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マナの天啓者  作者: 一 弓爾
宮宇治 戦乱

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八十一話 ノロイ VS バケモノ

 程なくして、壁を破壊する轟音と共に、狐調が砲弾のような勢いで現れる。


「大変お待たせ致しました」


 人魂模様の浮かぶ大斧を持つ狐調が、一振りで鋭利な影を切り裂く。

 結果、洋平達は後ろに下がることができた。


「なかなか、アクロバットな登場っすね、狐調先輩。マジ助かりました」


「間に合って良かったです。……『あれ』が父上なのですよね……。わたくしは、マナ感知能力がそれなりにあるので、事実なのだろうとは思います。それでも、この目で見ても信じられないです……」


 狐調は化物と成った狐全を憐れむように見つめる。


「……そうです。俺がご当主さんを追い込んだ時に、どす黒い術符を飲んであァ成りました……」


「そうですか……。呪詛法術の研究を続けていたのは知っていました。ですが、あのように呪いを凝縮して自らの肉体を変化させるとは……。父上……」


 狐全は目の前に現れた〝新たな敵〟に睨みを利かせる。

「グゴォォァァアアア!」と雄叫びを上げ、狐調に複数の影の刃を放つ。


「父上……わたくしが誰かというのも分からないのですね……」

 狐調は無表情に呟き、攻撃を躱す。

 途中で大斧にて、影の刃を弾き返す。


「わたくしの人魂斧呪ならば、父上の影にもおそらく攻撃が通ります。お三方は下がっていてください。そして、それ程の傷を負ってまで戦ってくださり、ありがとうございます」


 狐調は一気に加速する。

 襲い掛かる影を躱しながら、狐全との距離を詰めていく。


 狐全も危機を察したのか、影の防御壁を複数展開し狐調の進路を塞ぐ。


「はぁっ!」


 狐調の気迫と共に放たれた大斧は防御壁に十文字の亀裂を入れる。

 その亀裂に向かって、大斧の刃のない側面を叩きつける。

 すると、石が破裂するような鈍い音が響き、防御壁に穴が開く。


 同じように三度防御壁を破壊し、狐全の前まで出る。


「父上、娘の反逆をおゆるしください。あなたは行き過ぎた行動をとってしまった。わたくしが当主の娘として止めます……!」


「ミヤウジ……イガイ……スベテコワス。コワス。……コワス。グガァァアアア……!」


「……父上……あなたの宮宇治家への想いはよく分かっています。ですが、間違えた手段では本当の栄華は取り戻せない……!」


 狐調は大斧を振りかぶる。


 同時に狐全の全方位からの鋭利な影による攻撃が襲い掛かる。


「《呪詛魔法――斧呪廻転ふじゅかいてん》」


 呪詛魔法での強化を両腕に集中させたのだろう。両腕にどす黒い輝きが集中する。


 そして、斧を円形に振り回し続ける。

 黒い人魂が空中を舞い、漆黒の殺戮独楽さつりくこまと化した狐調の攻撃は、鋭利な影を片っ端から破壊していく。


 だんだんと狐全本体に近づく。

 そして、斧呪廻転は狐全に当たる……。


 ただし、狐全は大きく裂けた口にある牙で斧呪廻転を受け止めている。


「ギャハハハハ。ゼイジャク、ゼイジャク。コワス、コワス」

 狐全は歪んだ笑みを浮かべる。


「……父上はすっかり理性も失っておられるのですね。わたくしの攻撃手段が人魂斧呪だけだとお思いですか? 《呪詛魔法――召喚、童子切安綱どうじぎりやすつな》……」


 狐調の右手から人魂が発生し、それは人魂模様の浮かぶ大剣へと変化する。


「呪われた武器は、わたくしの扱い慣れた武器です。父上が教えてくれたことですよ……?」

 右腕だけで一気に振り下ろされた一撃は、狐全の頭頂部を強烈に殴打する。


「……とてつもない、頑丈さですね。正直、かなりの力を入れたのですが……」

 狐調は静かに呟く。


 狐全は四つの足が十センチメートル程、地面にめり込んでいる。


「グォォオオオオオ!」

 狐全の叫びと共に、影の棘が地面から大量に創出される。


 狐調はすぐさま、飛び退くことで躱す。


「やはり強いですね、父上……。わたくしは宮宇治家当主の娘。当主を止める責務があると思っております。ここからは、本気でいきます……」


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