七十八話 呪いのチカラ
場面は、洋平と狐全が戦っているところへ戻る。
「小僧……なかなかやるではないか……。だが、出力が違い過ぎる。お主の使う《影魔法》もなかなか筋が良いが、私には到底及ばぬ。既に、かなりの傷を負っているだろう? まだ動けるのか……?」
狐全の魔法は洋平よりも出力、速さ、威力全てが上だった。
狐調との契約で強化した状態でも押し負けそうだ……。
「俺ァまだまだ動けんぜ? んなことよりご当主さんは大丈夫か? さっきから、キョロキョロ何か探してるみてェだが。まるで、大事な娘を探す父親って感じだぜ……?」
「黙れ! あれは私のものだ! 小僧……あまり減らず口を叩くな……。思わず殺してしまうやもしれぬからな……」
狐全は細い瞳を更に鋭くする。
「私のもの……ね。娘想いの良い父親だこと。俺だったら、束縛強すぎてグレる自信あるぜ。こっからは俺も本気でいく……!」
洋平は今まで意識的にせき止めていた〝人魂呪詛の浸食〟をある程度解放する。
一気に肉体、心が呪いに浸食されていくのを感じる……。
身体中に人魂の痣が浮き出る。
「小僧……。それは狐調の……。どういうことだ? 体質同調魔法とやらで同調しているのか?」
狐全は細い目をやや大きく開く。
「さァな? お前ェは状況がよく分からないままに戦ってろ。さっさと終わらせる……」
洋平は更に上がった身体能力、マナ出力で狐全へ影魔法での攻撃を仕掛ける。
「ちっ、ここまでやってギリギリ勝負になるかどうかかよ……」
洋平は伸ばした鋭い影……《棘影》を切り裂くように狐全に放つ。
狐全も同様に棘影で応戦する。
何度も互いの鋭い影が交錯する……。
「小僧……。色々と策を弄したようだが、全て無駄だ……。私が仮に他のことに気を取られていようが、小僧との実力差は埋まらぬ。……一度死ぬがよい……。《影魔法――即影》」
狐全の詠唱が終わった瞬間、影が細く伸び、超高速で洋平の心臓を貫いた……。
洋平は言葉を発する間もなく、地面に堕ちる……。
地に堕ちた洋平に近づきつつ狐全は言葉を紡ぐ。
「心臓の半分を刺し貫いた。私が妻から引き継ぎ研究している『呪詛法術』ならば、蘇生が可能だろう……。研究室へ連れていく……」




