六十三話 罪と罰への意識
場面は、裁奈と深山の戦闘へと移る。
「アッハッハッハ! さっきまでの威勢はどうしたんですか? お姉さんボロボロですよ……?」
深山は《火荊荊絡蠢》で煌々と輝く暗い部屋で、金の瞳を残虐に光らせる。
「白犬……。速ぇな……」
裁奈は身体中に裂傷を負い、血が床に流れ続けていた。
「大人しく和泉先輩に私を任せておけば良かったのに……。お姉さんじゃ私を満足させられません。やっぱり、和泉先輩は格別です……」
深山は焦がれるように呟く。
「……うるさい白犬だねぇ……。アタシがいつ負けを認めた? 躾けてやるっつったろ?」
裁奈は火荊荊絡蠢を左手から外す。
直後、《荊罰魔法――荊鞭》を右手に創出する。
「あらら、もうマナもなくなっちゃいましたか? そんな鞭一本で私の速さについてこれますか……?」
深山は高速で部屋を駆け回りながら、突っ込んでくる。
舞里……。悪ぃな。アンタが昔お守りでくれてた〝コイツ〟を使わせてもらうぜ……。
アタシもこんな勝ち方選ばないといけないなんて、まだまだ弱ぇな……。
「来いよ、白犬……!」
裁奈は空を切る音と共に荊鞭を振るう。
「当たりませんよ? その程度の速さじゃ……!」
深山が直線的に疾駆する。
「当てようとは思ってねぇ……。『進路を制限』してやったんだ、白犬……」
目の前まで来た深山に向けて、手の平サイズの丸いガラス玉に入った花束……〝麻痺花爆弾〟を投げる。
といっても、限界まで引き付けてからマナを込めて爆弾を起動したため、裁奈も爆発に巻き込まれる……。
「キャァアア! コレは……」
深山は麻痺花爆弾に仕込まれた、麻痺性の花粉を大量に吸い込み、話すこともできなくなる。
立っているのがやっとという様子だ。
「舞里の爆弾は強ぇだろ? アタシも身体動かすのがやっとだぜ……」
裁奈は麻痺しつつも多少は動けていた。
なぜなら、荊鞭を右腕から肩にかけて巻き付け、尋常ではない痛みと共に神経を刺激し、無理やり動かしているからだ。
この痛みが私の報復に対する〝罰〟の痛みだ……。
「コイツで終わりにする……。《合成魔法》《荊罰魔法×火炎魔法――火荊破縛》……」
床に散らばった火荊荊絡蠢が深山の全身に絡みついていく。
「あなた……まさか……」
深山は何とか口を動かす。
「罪には罰、因果応報だ……。街に被害を与え、和泉を傷つけた罪は重いぜ……?」
深山は全身を荊で覆われ、バキバキと骨が軋む音が響く――。




