四十九話 乱戦カフェ⑤
「悪ぃ和泉、遅くなった。苦戦してるみてぇだな。助っ人登場だぜ……!」
登場と同時に裁奈は《荊罰魔法――荊絡蠢》で成尾と絡瀬を攻撃する。
ただし、成尾が「攻撃がくる」と言ったため、避けられてはいる。
「裁奈さん、助かります。『メッセージで連絡』してから思ったより、時間かかってましたけど、何かトラブルっすか?」
洋平は野村が高上に憑依されてすぐにスマホで連絡していた件を確認する。
「ああ、カフェ周辺に召喚獣がいてな。ソイツらをアタシと舞里で倒してたら、遅くなった。とりま、コイツらボコすぞ。滅多にねぇチャンスだ……!」
裁奈は舌舐めずりする。
「ハハ、相変わらず攻撃的すね、裁奈さん。俺は今《体質同調魔法》で火の玉女の魔法と同調しながら戦ってます。なので、直接の火の玉女の魔法は効きません。スーツメガネは火水雷風土の基礎魔法を使って戦ってきます」
手短に敵の情報を共有する。
「了解だ。あと、火の玉女は《火炎魔法》以外にも何か魔法を使えるのかもな……。死角から攻撃したつもりだったんだが、バレちまった。『感知、視野拡大』系統の魔法かもな」
裁奈は推測を述べる。
「敵が増えた……。もう少しで倒せそうだったのに……」
成尾は呟く。
「成尾さん、早めに倒しましょう。言いたくはありませんが、王誠様がこれ以上は持たないかもしれません……」
絡瀬は王誠の方を一瞬見て、悔しげに歯を食いしばる。
「分かりました。状況も状況なので、固有魔法である《感知魔法》を全開にします。マナ消費が増えるので、奥の手ではありますが、相手の攻撃を『予見、解析しやすく』なります。《感知魔法――戦闘特化感知、全開》……」
成尾は小さい声で詠唱する。
「私も全力を出します。《束縛魔法――自己使用、一属性制限、水魔法》」
絡瀬の五色の羽衣はだんだんと、青一色に変化していく
「《一色の羽衣――水》……!」
「相手も全力でくるみてぇだな。いくぜ、和泉……!」
裁奈が号令をかける。
「はい!」
洋平は成尾に攻撃を仕掛ける。
《火炎魔法――噴射移動》で接近し、《火炎球》十数個で取り囲み、洋平諸共に火炎球を放つ。
しかし、成尾はそうなることを〝予見〟していた動きをする。
成尾は洋平以上の出力で《噴射移動》を使い、洋平の首をラリアットで捕らえたまま五メートル奥のテーブルに叩きつける。
テーブルは勢いで破壊され、洋平の口から鮮血が舞う。
成尾は攻撃の手を緩めず馬乗りになり、肘から炎を噴出しながら、洋平の顔面目掛けて拳を三度振り下ろす。
「ガハッ……。クッソ物理攻撃かよ……」
洋平はそう言いながら、口から血を成尾の顔面に噴きかける。
しかし、攻撃を予見していたのか、成尾は顔をずらして躱す。そして、更に打撃を放とうとする。
「ハズレ……。さようなら」
成尾の瞳には淡々とした殺意が宿っている。
「寂しいこと言うなよ、もうちょい遊んでけ……」
成尾が拳を振り下ろす前に〝洋平の後頭部から背中にかけて〟炎を噴出し、中腹部に頭突きを放つ。
相当なマナを込めたため、成尾の予見した速度を超えていたのだろう。
「うっ……!」と言い成尾はふらつく。
洋平はその隙を逃さず、顔面に《炎の鉄拳》を打ち込む。
成尾は三メートル程吹き飛び、イスを大破させてそのまま動かなくなった……。
洋平はふらつきながら立ち上がり、裁奈の方を確認する――。




