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終焉の呪い子たち(さいごののろいごたち)  作者: 藤宮空音
第3章 生徒会編

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【第29話】実技授業の思い出

「僕のね、名前ね、わかる?」


先生はそう言いながら、人差し指で自分の顔を示して、こてりと首を傾げる。


「す、すみません……」


レミアは、あまり人に興味を持たないタイプだったため、どんな先生が在籍しているかも知らず、当然、目の前にいる初老の先生の名前もわからなかった。謝りながら、首を横に振る。


「いいよいいよ、初めて会話するからね。僕はね、フートン。みんなからはフートン教授とかフートン先生って呼ばれてるよ。よろしくね」

「よろしくお願いします、フートン先生! レミア・ミューです」


さっきは名前がわからなくて失礼をはたらいたから、今度は印象を良くして巻き返さなきゃ!とレミアは気合いを入れて挨拶をする。


「うんうん、よろしくね。じゃあね、さっそくね、呪文が一言で終わる簡単な魔法からいってみようか。そうだね、じゃあ、光を灯す魔法にしようね。僕の後に続いて──ハイ、clgop(灯れ)


先生がそう唱えると、人差し指の先に光が灯る。

その様子をしっかりと目に焼き付けて、レミアは先生と同じように呪文を唱える。もちろん、自分の真ん中から指先へと魔力を流すイメージも忘れない。


clgop(灯れ)


途端、目の前に巨大な閃光が現れ、目を焼き尽くす。


そのせいで、目がものすごくチカチカして、しばらく経つまで、まぶたを開けても閉じても、目の前が真っ白でよく見えなかった。


やがて、目が慣れてくると、目の前のフートンが顔のパーツを中心にギュッ!と寄せて顔を(しか)めているのが見えた。


「す、すみません……」

「ううん……、ありがとうね。……一応確認だけど、kltyiiv(光れ)じゃなかったよね?」

「……はい」


レミアも自信がなくなってきたが、clgop(灯れ)と言った気がするので、控えめに頷く。


「……そうだよね。う〜〜んと、じゃあ次は草を伸ばしてみようか」


そう言われて、フートンが見せた見本の通りに呪文を唱えてみるが、今度は全く草が育つ気配がない。


hwiabmn(育て)! hwiabmn(育て)!」


何度も試すが、そのどれもが不発に終わる。


では、次は、以前イレーナを浮かせた浮遊魔法を……ということでチャレンジするも、浮かせた木の枝は、彼方(かなた)遠くの方へ飛んで行ってしまった。


イレーナに使ったときは、まぐれで上手くいったと思って良さそうな感じだった。


他にも、風を起こす魔法、水を扱う魔法、笑わせる魔法、物を移動させる魔法……などなど、様々な魔法を試したが、そのどれもが、暴発か不発に終わった。


レミアは膝に手をついて、ぜぇはぁ、と肩で息をする。


(私ってこんなに魔法できないんだ……)


レミアは自分の魔法に期待していただけに、かなりのショックを受けた。


「ん〜〜……。まぁ、今日はこれくらいにしようね」


そう言われて、レミアは絶望感に満ちた顔で先生を見つめる。

すると、フートンは優しく笑ってこう言った。


「大〜丈夫! 君はね、よく出来てるよ。みんなに比べたらね、10年以上も魔法の扱いに差があるんだよ? それなのにね、頑張り次第で追いつけるところまで来てるからね」


フートンは、ぽん、と優しくレミアの背を叩く。


そして、「座学の勉強頑張ったんだね、偉いねぇ」と付け足した。その意外な優しさに、レミアは少し泣きそうになってしまう。


ここ最近色々あったが、頑張りが認められたのは、これが初めてだった気がした。


「君はね、魔力が大きいからね、みんなより扱いも難しいの。今日はよく頑張ったね。また次も頑張ろう。そうしていったら、もっと上手くなるからね」


「……ばい゙……。ありがとうございます……」


レミアは耐えきれなくなって、涙を流しながらそう返事をする。フートンは、そんなレミアの様子を優しく見守っていた。




***


そんなこんなで実技の初回授業は終わったのだが、結局得意な魔法は見つからず仕舞いだったのだ。


レミアはロイリーの方に向き直る。


「えっと……、得意な魔法っていうのは、まだなくて……」

「そうなんスね! オールラウンダーな感じスか?」


レミアが歯切れ悪くそう答えると、ロイリーは無邪気にそう聞いてくる。


「いや、……苦手な魔法しかないというか……どれも出来ないというか……」

「……えっと……、そうなんスね……」


(おっと…………!?)


まずいのだろうか。

何を言っても肯定してくれそうなロイリーが言葉を濁しているのを見て、レミアはものすごく不安になった。


(フォローも出来ないレベル……!?)


「ん〜……と、いや、う〜〜ん……。遠回しに言ってもしょうがないスよね……。他に言いようもないしなぁ……」

「……えと……」


ぶつぶつと不穏なひとりごとを呟くロイリーを見て、どんな宣告が下されるのだろうか、とドキドキしながらレミアは言葉を探す。


「生徒会って、毎回の試験で学年10位以内にいないといけないんスよ」

「……へ?」

「総合が10位ならOKってわけじゃなくて、筆記、実技それぞれで10位以内にいないといけないんス」

「……えと」


そう説明を続けるロイリーに、レミアは段々と嫌な予感が加速する。


「んで、10位に入れないと、除名になっちゃうんスけど……、レミアの場合は除名されるわけにはいかないんで……」

「いかないので……?」

「10位以内、必須ッスよ」

「む、むりです……」


今の状態から10位以内なんて入れるわけがない、と、レミアは青ざめながら首を振る。


「でも現実は残酷なんスよ」

「まだ何かあるんですか……!?」

「期末試験まであと2週間くらいしかないんスよ」

「……!!」


レミアは顔を引き攣らせる。

絶っっっ対に間に合わない。


「あの……、ちなみになんですけど……、もし11位以下だったらどうなるんでしょうか……?」


レミアがおずおずと片手を胸の前に上げながらそう聞くと、ロイリーは「ん〜〜」と考え込む。


「……ごめんッス。ちょっと俺にはわかんないス……」

「い、いや! そうですよね! こっちこそごめんなさい!」


ロイリーが申し訳なさそうに言うので、レミアは慌てて謝る。


「とにかく! ランクインのことだけ考えるッスよ!」

「は、ハイ!」


でも具体的にどうすれば……?と疑問に思っていると、その心の声を読んだかのように、ロイリーは答える。


「こういうときの、生徒会長ッス!」

「生徒会長?」

「会長は3年生の中でもぶっちぎりのトップなんス! 中間テスト、実技1位! 筆記1位! スよ! 頼もしくないスか!?」

「す、すごい……! 頼もしすぎる!!」


そうして、2人は「会長に助けてもらうぞ! オー!」と他力本願の掛け声をかけ、ルクスの元に急いで向かった。

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