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マナの天啓者  作者: 一 弓爾
黒幕

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五十六話 超速 逃走劇

「フハハハハ! やはり、貴様らは拒むと思っていた。貴様らの魔法適性は相当なものだ。『マナの感知能力がそこまで高くない』俺ですら気づけたのだからな! もはや貴様らの意思など関係ない。その肉体もらうぞ! こちらには《憑依魔法》を使える者がいる。肉体があるだけで十分だ!」


 もはや、〝傲慢の怪物〟と化した王誠は高らかに声を上げる。


「王誠……お前は最後まで変わることができなかったか……。常に嘘の鎧を身に着け、俺の稽古に出ていた訳か……」

 志之崎は悲しげに呟く。


「そのくらい、勝つためならば厭わない! さあ、剣を交えるぞ! 《雷魔法――雷纏》、《将剣魔法――ソハヤノツルキ》……!」


 王誠は身体中から稲光と炎を撒き散らしながら、ソハヤノツルキを構える。


「最低だよ、王誠君……。そこまでダメな人だと思わなかったよ……」

 美鈴は露骨に軽蔑した眼差しを向ける。


「黙れ下民! 勝利こそが全て! 『常勝こそが上道院の流儀』だ! 来い!」


「美鈴……あまり時間をかけていられない。手早く決めるぞ……!」

 志之崎は風魔刀を構える。


「了解、シノさん。王誠君には痛い目を見てもらおう」


 王誠は雷纏で身体能力を引き上げ、炎を纏ったソハヤノツルキで斬撃を複数飛ばしてくる。


 対して、志之崎は「《風魔刀――駆天風魔くてんふうま》……」と詠唱する。

 上段の構えから、縦五メートルの巨大な風の斬撃を飛ばす。駆天風魔はソハヤノツルキの斬撃を吹き飛ばす。


「くっ、もう使いこなしているのか。だが……」


 王誠が話している途中で〝見えない何か〟に王誠は吹き飛ばされる。

 正体は美鈴のインビジブルゴーレムだ。強烈な殴打は王誠を大木に叩きつけ、大木が激しく揺れる。


「ガァァ……。小鳥遊、貴様ァァあああ!」

 王誠は怒号を放つ。


「王誠君、うるさい。シノさん……連携でいこう……」

 美鈴の瞳には冷静な光が輝いている。


「来い! 貴様程度に負ける訳がないだろう!」

 王誠はソハヤノツルキによる剣戟を振るう。


「……志之崎流剣術《散らし風》……」

 美鈴はそよ風のように静かに、だが着実に全ての剣戟をいなして散らす……。


「良い剣捌きだ美鈴……。志之崎流剣術《風魔刀――青嵐》……」

 志之崎の風魔刀は一振りで複数の斬撃を放つことができる。その風魔刀での青嵐は一瞬で十二連撃の斬撃へとなる。


 王誠は美鈴の散らし風でバランスが崩れており、攻撃を全て喰らう。


「……全て峰打ちだ。お前には失望したぞ、王誠。……行くぞ美鈴……」

 志之崎と美鈴は霊山を下っていく。


 しかし、その足はすぐに止められる。

 鋭利な影の塊が志之崎と美鈴を取り囲んだからだ。


「……狐全の魔法か……。美鈴、命懸けでの離脱になる。すまないが、頑張ってついてきてくれ……」

 志之崎はマナを日本刀に集中させる。


「大丈夫だよ、シノさん! 美鈴もシノさんを護るね!」


 志之崎と美鈴は同時に攻撃を繰り出す。

「《合成魔法》《風魔刀×反射魔法――駆天乱斬くてんらんざん》……!」

 志之崎は、空中で乱反射する暴風の刃の塊を放つ。


「インビジさん、お願い! 《インビジブルゴーレム――不可視の鉄拳》!」

 インビジブルゴーレムによる一撃が、影の塊を襲う。


 二人の攻撃は影の耐久力を超えたようだ。

 ――影に風穴が開き、目の前には木々が広がる。そこに向かい走っていく。


「そこまでです。全く、無茶なことをされるのですね……」

 狐調が身体中に〝人魂のような形の黒い痣〟を浮かべながら呟く。


 その手には狐調の背丈と変わらない一六〇センチメートル程の、〝黒い人魂の浮き出た大斧〟がある。


