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マナの天啓者  作者: 一 弓爾
黒幕
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五十二話 敵

 洋平達はカフェ内でまず傷の治療をした。


 裁奈が舞里に《回復魔法》を使うも、呪いを治療することはできなかった。


 洋平の《体質同調魔法》を応用して治すことも話し合ったが、《呪詛魔法》に体質同調する危険性の方が高いという結論になった。


 洋平自身が呪いに耐えられるか未知数であること、呪われた体質で舞里に触れると逆に呪いを進行させる可能性があるからだ。


 傷の回復が終わり次第、裁奈探偵事務所に戻った――。


 ◇◇◇


「舞里ちゃん……。僕が弱いから……。僕なんかを庇って…………」

 晴夏は涙を流す。


「晴夏、お前ェは悪くねェよ。俺だって、狐調が宮宇治家の当主の一人娘だなんて思ってなかった。急な攻撃防ぐのも至難の業だ……」


 洋平は晴夏に静かに語りかける。


「……でも、僕が隙を作ったから……。いや、テレパシーで最初から狐調の正体に気づけてたら……。僕が……僕のせいで……。ごめんね舞里ちゃん……」


 晴夏は更に涙を流す。


「……晴夏……。お前ェの目の前で渡辺さんは攻撃を受けた……。その状況考えると、お前ェの気持ちもよく分かる。よく分かるけど、渡辺さんは『晴夏だからこそ』身をていして守ったんだと思う。大切な人じゃねェとそこまではできない……」


 洋平は一息溜めて、言葉を紡ぐ。


「晴夏の気持ちに寄り添わないなんてことは言わねェ。むしろ吐き出してくれ。……ただ、今は渡辺さんを助けるために、晴夏が手に入れた情報が必要だ。情報の詳細聞いてもいいか……?」


 洋平は晴夏に目線を合わせる。


「……分かった。今は舞里ちゃんを助けるのが最優先だ……。みんなにまだ伝えれてないことは大きく三つあるんだ。一つは黒幕について。黒幕は宮宇治家当主の宮宇治狐全(こぜん)だ。固有魔法までは読み取れなかったけど、おそらくかなり強いと思う。狐調の心に恐怖の対象としての感情が混じってたから」


「宮宇治狐全……。無茶苦茶しやがって……」

 洋平は怒りで拳を強く握る。


「二つ目は上道院家との関係。僕も意外だったんだけど、王誠と絡瀬はマナ知覚の覚醒者になったところをスカウトされたみたいだ。正確に言うとヨウ君みたいに襲われて、その時にマナ知覚に覚醒したみたい……。その場で戦った結果、狐調がスカウトしてる」


「つーことは、黒幕である狐全が典両区とか周辺住民の中で、マナ知覚の才能がある者を探して仲間にしてるってことか……。上道院がスカウトされた側の立場ってのは意外だな。上道院家で他に仲間がいるか分かるか?」


 裁奈が質問する。


「う~ん、僕があの場で読み取れた情報の中には、王誠と絡瀬しか上道院関連の人はいなかった。短い時間だったし、確実かは分かんないですけど……」


「なるほど。ちなみに、狐全がマナ知覚の覚醒者を集めてる理由は分かるか?」

 裁奈が再度質問する。


「そこまでは分からなかったんですよね……。ただ、上道院ではなく、陰陽師が覚醒者を集めてるとなれば、戦力増強とかそっち関連なのかもです」


 晴夏は推測を述べたようだ。


「ああ~、その可能性はあるかもね。魔法を使える人自体が少ないから、今から覚醒者を集めれたらかなり有利だもんね!」

 空乃が声を出す。


「そうなると、戦争とかテロでも起こす気なのか……? 何にせよ、止めねェとだな。晴夏、残りのもう一つの情報は何なんだ?」


 洋平は顎に手を添えつつ、晴夏に尋ねる。


「三つ目の情報だね。コレは呪詛魔法について。舞里ちゃんにかけられた呪いに影響を与えられるのは現状、狐調だけ。読み取れた情報と回復魔法が効かないことを含めて考えた結果ではあるけどね。そして、狐調は呪いの浸食を遅らせたり、加速させることができる。それも『遠隔』で……」


 晴夏は暗い顔をする。


「チッ、遠隔での魔法使用ができるのか……。厄介過ぎるな……。舞里……。早く助けてやるからな……。晴夏、狐調がいる場所の見当は付いてるか?」


 裁奈は舞里の苦しげな様子を見て、裁奈自身も辛そうに尋ねる。


「はい。質問する中で読み取れました。宮宇治家本邸は『第六典両霊山』にあります。どうも裏道があるようで、そちらから進んでいけば入れるみたいです。道は任せてください。他の拠点も読み取れてます」


 晴夏は真剣な表情だ。


「そうか。そこまで情報がありゃ十分だ。今すぐ動きてぇが、流石に傷とマナを回復させねぇと戦えねぇ……。本邸ともなれば敵も多いだろう。……二日後、本邸に攻め込む。それでいいか?」


 裁奈は他の三人の顔を見る。


 三人は同時に頷く――。


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