【第31話】助けて!ルクス先輩②
大変お待たせいたしました!
「でわでわ! 皆様、演習場αにようこそ! ここからは、私が説明させてもらうよ〜〜!!」
ボブヘアーにメガネをかけた白衣の女性がそう言い、続けて質問を投げかける。
「みんなこの演習場αは使ったことがあるかな?」
レミアは初めて訪れたので、首を横に振る。ルクスとロイリーは、こくりと首を縦に動かしたので、使ったことがあるのだろう。
「うんうん、おけおけ! そういえば2人は知ってたわ! んじゃそこの女の子中心にお話するね! 魔法ドッヂとかもやったことない感じかな?」
「中等科のやつを見学したことがあります!」
上の方にある、窓を隔てた部屋に声が聞こえるのか不安だったため、レミアはとりあえず声を張り上げる。
「ありがとう〜! なら話は早い! あ、あと今は特殊なマイクを使ってるから会場内の声はバッチリ聞こえるからね! 普通に喋ってだいじょぶ!!」
「……あ、すみません……」
善意で言ってくれたのはわかっていたが、そう言われて、レミアは少し恥ずかしくなる。
「ううん! いいのよいいのよ! で、演習場αの説明だけど、中等科とほとんど造りは変わらない! 強度に違いがあるくらい!」
そして、女性は得意げに説明を続ける。
「一言で言えば、ここはどんな攻撃を受けても、ダメージが無効化される空間です! つまり! ここではどんなに大きな魔法でも、ノーコントロールでも相手を傷付けることがない!」
(なるほど……)
説明を聞いて、レミアは自分にピッタリな場所だと思った。
「どんな仕組みかと言うと! まず、私が毎日結界の調整をしていて──」
「あ、アモさん。時間がないので説明はその辺で。さっそく始めてもいいですか?」
ルクスは、彼女の話を遮るように、スッと片手を上げてそう言う。
「もう! 君は見かけによらず、戦闘狂なんだから!」
アモと呼ばれたその女性は、「最後まで聞いてよ〜!」と駄々をこねた。
「やだなぁ、人聞きの悪い。今日は戦いに来たんじゃないですよ」
そう言って、ルクスはレミアを見やる。
(戦闘狂を否定しなかったな……)
一方、レミアはそんなルクスを見てひっそりと慄いていた。
ルクスは紹介するかのように、レミアの方に向けて両手をヒラヒラとさせると、こう続ける。
「彼女の魔法の特訓に来たんです」
「ふんふん! なるほどね! 彼女は実践魔法が苦手なのかな? どんな魔法の特訓をするかと、何ピンズか教えて! 最適な結界を構築し直してあげよう!」
「そうですね、とりあえず基礎から対人までの全般……と、彼女は紫ピンズですね」
「ふんふん、なるほどね……むらさ、紫ィ!?!?」
アモは、素っ頓狂な声をあげる。
「えっ! もしかして君ってレミア・ミュー……!? あの、0から魔力が発現してしかも紫っていう話題のあの!?」
「大変だ。付き纏われるよ」
興奮した様子で、早口で捲し立てるアモを見ながら、ルクスが呆れた様子でレミアに声をかけた。
「実在したんだ!!!」
「……ん?」
「はい……?」
「なんて……?」
アモのその言葉に、ルクス、レミア、ロイリーはそれぞれ同時に聞き返す。
「いや、私はね、あれはフェイクニュースなんだと思ってたからさ! 本当だったんだ! レミア・ミューは実在した!」
そう言って、アモは両手を組んで、空に祈るようなポーズをしながら目をキラキラとさせた。
「……なんか、すごいッスね……。同じ学園にいて気付かないとかあるんスね」
「彼女は研究オタクだから、自分の仕事以外はほとんど眼中にないんだろうね」
ロイリーとルクスがコソコソと話していると、興奮冷めやらぬ様子で、アモは続けて質問をしてくる。
「そうだ! 検査とかはした!? まだなら私がやりたいなぁ!」
「あ、えと……、王立病院と、王立研究所でやってもらいました」
レミアはその勢いに少し後退りしながら答える。
