【第28話】初仕事(見学)②
「クソ……ッ、こうなったら……!」
「必殺技……!」
そう言って2人が新たな呪文を唱え始め──る前に、ロイリーが即座に魔法を発動する。
さすが、生徒会メンバー。高度な技術を必要とする無詠唱で魔法を発動している。そのせいか、魔法の発動がめちゃくちゃ早い。
ものすごい速さで、2人の間に木や、植物の蔦で出来た壁が編み上がった。
「ふーー、間に合った〜〜! もう! ダメッスよ! 無許可の魔法戦は! お2人さん!!」
ロイリーは、先ほどまでものすごく真剣な顔をしていたから、突然その口調で喋られると、なんだか拍子抜けする。
当の2人はというと、大きな魔法にびっくりして腰を抜かしたようだった。
「何年の何クラスの何さんッスか!!」
ロイリーが2人の元に進みながら、そう問いかける。
たどり着く間に、大きな植物の壁はメキメキと音を出して編み目を解きながら地の底に潜り、元通りの真っ平なグラウンドが現れた。
「すごい……勝手に戻るんだ」
「あ、それ、30秒で元に戻る指示を追加で組み込んだんスよ〜!」
レミアが思わず感嘆の声を漏らしていると、ロイリーが振り返ってにこにことしながらそう言う。
「……え!?」
(あの一瞬で……!?)
さすが生徒会メンバー、恐るべし。
ロイリーに対する好感度が、グングンと上がっていく。尤も、ロイリーへの好感度は最初から高い位置にあるが。
ロイリーが彼らの名前を聞いて、少しお小言を言い、彼らを帰す。すると、問題児2人は逃げるように演習場を出て行った。
「も〜〜〜、ホント困るッスね。仕事増やさないで欲しいッス〜〜!」
ロイリーは眉を下げ、口角を落としながら、普段より少し大きな声でそう叫ぶ。
「ロイリー先輩、さすがです……! あんな高度な魔法を一瞬で!」
「いや〜、そんなことないッスよ! 植物系の魔法が1番得意なだけッス! 無詠唱も頭の中に呪文をイメージして、それを素早くなぞるだけッスから!」
(それが難しいのに……!)
レミアが素直に褒めると、ロイリーはたはは〜と笑って卑下してしまう。その姿に、レミアは少し悲しくなった。
(本当にすごいのに、伝わらない……)
ロイリーは、そんなレミアの様子を見て、慌てて付け足す。
「でもありがとうッス! 褒めてもらえると、やっぱ嬉しいッス!」
「……!! はい! ロイリー先輩はすごいです!!」
なんだかんだ言葉を受け取ってくれたロイリーに、レミアは嬉しくなる。伝わって良かった、と思った。
「そういえば、レミアちゃんは──」
「あの!」
「……?」
レミアは少し引っかかっていることがあって、話し始めたロイリーを制止する。
「あの……、その"レミアちゃん"っていうの、ちょっと慣れなくて……。すみません、最初に言っておくべきだったんですけど……」
言うタイミングがなくて……、と、レミアはごにょごにょと付け足す。
「あ!!! 配慮出来てなくてごめんッス! 馴れ馴れしすぎたッスよね……」
犬が、耳としっぽを垂らしてしょげてしまうように、ロイリーは何とも悲しげにしょんぼりとしてしまった。
それを見ていると、なんだか可哀想になってくるほどだ。
「あっ、いえ……! 馴れ馴れしいだなんてそんな! 仲良くしていただいて嬉しいです! えっと、ほら、あの……、"ちゃん"に慣れないな〜と思っただけなので……! 逆に"レミア"とかどうですか!?」
レミアは思い付く限りを尽くしてロイリーを励ます。
「レミアで……? ……え、!? レミアでいいんスか!?」
「むしろ、レミアの方が呼ばれ慣れてるのでしっくり来ます!」
レミアが拳をグッと握り込んでガッツポーズのような仕草を見せると、ロイリーは嬉しそうに顔を輝かせた。
「じゃ、じゃあ! 改めてよろしくッス! レミア!!」
犬の耳としっぽが喜びでピン!と立っているのが見えそうなくらいだ。ロイリー先輩は、ワンちゃんだ。レミアはそう思った。
「──で、さっきの続きなんスけど、レミアは何の魔法が得意ッスか?」
「え゛っ……」
そう聞かれてレミアは固まる。
得意な魔法など、いまだ見つかっていない。
レミアはAクラスに入って、初めて受けた実技の授業を思い出していた──。
***
初めての実技の授業。
今まで、ずっと1人、見学だった惨めな授業。
レミアは少しワクワクしていた。
(これで私も実践魔法の練習が出来る……!)
クラスの皆は、少し遠巻きにレミアを注目している。
やはり、紫ピンズの実力は皆の気になるところらしい。
「はい、じゃあね、みんなね、今日はね、特別な授業になりますよ〜」
担当の先生が独特のリズムでゆったりとそう言うと、皆の注目がそちらに動く。
すると、別の方向から元気な女性の声がした。
「ウッス! オッス! チョリーッス! Bクラスでっす!」
「じゃあね、今日はABクラス合同でね、魔法ドッヂをやってもらうからね」
声のした方を見れば、クセの強そうなギャルっぽい先生がおでこの近くで、いえーい、とピースをしていた。
魔法ドッヂ、と聞いて、そこかしこから、うぉぉお!とか、やったー!などの喜びの声が聞こえる。
(魔法ドッヂ……! 楽しそう!!)
魔法ドッヂ
──それは、特殊な結果が張られた演習場でのみ、やることが出来る、魔法使用可のドッヂボールのことだ。
レミアも中等科のとき、一度だけやっているところを見学したことがある。
そのルールの性質上、相手を攻撃可能なため、倫理観的な観点からか、比較的低学年にはあまり推奨されていないらしい。そのため、体験出来る機会はそう多くなかったのだ。
「んじゃ、みんな、あーしに付いてきてね〜ん」
ギャル先生がそう言い、皆を引率する。レミアもウキウキしながら、ぞろぞろと流れに乗って付いていこうとすると、後ろから、優しく肩を掴まれる。
「君はね、こっちね」
振り返れば、Aクラス担当の先生が側に立っていた。
「僕とね、マンツーマン」
「……えっ」
レミアの口からは思わず悲しみの声が漏れる。
後から聞いたところによれば、レミアはものすごく悲壮感のある顔をしていたらしい。
先生は、思わず「魔法ドッヂ行っていいよ」と言いそうになったという。
思ったよりも文字数が伸びたため、また変なところで切ってます。すみません……。
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