【第30話】助けて!ルクス先輩①
「会長ぉぉお!!!」
ロイリーはそう叫びながら、生徒会室の扉をバン!と開ける。
ロイリーから遅れて、レミアも生徒会室の前に到着する。ロイリーの背中越しに、ルクスが奥の方にある執務机に座って、大量の書類の束に囲まれながらこちらを眺めているのが見えた。
「おや……? どうしたのかな」
ルクスがそう訊ねると、ロイリーは生徒会室の中に入り、喋りながらズンズンと執務机の方に向かう。
「会長! 助けて欲しいんス!」
「なんだろう」
「レミアが除名危機なんスよ!」
「……ほう?」
「10位以内に入れるように、実技の特訓! お願い出来ないスか……!?」
ロイリーがお願い!のポーズをしながら、ルクスにそう訴えると、ルクスはふむ……、といった様子で考え込む。そして、暫く沈黙した後、口を開く。
「ロイリーじゃダメだったのかな?」
「え?」
ルクスがそう言うと、ロイリーは驚いて固まる。
(そ、そういえば……! たしかにロイリー先輩でも良かったのでは……!?)
レミアは、ロイリーの高度な魔法を思い出しながらそう思った。
「い、いや……俺はそんな、他人に教えられるほどじゃ……」
首と両手をブンブンと横に振りながら拒否するロイリーに、ルクスは「はぁ……」とため息を吐く。
「よく言うよ。レミア、よく聞いて。彼はね、3年生で学年2位の成績をとってる優秀な生徒だよ」
「……えっ!? 2位!?」
ロイリーは全くそんな素振りは見せなかったし、本人は軽めの口調だから、そんなに優秀だったのか、とレミアは驚いた。
(国内最高峰のユーヴェリア学園の3年生で1、2位ってなったら、この人たち……、本当にすごすぎる人なんじゃ……?)
そう思うと、目の前の2人と同じ空間にいるのがなんだか恐れ多くなってくる。
「それにね、聞いてよレミア。生徒会内で唯一同じ学年なのに、いつまで経っても敬語を外してくれないんだ」
ルクスは、そう言ってシクシクと泣く仕草をする。
それを見たロイリーは、オロオロ──しているわけではなく、「んはは〜……」と困り笑いをしながら頬をポリ……とかいていた。
どうやらこういう絡みをされるのは初めてではないらしい。
(……なんていうか、この人、扱いにくい人だ……!)
クールで落ち着いてそう、という想像をひょいと超えてくるルクスに、レミアは毎度衝撃を受ける。
自分があの絡み方をされたらかなり面倒だなと思った。
「……あれ? でも、そういえばロイリー先輩ってみんなに敬語(?)ですよね……?」
「〜ッスよ!」という喋り方を敬語に含めて良いのなら……と思いながら、レミアはそう言う。
「私なんか年下なんですから、全然もっとフランクにしていただいていいのに……」
「……ん〜〜、あはは……」
レミアも敬語を外して良いと暗に伝えると、ロイリーは曖昧な反応を見せる。
不思議に思ってルクスの方を見れば、ルクスは両手の平を軽く持ち上げ、肩を竦めてお手上げのポーズをとってみせると、
「あまりロイリーについて勝手に語ると、アンバーに怒られ兼ねないからね」
と、涼しい顔で言った。
(え……!? あなたが振った話題では……!?)
「……えっ!? どこまで知って……!?」
レミアが驚き混じりに困惑していると、ロイリーの方からは焦りの声が聞こえる。焦りのあまり、執務机に手をついて、対面に座っているルクスに顔を寄せていた。
(ん? っていうかアンバー? 何? なんで?)
レミアは1人、会話に置いていかれる。
「さぁね」
ルクスはフッ、と目を細めながらそう答えると、スッと立ち上がって執務机を回り込み、ロイリーの側までやってきた。
次は何をするつもりなんだろう、とハラハラと見守っていると、ルクスは自分より少しだけ背の高いロイリーの肩を掴んで、くるりと出入り口の扉の方を向かせる。
「さぁさ、魔法の実技訓練に向かおう」
「え!?」
あまりの静かなる急展開にロイリーは困惑する。
「演習場αの予約は空いてたみたいだし、さっき使用申請書を書いておいたよ」
そう言ってルクスは、抜け漏れなく完成した申請書を見せる。
「いつの間に……」
レミアがそう零すと、ルクスはこちらを向いて、フフ……と笑った。
(なんて人だ……)
「なんて人だ……」
レミアとロイリーは思わず同じ反応をしてしまう。
「じゃあ僕は、とりあえずこの申請書にはんこをもらってくるから、君たちは先に行っておいてくれるかな?」
「りょ、了解ッス……」
そうしてレミアたちは生徒会室を出ると、右と左に分かれて進んだ。
「……会長ってなんか……なんていうか……怖いッスよね」
「……そうですね……。人間性が読めないっていうか……なんていうか……」
2人は、何とも言えない複雑な気持ちを共有しながら、演習場αへと向かって行った。
***
「さっきの演習場とは違うんですね」
レミアは到着した演習場αの全体を見回しながらそう聞く。さっきの場所は屋根もなく、スタジアムのような感じだったが、こちらの演習場は完全室内で、なんとなく装飾も少なく、王立研究所のような最新の設備感があった。
「そうッスね! こっちは」
「お待たせ」
ロイリーが説明を始めようとすると、ちょうどルクスが到着する。すると、スピーカーから、マイクを通した女の人の声が聞こえた。
「みんな揃ったかな?」
どこから喋っているのだろう、と周りを見回すと、放送室のような、上の方にある部屋の窓から、ボブヘアーにメガネをかけた、白衣の女性がこちらに手を振っているのが確認出来た。
「でわでわ! 皆様、演習場αにようこそ! ここからは、私が説明させてもらうよ〜〜!!」
マイクもスピーカーも魔道具です。
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