「王立研究所! そうか! そうだよね……! いいところで大々的に検査してるに決まってるか……! ニュースにもなったんだもん……。そうだ! 病院は……、カトレア様だとして、誰が担当の研究員だった?」
アモはぶつぶつと呟いた後、また質問を投げかける。
「おじ……、じゃなくて、ロベルトさんです」
「ロベルトぉ!? まさか、ロベルト・アーレンウッド!?!?」
目を見開いて叫ぶアモに少し気圧されながら、レミアは頷く。
(おじさんが王立研究所に協力するのってやっぱり相当珍しいのかな……)
「なんだ……あの男の研究対象になっちゃってんのか……じゃあダメだな……。あーあ。つまんないぃ〜……」
さぞかしガッカリした様子で、アモは天を仰ぎ見た。
「……? どうしてですか?」
おじさんの研究対象になってると、何かマズいのかと思い、レミアは不思議そうに聞く。そもそも研究対象になったつもりはあまりないのだが……。
「私、ああいう天才嫌いなの! 口は悪いし自己中心的だし、私が何年もかけたことを数日でやってのけるし! ムカつくことをたくさん言ってくるの!」
「へぇ……あまり性格の良くない人なんですね」
「いやっ……、その、超悪いヤツってわけじゃなくて……なんか、人のこと良く見てるし? 優しいときもある……カモ? なんて、いや、違う違う違う!! とにかくムカつくヤツなの!! 弄びやがって!! もう! いつか絶対にあの男を追い越して凄腕の研究員になるんだから……!」
ルクスが相槌を打つと、アモは焦った様子で訂正をし出したが、結局ぷんすことしながら、ペラペラとそう語った。
「……ロベルトさん(?)が好きなのかな?」
「……さァ……そうなんスか? わかんないス……」
それを見たルクスとロイリーがコソコソと言葉を交わす。
「そこ! 聞こえてるからね!!」
アモが特殊マイクの性能を存分に活かし、2人の内緒話を聞きつけて、そう叫んだ。
あんなのが好きとかほんと……、ありえないんだから……、などとぶつぶつ呟いていたが、アモは急に切り替えて話し出す。
「とにかく! 時間ないんだよね!? 特訓始めるよ!!」
「……アモさんが時間を奪ったんですよ」
ビシッと指差すアモに、ルクスがニコリとしながらそう返した。アモは特にそれには言及せず、華麗にスルーする。そしてパパッと魔術式を詠唱すると、結界を作り替えたようだった。
「ハイ! じゃあルクスくん! レミアちゃんに光を灯す魔法のお手本を見せて、教えて!」
「? いいですけど。アモさんが先導するんですか?」
「えぇい! いいから早くやりなさい!」
ルクスはそれを聞いて、ふぅん……、と言った様子でレミアの方に向き直る。
「じゃあよく見ててね」
そう言って、ルクスは光を灯す呪文を口にする。すると、人差し指の先に、白い光が灯った。
「じゃあやってみて」
「は、はい」
ルクスに促され、レミアも呪文を口にする。実技の授業では暴発してしまったので、なんとなく体が強張ってしまった。
──結果は不発。
「……うん、体が固いかも? あとは、なんだろう。とりあえず力を集めて光れ〜! みたいな? 何回かやってみて、これだ、って思う魔力の集中のさせ方を掴む感じかな?」
「……?……??」
言っていることを全く体現出来そうな感じがせず、レミアが困惑していると、ルクスはロイリーに向かって同意を求めた。
「ねぇ、ロイリー? そうだよね」
「……んー、そうッスね……。俺も感覚派なんで、俺的にもそうなんスけど……」
そう言って、ロイリーはチラリとレミアの方を見る。
なるほど、わかったぞ。
レミアは理解した。
(ルクス先輩もロイリー先輩も感覚で出来ちゃう天才型……!)
そして、レミアはアモの方を見上げた。
「そう! 君たちは人に教えることに不適!! 私の嫌いな天才どもめ!!!」
アモは私怨まみれの恨みを言うと、こう続けた。
「クラリスちゃんを呼んで来なさい!!!!!」
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