく、アンバーと呼んでいた。別にもういい。敬称なんて付けてやるもんか!と思っていた。


「違うよ! ちゃんと気持ちが伝わるように、もっと頑張ればいいのに〜って思っただけだし」

「……余計なお世話。気持ち伝わってどうすんの? ロイリー先輩が困るだけでしょ」


少し勢いの落ちたアンバーが、寂しさの滲んだ顔でそう言うので、レミアは少し驚く。


「え? 喜ぶんじゃないの? だってロイリー先輩、アンバーに大事にされてるの全然わかってないじゃん」

「………………は? そっち……?」

「え、そっちって何……?」

「………………何でもない」


アンバーは俯いてそう言うと、しばし黙ってしまった。レミアは何もわからず、それっぽいことを必死に探すが、残念ながら何も思い当たらない。すると、ふとアンバーが呟いた。


「……いや、無理だな」

「何が?」


そう聞き返すと、アンバーが目を見開いて、レミアの顔を見つめた。


「……俺声に出してた?」

「うん」


アンバーは大きくて長いため息を吐くと、開いている窓枠に両腕をかけ、外を見つめた。レミアもなんとなく、同じように景色を眺めるようにして隣に立つ。


「…………もうアンタにはバレてるから言うけどさぁ。俺がロイリー先輩を大切に思ってることは、キモくない風には伝えられないから……。今だって本当は、色々やっちゃう自分も、色々言っちゃう自分も辞めたいと思ってるのに、……直んないしさ。でも、俺のこの気持ちは、あの人に正面からぶつけたくないんだよね」 

「…………ふーん、そうなんだ」


自分にはわからない、きっと大変な思いがあるのだろう。だから、どんなにムカついても、この言葉は否定しちゃいけない、レミアはそう思った。

恋をしたことも、同性に好意を寄せたこともなかったから、彼の気持ちはわからない。……、わからなくていいのだ。

ちっぽけな想像など、到底及ばないのだから。


そして、アンバーは重々しそうに口を開く。


「……俺って変だから」

「別に? そんなことなくない?」


対するレミアは、軽い調子でそう言った。


「同情とかいらないから」

「違うし。共感だよ」

「は?」


外を眺めていたアンバーが、思わずレミアの方を見る。レミアは外に視線を向けたままだった。


「他人と違うことが変だって言うなら、私も(おんな)じだもん」

「……。ごめん」

「いーよ、別に」


魔力絶対主義の世界で、ずっと魔力がなかったレミアの境遇を思い出したアンバーが謝る。


「ただ、ロイリー先輩が大好きなだけでしょ」

「…………」


アンバーから何の反応もなく、無視かい、と思いながら隣を見ると、正面をじっと見つめたまま、彼は少し、泣いていた。


なんだか見てはいけないような気がして、レミアは慌てて目を逸らす。

控えめに鼻をすする音が時々聞こえて、それから、躊躇(ためら)いの滲む小さな声が聞こえた。


「……………………ありがとう」

「……いーえ」


2人は並んで外を眺める。夏の、少し暑い風が2人の髪を(さら)ってゆく。どこか、オレンジのような、爽やかな香りが鼻をくすぐったような気がした。




「アンバー・タッガオ! レミア・ミュー! 探しましたよ! 何をしてるんですか!?」

「へ?」


突然、担任の声が、静まり返った廊下にこだました。


「今は授業中ですよ!?」


そう言われ、近くに時計を探して確認すると、確かに6限目の授業開始時刻から、すでに30分が経過していた。


「ご、ごめんなさい!!」


2人は急いで教室に向かう。

ロイリーは、いつの間にか消えていた。話し込んでいる2人を見て、気を()かせて帰ったのかもしれなかった。


「完全にアンタのせいで怒られたんだけど」

「はぁ!? そもそも、勝手に私を追いかけてきたのはそっちだよね???」

「いや? 俺が追いかけたのはロイリー先輩だけなんだけど」

「〜〜〜〜〜ッ!!!!!」


(コイツ〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!)


「アンバーってさぁ! ほんと性格悪いよね!!?」

「ハ!? そういうアンタ、……いや。コホン。何? 急に。負け惜しみ? そういうのマジダサいわ」

「いやいやいや、今のアンバーの方がダサいから!!」


教室まで小走りになりながら、2人は小競(こぜ)()いを続ける。その様子を、遠くから、担任が呆れたように眺めていた。

ロイリー&アンバー編これにて一旦終わりです!

見守っていただいてありがとうございました!

彼らの関係も、どこかで進展していたらいいですね。


閲覧ありがとうございます!

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