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20.二度目の交替

「あー。ゴホン。おまえら、な……」


あきれたような咳払い。タバコ焼けしたしゃがれたオッサンの咳払いが、事件現場に似つかわしくない雰囲気を醸し出す男女の間に割り込んだ。

ショウは何の未練もなく離れていくライトの手を少し寂しく思いながらも黙って見送った。


「ライト、お前昨日は合わせてやったがショウちゃんが助手なんて嘘だろ?」

「リードがそう言ったんですよね」

「あ、ああ。あんときはおまえリードのほうだったか……」


新米刑事にさとられないよう耳打ちに近い形で会話を確認する。ボスは気まずそうな表情で顎を摩ってうなずいた。

頭では一卵性双生児のように同じ顔をした別人だと理解していても、昔から馴染みのある部下の顔を前にしてどっちがどっちだとかの切り替えはボスにとっても難しいのだろう。

そこには特に言及することもなく、ライトは真剣な面持ちで言葉を続けていく。


「僕は反対です。殺人事件に関わらせるなんて何が起きるかわからない。ショウちゃんは一般市民なんですよ。僕達で守った命を僕が危険にさらしてどうするんですか」

「そりゃあそうだよな」


至極正論だ。リードならば「使えるやつはなんでも使っておけ」とでも返していただろうに、同じ顔から正反対の意見が返ってくるのはまだ慣れそうにない。

黙って身を小さくするショウを間に挟み、真剣に話す男ふたりの元に途中から離れて仕事をしていた新米刑事が走り込んでくる。

なんだかんだ悪態をつきながらも、イレギュラー対応に現を抜かすボスやライトよりもよっぽど仕事ができる自分に誇らしげな表情で電子機器を突き出してよこした。


「ボス、遺体の身元がわかりました。こっちのタブレットに共有しておいたので確認してください」

「よしわかった。ライト、お前にも容疑者の調査を頼む。候補が多いな。リストをそっちにも送る」

「わかりました。お願いします」

「ライトさん、ライトさん。私、なにかできることありますか?」

「うん。情報整理をするから……そうしたら安全な仕事を……君にも、手伝って……」


一途に突っ走る乙女心が気炎をあげる。目を擦るライトは前のめりに迫るショウを眠気混じりの声で抑える。

変化は一瞬だった。新米刑事の持ってきたタブレットが十八時を表示し、


「そんなノロノロやってられるかよ。ついてこいショウ」

「あっ、えっ?」


ふっとライトの雰囲気が変わった。眠って目覚めてのこの間二秒。二人の刑事の前から攫うようにしてショウの手を引く。

他人の事情などお構いなし。リードとの交替時間は唐突にやってくるのだった。


「うわあ。ガチで入れ替わるとこ初めて見た。本当に演技じゃないんですかあ? あれ」

「演技ならもうちょい上手くやってんだろうさ」


乱暴な素行でショウを引っ張り連れて行くリードの背中に疑いの目を向ける新米刑事とあっけにとられた様子のボス。


「うるさいぞ役立たずども」

「ラ、ライトさん?! いや、もうそんな時間?!」


ショウは自分のスマホで時刻を確認しつつ、現場に残す二人の刑事に中指を立てて悪態を吐くリードをなだめていた。

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