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マナの天啓者  作者: 一 弓爾
黒幕
55/102

五十五話 マナ知覚の覚醒

 志之崎達は、広間を出て、客間に案内される。


「…………ずっと思ってたんだけど、典両大学の『野村』ちゃんだよね? 何でここにいるの?」

 美鈴が不思議そうに声をかける。


「野村……その名は偽名です。私は宮宇治狐調……。宮宇治家当主の娘ですよ、小鳥遊美鈴さん」

 狐調は丁寧に質問に回答する。


「えぇ! そうだったの? 全然知らなかった……。って言っても、だいぶ前に二回くらい学校で話したことあるくらいだけど……」

 美鈴は単純に驚いている。


「そうね……。小鳥遊さん、今は今後どうするかを志之崎さんとよく話し合ってくださいな。良い答えを期待しておりますよ……」

 狐調は静かに襖を閉じる……。


「……どうしよう、シノさん! こんなことになるなんて思ってなかったよぉ……!」

 美鈴は焦った様子だ。


「美鈴、安心しろ。美鈴の傍には俺がいる……。まずは状況確認だ。奴らの目的は分かってるか?」

 志之崎は優しく語りかける。


「シノさん……。ありがとう! えっと、あの人達は陰陽師で美鈴達を仲間にしようとしてる。でも、悲願とか考え方は『邪悪』な感じがするんだよね……」

 美鈴は考え込んでいる。


「……俺も同意見だ。奴らは危険だと思う。仲間になるのは避けるべきだろう。だが、断ればおそらく強引にでも従わされる。もしくは、殺される可能性がある。狐全の目的はあくまで『陰陽師の栄華を取り戻す』ことだ。仲間になるのを断るということは、今後敵対する可能性があるということ……。魔法に覚醒して間もないうちに俺達は消されるかもしれん……」


「嫌だよ……。美鈴、もっとシノさんから剣術学びたいし、もっと一緒にいたい!」

 美鈴は悲しげに声を上げる。


「……そうか……。だったら、やることは決まったな……。美鈴は自分の使える魔法を知覚できているか? あの広間に行ってからマナの知覚というのが俺は上がっている」


「美鈴も上がってると思う。魔法は《使役しえき魔法――不可視の守護者(インビジブルゴーレム)》だって知覚できてるよ!」

 そう言い美鈴は魔法を発動したようだ。


 そこで、志之崎は異変に気づく。〝見えない何か〟に頭をなでられているのだ……。


「……美鈴。魔法で俺の頭をなでているか……?」

 志之崎は静かに尋ねる。


「うん! この子、美鈴の言うこと聞いてくれるみたい! 美鈴のしたいことしてもらったんだ~!」

 美鈴は緊迫した状況に合わない明るい表情をする。


「……美鈴は俺の頭をなでたかったのか?」


「え、いや……シノさん背が高いし、いつかヨシヨシしたいなって思ってて……。あ、でもヨシヨシもしてほしいです!」

 美鈴は焦っているのか、本音まで全て話していると思われる。


「……ふっ、美鈴は面白いな……。この局面を切り抜けられたら、ヨシヨシくらい何度でもしてやろう。俺の魔法は二つ知覚できている。《反射魔法》と《風魔法》だ。俺が使うなら、こう使うのが良いだろう……《風魔法――風魔刀ふうまとう》」


 志之崎は日本刀に風を纏わせる。刀身にはうっすらと風が逆巻き、美しい風の線状模様が浮かんでいる。


「わぁ~! 綺麗! いいなぁ、美鈴も風の魔法使いたい!」


「魔法はおそらく適性などがあるのだろう。志之崎流剣術は風にまつわるものが多い。いつか使えるようになればいいな……」

 志之崎は穏やかに返答する。


「うん! ……よし! 二人共魔法が使えるなら、逃げよう!」

 美鈴の目に覚悟が宿る。


「ああ……逃げるなら早い方が良い。大体、十分じゅっぷんは経っている。おそらく、部屋の外には誰かが待機しているだろう……。宮宇治家には申し訳ないが、客間の壁をぶち抜いて外に脱出するぞ」


「了解、シノさん! インビジブルゴーレム……いや、『インビジさん』は力が強いみたいなんだ~。インビジさんに壁を壊してもらうよ!」


 美鈴は念じることでインビジブルゴーレムに指示を出したようだ。


 ――壁の崩壊する轟音と共に、志之崎と美鈴は外へ脱出する。

 しかし、そこには王誠の姿があった……。


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