【第43話】クラリス・ホンジール①
すみません、本日少し短めです。
話の流れ的にここで区切りたかったので、こうなりました。
ティーパーティーがお開きになり、レミアは同じ寮生であるクラリスと、帰路につく。
「期末試験、よく頑張ったわね」
「あ、ありがとうございます……! でも、せっかく大事なノートをもらったのに、水の魔法以外は成功出来ませんでした……」
クラリスにそう声をかけられ、レミアはしょんぼりとしながらそう答えた。
「……」
そんなレミアを見て、クラリスはどう声をかけようか迷っているようだった。口を少し開いては閉じ、視線を細かく動かしたりしていたが、やがて、口を開いて話し出す。
「……上手く出来なくて落ち込む気持ちはよくわかるわ。だけど、私たちは人間だから、全てを完璧にこなすことは出来ない……。全力を尽くしたのなら今は、出来たことを誇るのが自分のためにも大切よ。それから、ある程度省みたら、失敗を思い出すのはもうやめて、次の成功のことを考えた方がいいわ。……そうね、えぇと、つまり……、自分をもう少し褒めてあげてもいいんじゃないかしら」
レミアはぽかんとしながらクラリスを見つめる。
いつもは完璧な彼女が、焦ったように一息で喋り、更に言葉に詰まっているのが新鮮でびっくりしたからだ。
同時に、それが嬉しくもあった。そんなクラリスも、なんだか人間味があって親近感が湧いたから。それに、厳しいクラリスが、自分を褒めてもいいと、よく出来ていたと、そう言ってくれたのだ。
「そっ、そうですよね! ありがとうございます!」
レミアは、にっこりと笑って元気良くそう言う。
すると、クラリスは一瞬だけにこりとしたが、数秒後には、予想に反して悲しげな顔をした。また、何かまずいことでもしてしまったのだろうか。
「でも、そうね……。あなたを追い込ませてしまったのは私だわ。あの時はごめんなさい、冷たくしてしまって」
クラリスはふいに立ち止まると、レミアの瞳をまっすぐと見ながらそう言った。
レミアは、そんなクラリスの瞳を見つめ返す。そして、"あの時"言われた言葉を思い出していた。
――――――――――
「……そういうのは、まずは自分で努力してみてから言ってくれる?」
「あなたが今言っていたのは努力ではないわ。言われたことを自分の中で噛み砕き、落とし込んで頑張ったのは評価するけれども、結局は他人から言われたことをやっただけ。それに、あなたに協力するメリットが私にはないわ」
――――――――――
きっと、"あの時"というのは、実技の特訓をお願いしたときのことを言っているのだろう、レミアはそう考えた。
「い、いや! 謝らないでください!! あの言葉のおかげで、私、頑張れたんです。強くなれたんです」
本心だった。
決して、無理に励まそうとしていたわけではなく、正しいことを気付かせてくれたクラリスに感謝していた。
レミアのその言葉を聞くと、クラリスは緊張を緩めたように、ふっ、と笑った。
「私もまだまだね。……ごめんなさい。ありがとう」
クラリスは今、何を考えているのだろう。
彼女の心の内がわからなかった。「大丈夫だよ」と伝えたつもりなのに、それを受け取った上で、どこか線を引かれている感じがした。
その強さの裏に、何を隠しているのだろう。
クラリスは、どんな人なのだろう。
知りたくなった。
彼女の源を。
彼女の、原点を。
「……クラリス先輩は、すごいです。限りなく完璧に近くて、自分にも、他人にも等しく客観的な姿勢でいられる。……だから強い」
「……急にどうしたの?」
「どうして、そんなに頑張れるんですか? どうしたらそんなに、強くなれるんですか……?」
レミアは、クラリスの瞳を真っ直ぐに見つめてそう聞く。
クラリスはじっとこちらを見つめると、次の瞬間には目を伏せて、
「……私は、強くなんてないわ」
と、寂しげに、そう答えた。
「欲や感情に負けて、自分を律することも出来ない。……不出来な人間だわ」
「人間は完璧じゃない」
レミアはすかさずそう言った。クラリスは驚いたようにこちらを見つめる。
「さっき、クラリス先輩が言ったんですよ……?」
「……そうね」
クラリスは少し、遠くを見つめる。
風で髪が靡いて、その横顔をそっと隠した。
夏の夕方の風は、少し生温い。日の入りが近づいた空は、太陽の反対側に夜の群青が滲み始める。
「今の私があるのは、……己の弱さを知ったこと、追い続けたい背中があること。……きっとその2つだわ」
クラリスはこちらに向き直り、なんだか情けなくも見えるような、初めて見る表情で笑った。それが、少し、逆光で隠される。
「……昔話をしましょうか」
クラリスは、静かにそう言った。
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