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終焉の呪い子たち(さいごののろいごたち)  作者: 藤宮空音
第2章 魔力発現編

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【第15話】負け犬に追い討ち

「レミア・ミュー!」


ゲーム・オーバーだ。


イレーナに名指されたレミアは諦めて歩みを止める。


「あなたのせいで私は大怪我を負ったわ! どうしてくれるつもり!?」

「……ご、ごめんなさい」


包帯を巻いた腕を指差しながら言うイレーナに、この件に関しては自分が悪いか、と思い、レミアは渋々謝る。


(あれ……? でも、そもそもそっちが理不尽に私を攻撃したのが悪いよね……?)


「ごめんなさいだけでは済ませないわ! お詫びに私の言うことを何でも聞きなさい! この先、一生よ!」


イレーナはカッカと顔に血を昇らせて(わめ)き散らしているが、お願いだからあまり大きな声で叫ばないで欲しい。


ものすごく、目立つ。


それに、言っている内容がめちゃくちゃだ。


「自分勝手だなぁ……」


(あ、まずい。声に出ちゃった…。聞こえたかな?)


レミアはそっとイレーナの様子を確認する。


「なんですって!? そもそもあなた、魔法を使えるのを隠してたのか何か知らないけれども! 私と同じ高位魔法を撃ってくるなんて! バカにしているの!?」


運悪く、イレーナの耳に入ったらしい。先ほどよりも憤慨(ふんがい)した様子で畳みかけてきた。


「……いや、私はずっと魔力なしだったよ」


あんなに(しいた)げられてきて、魔法を使えるのを隠していたわけがあるか、とレミアは心の中で反撃した。


(……あれ? イレーナは私が魔法を跳ね返したんじゃなくて、同じ魔法を撃ったと思ってる……?)


「嘘よ! 急に魔力を得てあの魔法が使えるわけないわ! お黙りなさい!!」


そう言ってイレーナは(てのひら)をこちらに向け、何やら魔法を撃とうとした。


(まずい……!!)


せっかく魔力を得たのだから、やられっぱなしというわけにはいかない。


(ええい! どうとでもなれ!!)


レミアはまだ自分にも使ったことがなければ、そもそも実践すらしたことのない魔法を発動することにした。


(傷つけないやつといったらあれだ! 教科書の通りに……!)


意識を腕から指の先に流れるように集中させる。


(詠唱は口に出さなくてもOKだけど、出した方が成功率が上がるから……!)


flvfae(浮け)!」


レミアがイレーナめがけて浮遊魔法を発動すると、何かしらの魔法を詠唱中のイレーナがグワンと持ち上がった。


「やった! 成功した!!」


喜んだのも(つか)の間、斜めに持ち上がったイレーナはどんどんと高度を上げて浮いていってしまう。


「やばい! どうしよう!!」


焦ったレミアは集中力を欠き、その拍子にイレーナが急下降を始める。さらに焦ったレミアが再び浮遊魔法で調整しようとすると、上手くいかずに今度はイレーナをぐるぐると回転させてしまった。


「いやああぁぁぁぁぁ! 助けてぇぇぇぇぇぇぇ」


イレーナの断末魔が響き渡る。また聴衆がわらわらと集まり始めていた。


「ど、どうしよう! 助けて!」


グチャグチャに飛び回るイレーナから目を離さず、何とかしようと試行錯誤しながら、レミアも助けを求めて叫ぶ。


すると、突然左からスッと手が伸びてきて、腕を掴まれた。

その人物はそのままレミアの腕をグイと降ろすと、浮遊魔法を解除させ、代わりに風の魔法でイレーナを包んでゆっくりと降ろす。

イレーナは醜い顔を晒し、自慢の髪の毛を乱して気を失っていた。


「あ、ありがとうございます……!」


お礼を言いながら左を向くと、そこにいたのは、なんとまぁ美しい顔!


──ルクスだった。


ルクスはこくりと頷くと、


「君の魔法は強いみたいだから気を付けて」


それだけ言って、去って行ってしまった。


「何事ですか!?」


返事をするタイミングを失い、その背中を見送っていると、誰かが呼んだのだろう、騒ぎを聞きつけた先生がやってきてしまった。


「彼女が空高く浮いているのが見えました。レミア・ミュー、あなたの仕業(しわざ)ですか?」


先生はイレーナを一瞥(いちべつ)し、今にも怒り出しそうな顔で言った。


「はい……。すみません」


「仕業」というのは人聞きの悪い……などと思いながら、一応犯人なので素直に返事をする。


「素晴らしい! ……コホン、いえ、素晴らしいことではありません。人を危険に晒した件については反省するように。また、使ったことのない魔法を他人に向けて撃つのもいけません」

「……すみません」


レミアは予想外の言葉にたじろぎながら謝る。


(今、「素晴らしい」って言った……?)


「ただ! 浮遊魔法は本来、人をあんなに高く浮かせることができる魔法ではありません。それを成し遂げたあなたは素晴らしい! ぜひAクラスに──」

「ちょぉっと待った! それを言うならウチのBクラスに! 何せミューはまだ実践は中等科レベルかもしれないでしょう! いきなりAクラスっていうのはハードルが高いんじゃないでしょうかね!?」

「お二方だけで話を進められては困りますなぁ。実践をやったことがない……となれば初等科レベル。Cクラスから始めても良いのでは?」


どうやら聞き間違いではなかったらしい。

急に褒めたと思えば、教師陣が集まり、本人を置き去りにして、やんややんやと騒ぎ出した。


もしかすると、教師の間にもランクなり、何なりで待遇が違ったりと、何かがあるのかもしれない。

全員、優秀な生徒を抱えようと必死な感じが見てとれる。


話がまとまる様子がないので、仕方なくその場に留まることにしたレミアは、イレーナがそこで伸びていることを思い出した。


(なんかすごいかわいそうなことしちゃったけど、今までの仕返しだと思えば安いもんか)


レミアはイレーナに向かって心の中であっかんべーをした。なんだかんだ、イレーナに関しては、色々とスッキリしたかもしれない。


(誰も保健室に運んであげたりしないけど、いいのかな)


まぁ普段から人に恨みを買いすぎてる罰か~などと呑気に考えていると、やがて、話がまとまったのか、Aクラスの担任がレミアに声をかけた。


「ミュー。あなたの扱いについて、この場で結論を下すのは不可能だったため、校長に判断を(あお)ぎます。良いですね?」

「……わかりました」


良いも何も……、と思いながらレミアは答える。今日はとりあえずEクラスに出席すればいいらしい。


そうして野次馬にジロジロと見られながら、レミアはその場を離れる。目の端で、イレーナが先生たちによって運ばれてゆくのを確認した。


(そうだ、私って紫ピンズになったんだ……)


レミアは今更になって、事の重大さを身を持って実感した。

今までは、わかっていたのに、理解出来ていなかった。


特別強い魔力を得たのだ。


良い意味でも、悪い意味でも。


(普通、が欲しかったんだけどな)


あれほど望んだ魔力。それを得られたことは、この上ない喜びだったが、逆の意味で普通ではなくなってしまった。


隔離されたEクラスに向かうまでの道すがら、たくさんの人にジロジロ、チラチラ見られたり、ヒソヒソと囁かれたりした。


今日は朝から目立ちすぎた。


あぁ、長い一日になりそうだ。


呪文は適当にそれっぽくしました!


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