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マナの天啓者  作者: 一 弓爾
宮宇治 戦乱
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六十六話 師弟の絆

「うぐっ……インビジさん……」


 美鈴の声と同時に、騎召はインビジブルゴーレムの殴打を受ける。

 しかし、騎召はトンファーを前に二つ並べ防御する。


「なっ……インビジさんが見えるの……?」

 美鈴は何とか声を出す。


「オマエの魔法は予測だが、『知覚力を下げるモノ』か、『知覚できないモノを創出』する能力だ。オレ単体だったら十分脅威だったぜ。でも、オレは召喚魔法が使える。右肩に乗ってるこのちっせぇコウモリ見えるか?」


 騎召は右肩を指さす。


「《召喚魔法――探知蝙蝠ディテクションバット》。コイツは他の生き物からマナを奪うために、マナ探知する習性がある。オレの命令で敵をマナ探知した場所を共有させた。コイツの知覚力を上げるためにやたらマナ使っちまったがな……」


「……すごいね、お姉さん。一瞬でそれだけの分析と行動を起こせるなんて……。それにトンファー破壊するつもりで放ったんだけど……」


「まあな。嬢ちゃんもすげぇぜ? 昨日にマナの知覚したとこなんだろ? 鋭い剣技に見えない魔法、なかなかに面白れぇ……! ついでに教えてやるよ。このトンファーは宮宇治家の御神木ごしんぼくでできてる。表面は法術油ほうじゅつゆで固めて強度を上げてる。さてと……いつまでもお喋りしてらんねぇ。攻めてきたのはオマエらだ悪く思うな……」


 騎召の目に暴虐的な光が宿る。


 突っ込んでくる騎召を止めようと、インビジブルゴーレムで三度攻撃する。


 しかし、動きを探知した騎召は攻撃を躱す。

 高速のトンファーの攻撃は美鈴の刀を叩き落す。


「ここまでだ……」

 騎召のトンファーは美鈴の右上腕に強烈な衝撃を与える。

 美鈴の悲鳴と骨の砕ける音が響く。


「……構えからして右利きだろ? 利き腕は折った。次は志之崎だ……」


 騎召が呟くと同時に、志之崎が怒り狂った風神の如き、荒々しい風と共に美鈴の前に出てくる。




「美鈴……。すまない、遅くなってしまった……」

 志之崎は美鈴の痛みを考え、まるで自分の腕が折れたような苦痛に歪んだ顔をする。


「シノ……さん……。そんな顔……しないで……。美鈴はまだ戦うよ……」

 涙を浮かべながらも美鈴は左手で刀を握る。


「もういい、美鈴。ここからは俺が引き受ける……」

 志之崎は騎召に鋭い眼光を向ける。


「仲が良いんだな。たしか師弟だったか……。悪ぃな、戦争ってのはこういうモンだからよ」

 騎召は美鈴の奮闘に礼儀を尽くしたような口調だ。


「ああ……。俺はお前を討つ。いくぞ……!」

 志之崎は《風魔法――颯》で加速し、騎召としのぎを削る。


「ハハハハハ! 強ぇな! でも、だんだん速度落ちてんぜ? マナがもう持たねぇんじゃねぇか?」


 騎召の言ったことは正解だ。志之崎はもうマナがほとんど残っていなかった……。


「……だとしても、負けられない……」


 志之崎は今まで培った剣術、魔法を全て使い何とか打ち合う。


 しかし、陰陽師として鍛錬を積んできた騎召には一歩及ばなかった……。


「シノさん……! 足りない部分は美鈴を使って、まだ身体は動く……!」

 美鈴の張り上げた声を聞き、志之崎は決断する。

 美鈴もマナ、体力共に限界だ。ならばこれに懸ける……!


「《志之崎流剣術×反射魔法――おろし》……!」

 颪を放つも、騎召は受け流すことでダメージにはならない。


「コレで終わりだぜ……!」

 騎召のトンファーの連撃が志之崎を襲う。


 ――刹那「志之崎流剣術《散らし風》……」

 志之崎は攻撃から防御へ急転換する。


 あまりに自然な流れで散らし風に繋いだため、騎召は大きくバランスを崩す。


 そして、騎召の目の前には左手で刀を握る美鈴がいた。


「志之崎流剣術《青嵐》……!」

 美鈴が〝左手のみ〟で放った青嵐は一瞬で三連撃を騎召に与える。

 更にダメ押しで、インビジブルゴーレムの強打が騎召を吹き飛ばし、奥にあった棚を粉砕する。


「はぁはぁ……。倒せ……た……?」

 美鈴は立っている力もなくなり、座り込む。


「ハッハハハハ! いやぁ、いいねぇ。こんだけ身を焦がすような戦いは久々だぜ! 嬢ちゃん右利きじゃなくて『両利き』だったんだな。両手の剣術修行してるとはよぉ……」


「嘘……まだ、動けるの……?」

 美鈴から絶望的な言葉が零れる。


「あぁ~、たのしかった……。……安心しろ、もうオレは動けねぇ。オマエらの勝ちだ。殺していくなら殺していけ……!」

 騎召は満足げに言葉を紡ぐ。


「……殺す気はない。あくまで、俺達は狐調の呪いを解くこと、馬鹿弟子を正すこと、宮宇治家の暴走を止めるために来ただけだ……」

 志之崎は静かに返答する。


「そうか。……宮宇治家の暴走ね……。まあ、オレも思うところはあるから否定はしねぇ。ただ、狐全様と狐調様はすげぇ強ぇぞ。あの人達をオマエらが倒せるかどうか……。まあ、戦ってみねぇと分かんねぇけどよ。だから、戦いは面白れぇ……!」


 騎召は豪快に笑う。


「何か『清々しい戦闘狂』って感じだね、お姉さん……。でも、何とか勝てて良かった」


「そうだな。美鈴のおかげだ……」

 志之崎はふらふらと美鈴に近づき、頭をなでる。


「あ……シノさん……! やったぁ! ついにヨシヨシしてくれた! 嬉しいです! 美鈴、頑張ったでしょ!」

 美鈴は心の底から嬉しいということが伝わる笑顔になる。


「ああ、俺も驚いたぞ。美鈴は自慢の弟子だ。……だが、まだ気は抜けんぞ……。とりあえず、怪我の手当をしよう……」

 志之崎はギターケースから、傷薬、包帯を取り出す。


 その様子を見ていた騎召は、「オイオイ……あんな、ガキみてぇな奴にオレは負けたのか……。オレもまだまだ修行不足だな……」そう言い、身体を伸ばし寝転ぶ――。


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