八十三話 解呪
「反撃が来る前に済ませます。《呪詛魔法――呪詛吸収》」
狐調は両手を狐全の目にかざす。すると、狐全の身体中にあった人魂の痣が、狐調に吸収されていく。
「ガァァアアア……。ヤメロ……。ヤメロォォォォオオオオ……!」
叫びが聞こえなくなると、狐全の大きさは二分の一程になっていた。
「くっ……かなり強力な呪いですね……。ですが、これだけ吸収すれば……。父上、聞こえますか? 私です。狐調です!」
狐調はふらつきながらも狐全に声をかける。
「…………狐調……? お主何をして……」
「父上……良かった……。まだ、お使いになった呪詛法術が解けていないです。早く、解呪してください。このままでは、父上が呪いに完全に取り込まれてしまいます……」
「呪詛……法術……? そうか、私は……小僧に……」
「父上! ある程度呪いは私が吸収しました。今なら人に戻れます。お急ぎください」
「……そうか……そうだな。お主の声も聞こえていたぞ。狐調……。手間取らせたな。すまぬ。…………《呪詛法術――呪詛縛付》……」
「な……。父上……何を…………」
狐調は頭を抱えて苦しげに倒れ込む。
「狐調……。お主は優し過ぎる。見るに、小僧以外にも二人いるな。宮宇治家の者が負けたか……。仮に負けていないとしても、ここまでの侵入を許したということだ……。宮宇治家は強くあらねばならぬ。何よりもな……」
「お前ェェエエエ! 自分が何したか分かってんのか⁉ 自分の娘を……たった今お前ェを助けた娘に呪詛法術使ったんだぞ!」
洋平の怒りが満ちて噴き出た。
「……うるさいぞ。小僧。分かっておるわ、そのようなこと」
「分かってんなら、お前ェは正真正銘の外道だ……! 父親を心配してる娘に呪いの力を使い、動けなくしたんだ。狐調先輩はお前ェのことを想って……」
「ふん、お主に何が分かる? 知ったような口を利くな。全ては宮宇治家……いや、狐調のためだ。私が守らねばならぬ。たとえどんな方法でもな……!」
「…………どこが狐調先輩のためなんだよ……。お前ェの目の前で辛い表情で苦しんでる狐調先輩は何なんだ? お前ェにとっては娘が苦しんでようが関係ねぇってことか?」
「これも全ては宮宇治家、狐調の将来を思ってのこと。宮宇治家のことを何も知らずに小僧が私に口答えするな!」
「あァ。俺ァ宮宇治家のことなんざ知らねェよ。でも、狐調先輩が父親であるお前ェの行動を……暴走を止めたいって想いは知ってる! お前ェのために呪いの吸収までしたんだ。そんな娘の想いを踏みにじるのか⁉」
「狐調の考えは前にも聞いている。だが、そんな悠長なことをしていては出し抜かれる。陰陽師の数は減ったが、様々な家系がある。マナ知覚の覚醒者が増えていく中で、宮宇治家が力を取り戻すには手段は選んでられん! この選択は宮宇治家当主である、私のものだ。私は宮宇治家が滅びる可能性を少しでも減らしたい」
「そうかい。お前ェにも考えがあってしてることだってのは分かった。だが、『はい、そうですか』と納得できる内容じゃねェよ。街の人間を襲うようなやり方するなんて論外だぜ」
「小僧と話していても埒が明かん。誰にも邪魔はさせぬ……! 来い、小僧! 呪詛法術と影魔法の一体化がもたらす力を試させろ……!」




