表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マナの天啓者  作者: 一 弓爾
宮宇治 戦乱

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

65/102

六十五話 師弟共闘

 一方、志之崎と美鈴は、剣を振るのに十分な広さの部屋で騎召と戦っていた。


「さてさて、オレらもヤルか! オレは騎召栄順だ! 二対一で全然構わねぇけどよぉ。流石に《召喚魔法》なしだと負ける可能性もあっからよ、使わせてもらうぜ」


 騎召はギザギザした歯を見せる。


「《召喚魔法――羅刹鬼らせつき》!」


 詠唱に応じて、全身赤い甲冑に、赤いぼろ布を羽織った一本角の鬼が現れる。その瞳は鋭く、目に映るもの全てを破壊しようとする気迫を感じる。右手には幅広の大きな刀を持っている。


「美鈴……実質二対二だ。だが、騎召は召喚魔法を使う。途中で敵の数を増やす可能性がある。十分注意して戦うぞ……」

 志之崎は美鈴に声をかける。


「了解! 空乃ちゃんは大丈夫かな? 王誠君に吹き飛ばされたけど……」

 美鈴は空乃の吹き飛ばされた方向を一瞬見る。


「……本来なら馬鹿弟子の相手は俺が務めるべきだ。だが、この状況では目の前の騎召を相手にするのが先だ。それに空乃はかなり強いと直感してる……。俺達がするべきことは騎召を早めに倒して空乃に合流することだ……」


「……そうだね。分かった。目の前の敵に集中するよ……」

 美鈴は静かに戦う意志を固めたようだ。


「覚悟は良さそうだな! 始めるか……!」

 騎召が羅刹鬼と共に迅速に駆ける。


 志之崎は知覚していた。騎召と羅刹鬼はどちらも同等の強さを持っている。ただ、腕力に関しては羅刹鬼の方が上だろう。


「美鈴! 羅刹鬼は俺が倒す。騎召を任せていいか?」


「分かった。シノさんも気を付けてね」

 美鈴は刀を構える。


 羅刹鬼は電光石火の剣戟を振るう。

 志之崎は風魔刀で全てに対応する。


 互いに徐々に剣速が上がっていく。はたから見れば、剣の軌道は見えず、剣戟音のみが響いているように感じるかもしれない。


「くっ、強いな……。できれば、時間をかけて打ち合いたいところではあるが、あまり時間がないのでな……。《志之崎流剣術×反射魔法――おろし》、《風魔刀――青嵐あおあらし》」


 真上に構えてから一息に打ち下ろす一撃を放ち、羅刹鬼の腕を麻痺させた上で、青嵐による十六連撃の斬撃を放つ。


 羅刹鬼は強烈な連続攻撃にフラフラと後ろに下がる。

 しかし、その目の闘志は消えていない、むしろより強く輝く。


「頑丈だな……かなりの手応えだったのだがな」

 そう言い、志之崎は美鈴の方を確認する――。


 ◇◇◇


「お嬢ちゃんもなかなかの剣の使い手だなぁ! いいね! 楽しくなってきたぜ!」

 騎召は美鈴の剣撃をトンファーで防ぎつつ、隙を衝き腹部に攻撃を入れる。


「うぅっ……。まだ……」

 美鈴は刀を振り抜く。


「悪くはねぇが……隙が多すぎだ……」

 騎召はトンファーで顔面に一撃を放つ……。


 ――しかし美鈴にトンファーが当たる前に、騎召は右側面から〝見えない何か〟に吹き飛ばされる。

 吹き飛んだ騎召は羅刹鬼にぶつかり、その勢いのままに高さ一メートル程の壺に直撃する。


「……いいねぇ……! 固有魔法か今の……? 見えねぇし、知覚すらできなかった……。何か固い塊にぶつかったみてぇだったぜ! 羅刹鬼もそこそこダメージもらってるしよぉ」


 頭から血を流しながら、騎召は乱暴に壺の破片を振り払う。


「……かなりマナを込めたんだけど、強いねお姉さん……」

 美鈴は静かに呟く。


「大丈夫か美鈴? 腹に攻撃を喰らったのではないか?」

 志之崎は美鈴を心配そうに見る。


「大丈夫だよ……。まだ戦える……」


 そう答えてはいるが、美鈴は腹部を押さえている。かなり痛むのだろう……。


「いやぁ、ココで待機してたのは『当たり』だったぜ……! 強い奴と戦うのは面白ぇからよ……! 羅刹鬼、オマエに送るマナを増やす。あと、ここからはオレ自身に《身体強化魔法》も使うぜ……? 全力で来いよ。じゃねぇと下手したら即死だぜ……?」


「……あんなに強いのに、全力じゃなかったの……?」

 美鈴は驚きを素直に口にする。


「美鈴、俺達はマナを知覚したのが昨日だ。……普通に考えれば、陰陽師として研鑽を積んできている騎召にすんなり勝つのは難しい。ここからは一緒に戦うぞ。美鈴の魔法の発動タイミングは任せる。動きを合わせるから、俺のことは気にするな。来るぞ……!」


 騎召は羅刹鬼との連携で攻撃を組み立てる。

 どちらも速度、攻撃力共に上がっており、防ぐのがやっとだ……。


 また、騎召と羅刹鬼のコンビネーションは完成されており、美鈴と志之崎を着実に削っていく。


「このままじゃ、押し負けちゃう……。シノさん、私の魔法で鬼さんにダメージを入れる。そこにシノさんの攻撃を!」


 即席で美鈴と志之崎は、連携攻撃を繰り出す。

 羅刹鬼は対応しきれず、体勢を少し崩す。


 瞬間、インビジブルゴーレムの《不可視の鉄拳》が羅刹鬼を殴り飛ばす。

 甲冑が砕ける音と共に五メートル程吹き飛び、柱にぶつかり羅刹鬼は止まる。


「このまま決める……! 《風魔法――はやて》」

 志之崎は一気に加速し、羅刹鬼に刃が届く所まで移動する。


「《風魔刀――駆天風魔くてんふうま》……!」

 至近距離で縦五メートルの巨大な風の斬撃をぶつける。

 これを羅刹鬼は刀で防ぐ。


 お互い全力のせめぎ合いが続く。


「最後だ……。志之崎流剣術《居合、木枯らし》」

 羅刹鬼の剣撃を躱しつつ、納刀しこの一瞬に全神経を集中させた一閃を放つ。


 木枯らしは柱諸共に羅刹鬼を真横に両断する。

 羅刹鬼は灰のようパラパラと消えていく……。


 ◇◇◇


 その頃、美鈴は騎召の激しい攻撃に防戦一方だった。


「オイオイ、そんなモンかい? 嬢ちゃん?」

 騎召は数段上がった身体能力で美鈴を追い込む。


「くっ……まだっ……! 志之崎流剣術《青嵐》!」

 美鈴の四連の斬撃が騎召を襲う。


「筋は良い……。だがオマエはまだまだ未完成だ……」

 騎召はトンファーで全てを防ぎ、前蹴りで美鈴を蹴り飛ばす。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