八十七話 晴夏への助け
晴夏は目の前の光景に目を丸くする。
赤い改造和服の女が、地這影に飲み込まれそうになった晴夏を、高速移動しながら救出したからだ。
しかも、お姫様抱っこという形で。
「あなたは……。騎召栄順……? なんで……?」
「名前は合ってるぜ。なんで助けたかって言われると、ちょっとややこしいんだけどよ。簡単に言うと、オマエらのお仲間の志之崎と小鳥遊を気に入ったからだ。ま、それ以上に、『狐調』様の状態がおかしいのを感じ取ったからかな……?」
「えぇ……何か知らない間に色々あったんだね。待って! ヨウ君と空乃ちゃんは? 二人は⁉」
「アイツらは……まあ大丈夫だろ。咄嗟の判断だったが、志之崎の指示でそれぞれ助けに来たからよ。しかし、志之崎の風魔法は便利だな。他人に使っても風魔法で速力を上昇させられる。オレも王誠も速力上げてもらってギリ間に合ったって感じだったからな」
「志之崎さんも来てくれてるの? え、というか王誠先輩も……?」
「おう。王誠の奴、人が変わったみてぇだぜ? 志之崎と小鳥遊に土下座までして悔い改めるってよ……。まあ、口調は相変わらず腹立つけどな」
「想像できない……。何かもう、頭がついていかないよ……。あと、いつまでお姫様抱っこしてくれてるの?」
「ん? 何言ってんだ? 影が届かない安全圏までだ。オマエもう動けねぇだろ? にしても軽ぃな。顔も女みてぇだし、ちゃんと飯食ってんのか?」
「う、動けるよ! それと体重は関係ないでしょ! 僕は少食なの! 体型維持のために筋トレもしてるし!」
「ふーん? まあ、いいや。とりあえず、志之崎達と合流すっぞ。影の攻撃範囲からそろそろ抜けれそうだ」