「ホッホッホ。誠、勇ましいことじゃ。ワシらから逃げ延びようとはのぉ」

 高上は左手で長い髭を触りながら話す。右手には剣が握られている。


「美鈴、倒そうとは思うな。今は逃げることが最優先だ。敵は全部で六人。王誠はすぐには動けないだろうが、他の奴らもかなりの使い手と直感している……」

 志之崎は冷静に伝える。


「了解。美鈴の魔法で切り抜けるのが、良さそう。シノさん、隙作ってくれる?」


「分かった。一気にいくぞ……! 《風魔刀――駆天乱斬》……!」


 志之崎の放った、駆天乱斬を狐調と高上は躱し、距離を詰めてくる。


 先に攻撃してきたのは高上だ。

「お前が先か……。《志之崎流剣術×反射魔法――おろし》」

 刀を真上に構えてから、一息に打ち下ろす一撃を放つ。


 高上は素早く反応し攻撃を防ぐ。

 しかし、元々キレのある志之崎の打ち下ろしに《反射魔法》での〝反射し弾く力〟が加わり、その一撃は凄まじいものとなる。


 高上の予想を遥かに超えたと思われる一閃は、高上の両腕を麻痺させるのに十分であった。


 そこに狐調が近づき、連続で大斧を振り抜く。志之崎は素早く躱し、「《風魔法――はやて》」と詠唱する。

 颯により、加速した志之崎は、狐調を置き去りにし下山方向に進む。


「シノさん! 任せて!」

 美鈴の声と共に、追いかけてくる狐調、高上に向けてインビジブルゴーレムの《不可視の猛打もうだ》が放たれる。


 見えない打撃のラッシュに狐調と高上は防御で手一杯となる。


「美鈴このまま、下りきるぞ……!」

 志之崎の声に応え、美鈴は走る。


 二分ほど走り、異変に気づく。周辺一帯に魔獣がいるのだ。コウモリ、蛾、豹、狼など様々な種類だ……。


「オウオウ。ヤルねぇ、お二方。オレとも一戦交えてくれよ……!」

 赤い改造和服を着て、両手にトンファーを持った騎召が話しかける。


「栄順、この人達は強い。ちゃんと捕まえるんだよ……?」

 狼女の姿の深山が釘を刺す。


「ヘイヘイ。『戦いを楽しんで目的を忘れるな』だろ? よく狐全様に言われてっからよ。分かってるぜ……」

 騎召はギザギザした歯を見せながら笑う。


「シノさん……」

 美鈴は不安そうな表情だ。


「大丈夫だ美鈴。俺が必ず護る。……それに、こいつらを倒す必要はない。耳を貸せ美鈴」

 志之崎は美鈴に作戦を手短に伝える。


「了解です。シノさん!」

 美鈴は敬礼のポーズを取る。


「何楽しそうに話してんだぁ⁉ オレも混ぜろよ!」

 騎召がコウモリと蛾の魔獣を引き連れながら突っ込んでくる。


「傍に来い、美鈴……。《風魔刀――色無いろなかぜ》……」

 風魔刀による高速の剣撃は、志之崎と美鈴を囲う形で〝全方位の攻撃を防ぐ風のまゆ〟を創り出す。


「このまま、突っ切るぞ……! 美鈴は魔獣や奴らの攻撃を防いでくれ」

 志之崎は美鈴を背負う。


 風の繭は弾丸の如く突き進む。途中、騎召と深山、魔獣の攻撃があったが、それらをインビジブルゴーレムと風の繭で無理やり突破していく。


「……シノさん、もしかしてだけど……このまま飛び降りる気……?」

 美鈴は眼前に迫る崖を前に声を震わせる。


「…………美鈴、怖かったら、目を閉じていろ……」

 志之崎は静かに呟く。


「えぇ! そういう問題じゃないよ! 怖いよぉぉ!」

 美鈴は半泣きになる。


「俺を信じろ……。すまない、俺にはこれ以上の言葉は思い浮かばん……」

 志之崎は勢い良く崖を飛び降りる。美鈴の悲鳴と共に、山を下りていく……。


「俺の風魔法なら、ウイングスーツのように応用して滑空できるはずだ……。しばらく辛抱してくれ……」

 志之崎は美鈴を背負っている腕に少し力を入れる。


「もう! シノさん! 信じてるよ!」

 美鈴は半泣きのまま志之崎に強く抱きつく――。


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