【第9話】本当の始まり
「第2章 学園生活編」開始です!
元々これを第1話にしようと思っていた話でした。
でもようやくここまで来れて嬉しいです!
楽しんでください〜!
エドワルドと会えなくなってから4日目。
今日は水曜日。週のど真ん中だ。
何が起きたって地球は回るし、日はまた昇る。
だから、今日も学校に行かなくちゃいけない。
レミアは重い体を起こしてベッドから這い出る。
なんだか、本当に体が怠くて重くて体調が悪い気がする。
「……いや、気のせいか」
ここ最近ずっと気分が落ち込んでいて、それ故にぼんやりと体調が優れない日が続いていた。
今日もきっと同じような感じだろうと結論付け、制服に腕を通す。
ふいに足に毛玉の温もりを感じ、下を確認すると、いつもはそっけないノアが珍しく足に絡みついて不安そうな声でにゃーにゃーと鳴いていた。「大丈夫か〜?」と言っているようにも聞こえる。
レミアはしゃがんで、
「大丈夫だよ〜」
と言いながら、頭を撫でてやると、撫でが物足りないのか、ノアは不満そうな顔をしていた。
そんなノアを置いて、レミアは自室を出る。
そろそろ行かなければ遅刻してしまうのだ。
朝ごはんのスープを手早く飲み込み、1階のロビーまで降りると、ネネと目が合った。
「おはようございます」
いつも通り挨拶をして通り過ぎようとすると、声をかけられる。
「それ、拾ってもらえる?」
ネネはレミアの足元を指さしていた。
下を見ると、ネネのルービックキューブが転がっている。
(えぇ!? 急いでるんだけど……!)
そう思いつつも、すぐ済むことなのでレミアはそれを拾って渡す。
「どうぞ」
「お礼に占ってあげよう」
「え」
ネネは急いでいるレミアをよそに、勝手に占いを始めてしまう。
彼女が人差し指をクイと動かすと、ルービックキューブがふわりと浮き上がり、カチャカチャとひとりでに動き始めた。
やがて、その動きが止まると、ネネは告げた。
「本番はここから」
「へ?」
──また変なことを言われた。
「あの……、もう少し詳しく……」
控えめにそう要望すると、意外にも、ほんのちょっとだけ詳しく教えてくれた。
「あなたの人生は、ここから始まる」
「……? ありがとうございます」
少し詳しく教えてくれたものの、どういうことなのかサッパリわからない。とりあえずこの辺で去ろうと思ったが、気になっていたことを思い出して聞く。
「そういえば、あの予言って何だったんですか?」
レミアがそう聞くと、ネネはふ~、と息を吐いて、手を組み、こちらを見据える。
何かまずいことを聞いてしまったのだろうか。
レミアが「やっぱりいいです」と言おうか迷っていると、ネネはやっと口を開いた。
「予言の魔法の悪いところを教えてあげようか。
詳しいことは術者にも、何にもわかんないの」
「え……」
そうなのか……。ネネがしょうもない魔法と言っていた理由が少しわかってしまった、ような気がしないでもない……。
「行かなくていいの?」
レミアが困惑していると、ネネはロビーの時計を指差しながら、しれっと言った。
「い、行ってきます!!」
(そっちが引き止めたのに……!!)
レミアは焦ってロビーを飛び出す。いつものように壁に空いた四角い穴を通り抜けると、絵画がその穴を塞いだ。その際、少しよろけて絵画に触れてしまう。汚したりしてないか少し焦ったが、大丈夫そうだ。
(やっぱり今日はちょっと具合悪いのかな……)
そんな風に考え込んでいると、驚いたことに絵画の少女がこちらに向けてひとりごとを言った。
普段、入るとき以外に話しかけてくることはないため、レミアは驚く。
「……あら、あなた……。ふふ……うふふ」
彼女はゆっくりと目を開く。
「楽しくなりそうね」
そう言って不気味に微笑むと、また目も口も閉じ、物言わぬ絵画に戻ってしまった。
(な、何……? 今日はみんなどうしたの!?)
レミアは悪寒を感じてぶるり、と震え上がる。
なんだかその場にいたくなくて、学校の方へと急いだ。
***
学校に着くと、なんだかみんながざわざわとしていた。
何かと思い、人だかりの方を確認しに行くと、どうやら先日行われたテストの順位が貼り出されているらしかった。
レミアは人の波に揉まれながら、筆記テストの結果だけを見に行く。実技テストは0点なのは見なくてもわかるからだ。
「あった」
レミア・ミュー Eクラス 480/500 1位
と書いてあった。レミアはそれを見て嬉しくなる。
(やった、480点、1位だ)
これは学年共通のテストで、教科は言語、魔法語学、魔法数学、魔法科学、魔法史の全5科目だ。レミアは魔力がなくてもこの世界で生き延びるために、知識だけでも身に着けようと、筆記科目はとにかく頑張っていた。だから純粋に嬉しかった。
(勉強は、裏切らない。必ず私の糧になる)
そう思いながら、ウキウキと人混みを抜け、ほぼ人のいない廊下を通って、隔絶されたEクラスへと向かっていると、突如後ろから強い力で押され、そのまま廊下の床へと打ち付けられた。
(なにこれ、起き上がれない……!)
大方、何かしらの魔法を使われているのだろう。レミアが冷静に思考していると、甲高い声が上から降ってきた。
「レミア・ミュー! 生意気だわ!」
カツ!と怒ったような大きな音がして、鼻のすぐ先に靴が着地した。
「みんなが実技の練習をしている間に勉強してズルをしたのね! 卑怯だわ!」
動く範囲で顔を上げて相手を確認すると、鮮やかなオレンジ色の縦ロールが目の端に映る。
──イレーナ・ジュビムーンだ。
油断した。
彼女はわがままお嬢様で、お金持ち一家の一人娘だ。
親もイレーナも青ピンズで地位が高く、虫の居所が悪いと誰彼構わずターゲットを決めて当たり散らかすことで有名だ。
レミアも、中等科時代に散々絡まれたが、高等科に入って数カ月。鳴りを潜めていたため、完全に油断した。
「~~!! !?~~!!!」
イレーナは何かしらキャンキャンと喚いているが、意識が朦朧とし始めて、何を言っているのか全く聞き取れなかった。
(うるさい、うるさい、痛い、早く魔法を解いて、なんで私がこんな目に? 1位で気分が良かったのに! 私からもう何も奪うな! 奪え! 奪え! 奪われる前に! 奪え!)
無意識に暴走する自意識を抑えることが出来ない。
気付くとゆらり、と二本足で立っていた。
魔法を解いてくれたのだろうか、そう過ったものの、頭の中はすぐに別の言葉で支配されてしまった。
(奪え! 奪え! 奪え!!!)
──何を?
頭の位置が定まらず、揺れ動く視界で、イレーナが恐怖に歪んだ顔をしているのを捉える。
すると、イレーナは何かしら大きな魔法を打った。
容赦なくこちらに一直線に向かってくるそれが、自分を襲う前に跳ね返り、向こうに戻っていくのを見たのを最後に、
レミアの意識は途切れた。
青ピンズ…魔力証明ピンズの青色保持者。青色は紫に次いで2番目に高い地位。
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