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マナの天啓者  作者: 一 弓爾
宮宇治 戦乱

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七十七話 契約②

「……はい……。あとは、わたくしが今まで水面下で動いていた話をするくらいですね。父上はマナ知覚の覚醒者を探す過程で、負傷者や死者が出ることもいとわないという命令を出していました。しかし、わたくしが当主の娘として皆に『死者だけは出さないよう』釘を刺しておきました。結果、耳に入っている限り、死者は出ていません。負傷者はいますが……」


「なるほど……」


「それと、あなたの仲間の小岩井晴夏さんがこの屋敷や陰陽師の存在を知れるように、心を読まれた際に『各種情報を心に思い浮かべる』ようにしていました。あなた方がスムーズに本邸に来られた理由です」


「それでスムーズに屋敷まで来れたんすね。……ただ今までの戦いでも、深山とかは結構殺す気で来てた気がするけどな……」


 洋平は顎に手を添える。


「あぁ……。彼女は狼女で、スイッチが入るとかなり好戦的になるので……。……いえ、言い訳ですね。わたくしの求心力が低かったせいです……。申し訳ないです……」


 狐調は頭を下げる。


「いやいや。まあ、色んな奴がいるっすから。……あと気になってるのが、人魂呪詛ひとだまじゅそを心臓にかけたら、代償に肉体、心、魂は呪いに浸食されるんですよね? それって大丈夫なんですか? 狐全と戦って、結果俺は死にました……ってんじゃ、契約にもならないですよ?」


「そこは、わたくしが『呪いを吸収』することで回復させられます。ただし目安ではありますが、肉体、心、魂の六十パーセントを呪いに浸食されると、回復は不可となります」


 狐調は真っ直ぐ洋平を見つめ、言葉を続ける。


「呪いが『魂』にまで干渉するには時間がかかります。継続して三十分の戦闘が行われて、大体回復不可の領域となります。『心、肉体』への浸食は比較的早いです。特に肉体は皮膚に人魂の痣が出るので、早く感じるかと思います……」


「……そうか……。分かった。仲間に渡辺さんという狐調先輩の呪いを受けた女性がいるんですけど、その人を『今遠隔で』回復することはできますか?」


「可能です。……正直こうなることを見越して、あの方には『そういう呪い』をかけていたんです。ごめんなさいね……。通常の《呪詛魔法》であれば直接吸収する必要があるのですが、彼女にかけた呪いは遠隔操作で無効化ができるものです」


 狐調はやや横に視線をずらす。後ろめたさを感じさせるような動作だ……。


「……複雑な気持ちではありますけど、ある種良かったです……。契約を承諾する条件を一つ。今すぐに渡辺さんの呪いを回復してください。渡辺さんに電話して無事回復したか確認します。そこで、回復が分かれば契約を承諾します」


 洋平は狐調を見据える。


「分かりました。元々、そのつもりでしたので……。少しお待ちください。魔法を遠隔発動しますので……。《呪詛魔法――人魂呪詛、遠隔解呪えんかくかいじゅ》……」


 二十秒程待ち、洋平は舞里に電話をかける。六コールすると電話に舞里が出る。


「もしもし! 渡辺さん! 体調は大丈夫?」

 洋平はつい大きめの声を出す。


「…………その声は……和泉君……? かなり……頭は痛いかも……。でも大丈夫……身体も動くよ。それに、痣が消えてる……」


 舞里はしんどそうな声色だが、回復しているようだ。


「そっか……良かった。本当に……! 渡辺さんは事務所で休んでてくれ。絶対、動いたらダメですよ? 回復してすぐなので。また、会いましょう」


「待って……! みんなは?」

 舞里が急いで質問する。


「あァ……今はまだ事務所に帰れない。でも必ずみんなで帰るから、待っててほしい。急な話で混乱すると思う。ただ、あまり長く話してられない状態なんだ。ごめん。分かってくれ……」


「急にそう言われても……。……でも、和泉君の切羽詰まった言い方で分かったよ。今は時間がないんだよね? とにかく、呪いを解いてくれてありがとう。……気をつけてね、和泉君」


「おう! 渡辺さんは心配せず、休んでてくれ!」

 洋平はそう言い、電話を切る。


「……今のあなた達の状況の詳細は伝えないのですか?」

 狐調が静かに尋ねる。


「渡辺さんは下手したら、無理してでも来るかもしれないから……。それに、今は何も考えず体調を回復させることに集中してほしい……」


「そうですか……。お優しいのですね……。では、契約を承諾していただいたということで良いですか?」

 狐調はゆっくりと尋ねる。


「はい。契約を承諾します」


 そう言うと、狐調は洋平の心臓に両手を添える。


 そして「痛みますよ……? 《呪詛魔法――人魂呪詛、機軸心臓きじくしんぞう》」と詠唱する。


 途端に、洋平の心臓は激しい痛みを訴える。

 心臓が〝鋭利な黒い怪物の手〟で握り潰されているようだ……。


「ガ……ハッ…………」

 洋平は数十秒動けずにいた……。


「契約完了です。あなたの心臓に人魂呪詛をかけました。あなたはわたくしの呪詛魔法で大幅に強化されます」

 狐調は静かに声をかける。


「……そうっすか…………」

 痛みで息がしづらい……。


「……それと、マナの扱いについても少しばかりレクチャーします。魔法を扱うには、マナ知覚力が最重要です。マナ知覚力を上げることで全体的に能力が上がります。人魂呪詛がかかっている今なら、わたくしのマナを浴びることで、『肉体、心、魂が共鳴』してマナ知覚力を強引に引き上げることができると思います。いかがですか?」


 狐調は肩で息をする洋平の肩に手を置く。


「……ハハ。なかなかスパルタっすね、狐調先輩……。もちろんお願いします……! ただし、二十秒待ってください……。キッツイんで!」


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