【第41話】アフタースクール・ティーパーティー②
皆がスイーツをお皿に取り分け終わると、やっと味わえる時間がやってきた。
レミアはアンバー側を見ずに、少しだけ体をクラリス側に傾けながら、スイーツを頬張る。
今食べたのは、ブルーベリーやラズベリー、ストロベリーなど、たくさんのベリーが乗ったベリータルトだ。
一切れ口に入れれば、優しいカスタードの味わいと、絶妙なベリーの酸味が口いっぱいに広がった。しっとりとしたタルト生地がほろりと口の中で崩れると、内側に隠されていた甘いベリーソースが現れ、さらに舌を楽しませる。本当に美味しくて上品なベリータルトだ。
「美味しい……!」
(本当に! 美味しい……!!)
レミアは感動した。寮の食堂で出てくる食事もとても美味しいのだが、そのさらに上を行く美味しさだった。
「美味しいわね」
ふと、クラリスがレミアにぎこちなく話しかけた。レミアは嬉しくなって、はしゃぎ気味で答える。
「はい! このベリータルト! すごく美味しいのでおすすめです! クラリス先輩も食べてください!」
「……ふふ、そうなの? じゃあ、この後いただこうかしら。こっちのチョコレートケーキもとても美味しくておすすめよ」
レミアがクラリスに興奮した様子でおすすめすると、それを見たクラリスが一瞬驚いた後、穏やかに笑っておすすめを返してくれた。
「……そうなんですか! ありがとうございます!」
クラリスのそんな顔を見るのは初めてで、なんだか胸がじんわりと温まる。
(本当に心を許してくれたんだな……)
そんな年下女子2人の様子を、3年男子2人がにこやかに見守る。
「微笑ましいッスねぇ〜」
「僕らもあんな感じでやってみる?」
「えっ?」
ルクスの突然の提案に、ロイリーはぽかんとする。そんなのお構いなしに、ルクスはウキウキと女子たちの真似をし始めた。
「ロイリー、このサンドウィッチ、美味しいよ。ほら、お食べ。フフ、ウフフ」
「えっ、あっ、えっ? わぁ……! ありがとッス……! ホントに美味しそ〜! じ、自分で食べるッス! フフ! ウフフ!!」
ルクスの会話に乗るしか選択肢がないロイリーは、無理やり合わせて会話する。なんだかおかしな感じだ。
「……何をやっているのかしら」
そんな2人を見たクラリスが、怪訝そうな顔で、ぽつりとそう呟く。
呆れている、というよりも、本当に不可解に思っているのが口から出てしまった、みたいな感じで少しおもしろい。
そして驚いたことに、左側から「……フッ」と、堪えきれずに漏れ出たような笑い声が聞こえてきた。
(ま、まさかアンバーが笑って……!?)
レミアがそろ〜……っとアンバーの方に目をやると、すでに真顔に戻っているアンバーとバチリと目が合った。何かいちゃもんを付けられる前に、レミアは爆速で視線を逸らす。
「…………」
「…………」
「…………」
ふいに会話が途切れて、皆黙りこくってしまう。楽しいティーパーティーのはずだったが、なんだか気まずい空気が流れた。
「みっ、みんなは休みの日とか何してるッスか? しゅ、趣味とか知りたいな〜なんて……」
ハハ……、と気まずそうに笑いながら、ロイリーが話題を提供してくれた。すると、それをクラリスが繋ぐ。
「私は、料理とかスケッチとか、あとは読書とかかしら」
料理やスケッチは、自分では全然やらない類のものだったので、そういう趣味もあるのか、とレミアは感心する。それに、なんともクラリスらしい上品な趣味だなと感じた。
「へー! 料理とスケッチ!? いいッスね! 俺なんか授業でしかやったことないッス!」
「料理は化学みたいで楽しいんです。時々寮のキッチンを借りたりして楽しんでいます。スケッチは、天気の良い日に湖のそばのベンチに行ったりしてやると、無心になれるし気持ちいいので、よくやっていますよ」
「へーっ! めちゃくちゃ優雅でゆったりした感じの素敵な休日ッスね!」
「ふふ、ありがとうございます。ロイリー先輩は?」
クラリスは嬉しそうにお礼を言うと、ロイリーに質問を返した。
「あ、俺ッスか? 俺は、ん〜……、音楽聴いたりとか、演奏したりとか、あとはコンサートとか演劇見に行ったりとかも好きッスよ!」
ロイリーの意外な趣味に、レミアは「え」と驚きの声が出かけた口を慌てて閉じる。
(普段軽そうな感じだから、なんていうか、重厚そう……?な趣味なの意外すぎる……)
「演奏というのは?」
「あ、ピアノっス! 小さい頃からやってて」
「そうなんですね、素敵」
「……へへ、ありがとうッス!」
少し照れながらそう言ったロイリーは、照れを隠すかのようにルクスの方に話を振る。
「か、会長はどうッスか? 趣味とか……」
「僕はあまり趣味とかはないんだけど、強いて言えば鍛錬かな」
「た、たんれん……」
少し考え込みながらそう言うルクスに、ロイリーが言葉を失う。
「着実に強くなっていってる感じが楽しくて」
「た、たのしい……」
(こ、この人やっぱり戦闘狂なんじゃ……)
レミアは前にアモが言っていた言葉を思い出して、そう考える。ロイリーは、もう同じ言葉を繰り返すしかなくなっていた。
「まぁ、僕の話は置いておいて。レミアは? 休日は何をして過ごす?」
「へっ? 私ですか!? えっと、私は……」
急に話が回ってきて驚いたレミアは、頭をフル回転させて、返答を探した。
アモ=演習場αの管理を任されていた研究者の女性。第31話(助けて!ルクス先輩②)にて、「もう! 君は見かけによらず、戦闘狂なんだかから!」と言っている。
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