七十三話 友の助け
あぁ、ここまでか……。ヨウ君、空乃ちゃん、君達に会えて本当に良かった。
僕の人生はここまでと神に言われても満足だよ……。
一つ心残りがあるとしたら、舞里ちゃん。君を救えなかったことだ……。
ごめんね……そしてありがとう……。
高上の蜻蛉切の高速の振りが見える。
まばたきしたら、僕は死ぬんだろう……。
せめて、最期の一撃くらいは捨て身でいい。当ててやる……!
次の瞬間、超高速の〝砲弾のようなもの〟が飛んでくる。
高上はそれを槍を回転させて防ぐ。
威力が高かったのか、高上を一メートル程、後ろに押し出した。
「もう! 晴夏、今の一撃死ぬ気で放つつもりだったでしょ! 死んだら私は嫌だよ」
そこには日本刀を二振持った空乃がいた。
「空乃……ちゃん。……なんで……ここに……?」
ふらつきながら晴夏は問いかける。
「屋敷の奥から進んでると、この部屋の周辺に出たんだ。すごい爆音がしてたから、誰かが戦闘してると思って駆け付けたんだ」
空乃は晴夏の前に出る。
「今の一撃魔法か? ワシを押し出すとはなかなかの力ぞ……」
高上は空乃を見る。
「魔法じゃないよ? その辺にあった土器をぶん投げた。私が扱えば土器も砲弾みたいなもんですから」
空乃は淡々と返答する。
ただ、怒りが静かに滲み出ているのが分かる。
「ホッホッホ。面白い童じゃ。ヌシらは本当に粒ぞろいじゃな」
高上は愉しげに声を上げる。
「ここからは私が相手だ。志之崎さんに借りた日本刀は強靭だ。大きい槍相手でも十分戦える。晴夏は傷薬塗って、少しでも回復に専念して」
空乃はそう言い、手の平サイズの傷薬を晴夏に渡す。
「僕もまだ……」
話すのを制するように空乃は声を出す。
「馬鹿! これ以上無理すると死んじゃうよ? 氣も乱れてるし、念力と傷薬で止血して。とりあえず、ここは私に任せて!」
「……ごめん。ありがとう。とりあえず、回復に専念するよ。高上は《憑依魔法》で本多忠勝を憑依させてるんだ。戦闘能力が格段に上がってる。それと、あの槍は蜻蛉切っていう、本多忠勝の使っていた切れ味が凄まじい槍だ。気を付けて……!」
「よろしい! 了解! 任せといて! ……お待たせ、お爺ちゃん。ヤリ合いましょうか……!」空乃は戦闘態勢を取る。
「勇ましい童じゃのぉ。じゃが、一般人とは到底思えぬ戦闘能力を秘めておるの……。本気でいくぞい……!」
高上は蜻蛉切を高速で振るう。
対して、空乃は二刀流の刀で攻撃をいなす。
高上のリーチの長さは脅威だ。
空乃は無理に攻めることはなく、攻撃の隙を作り出すために槍を外側に弾く。
しかし、高上は空乃の攻撃の勢いをうまく利用し、槍を反転させて攻撃に変え、隙を与えない。
幾度となく金属音が響き渡る。
「童……! 実に面白いぞ! ここまでの戦いができたのは十数年振りかのぅ……。ワシ自身、そして忠勝が悦び勇んでおる……!」
高上は上機嫌なのが見るだけで分かる。
「私もこんな長い槍使う人と戦うのは初めてなので、面白いです。それに、ここまでの実力を持っている人もなかなかお目にかかれないので……」
空乃は冷静だが笑みを零す。
その後も高上と空乃は互角の戦いを繰り広げる。
晴夏は見ていることしかできなかった。
……ただし〝今は〟だ。
血がある程度止まり、マナがもう少し回復すれば僕も戦いに加わる……! 高上には悪いけど、ヨウ君、舞里ちゃんが心配だ。早く倒して先に進みたい。
◇◇◇
――五分後。
変わらず、高上と空乃は戦い続けていた。
互いにたびたび高笑いを上げている。
「高上! 空乃ちゃん! 僕も戦いに加わるよ! 本当は不意討ちしたかったけど、無粋だと思ったから声かけた!」
晴夏はある程度動けるようになった身体を奮い立たせる。
「童! ヌシに攻撃する気は最早ない! ワシはこの血沸き肉躍る戦いに全身全霊を投じたい……! 無粋だと思うなら、そこで見届けよ! ヌシの傷では先に進んでも足手まといになるだけじゃろう……」
高上は筋肉が限界に近いのか身体中に血管を浮かべながら、勇ましく叫びを上げる。
「お爺ちゃん……いや、高上、忠勝の言う通りだよ。ここは私に預けて晴夏。勝つよ、私は」
空乃は涼しい顔をしているが、少しばかり息遣いが荒くなっているように見える。
「……もう! 戦闘馬鹿だよ二人共! 絶対勝ってよ空乃ちゃん!」
「任せて! 今の私は久しぶりに全神経、氣が研ぎ澄まされてる。超強い私を魅せてあげる」
高上は蜻蛉切を更に一段速く振るう。
空乃はその動きに合わせ攻撃を捌く速度を上げる。
互いに傷は負わぬが、体力と気力を削る戦いが続く。
そして決着の時は来る――。
高上の〝右腕の筋肉が限界〟を迎えていることにいち早く気づいた空乃は、蜻蛉切を右手に持ち替えた瞬間を狙い二刀による一撃を放つ。
結果、蜻蛉切は宙を舞い地面に堕ちていく。
しかし、高上も自身の右腕の限界に気づいていたのだろう……。
蜻蛉切が弾かれる可能性を考えた動きをしたと思われる。
左手での打撃が空乃の中腹部に衝撃を与える。
バキバキッと骨が砕ける音が響く……。




