四十六話 乱戦カフェ②
「んじゃあ、俺ァ、絡瀬先輩っすね。早速いきますよ。《体質同調魔法、メモリーオブマナ》《火炎魔法×狼男――炎狼》……!」
洋平の身体は火炎魔法と狼男を合成した体質〝炎狼〟となる。
合成魔法を使うとかなりのマナ消費ではあるが、その分強力だ。
「……あなた、そんなこともできるようになったのですね……。では……《基礎魔法、重複使用》《五色の羽衣》……」
絡瀬は〝火水雷風土〟の五属性を一度に使い、身体中に纏わせたようだ。
赤青黄緑茶のまだらになった羽衣が絡瀬の防御壁兼、身体能力強化となる。
「おいおいおい。そんな技使えたんだな。お前ェは魔法適性が随分と多いんだな……」
洋平は単純に驚きの声を上げる。
「……前回は失態をさらし、上道院家の顔に泥を塗ってしまいました。上道院家の側近こそが我が絡瀬家の使命……。必ずや、王誠様の力になってみせます」
絡瀬は冷静な声色で、メガネを右手の人差し指で軽く押し上げる。
「そうか……。また、泥塗ることになるけど、あんまりしょげないでくださいね。真面目ガネ先輩……」
洋平は一気に《炎狼噴迅》で高速移動する。
そのままの勢いのままに《炎狼掻》による裂撃を複数放つ。
対して、絡瀬は五色の羽衣による身体能力強化で、揺らめくように攻撃を全て躱す。
その後、《五色の弾幕》を広範囲に撒き散らす。
五色の美しい弾丸は、周囲のテーブル諸共に洋平を吹き飛ばす。
「ちっ、上道院の店じゃねェのか? 備品ぶっ壊れてんぞ……?」
「あなた達が来たから仕方ありません。壊れた物はまた買い直します」
絡瀬は淡々と答える。
「あァ、そうですか。金持ちは違いますねェ。んじゃあ、俺も遠慮なくぶち壊すぜ」
洋平は近くにあったテーブルを〝高上〟目掛けて爆炎と共に投げつける。
まずは、野村を解放するのが先だ……。
「面倒なことを……。私との戦闘に集中した方が身のためですよ……。《五色の砲丸》……」
五色のまだらの砲丸はテーブルを粉砕し、洋平まで飛んでくる。
「真面目がね、案外パワータイプか」
そう呟きながら、五色の砲丸を躱しつつ、周囲にあるテーブルやイスを〝高上〟目掛けて投げ続ける。
絡瀬はそれらを破壊し続ける。
「いい加減、鬱陶しいです。《五色の光芒》……」
絡瀬は手を左右に広げ、前に出す。詠唱と共に、左右の手から五色に輝く光線が放出される。
光線はテーブルなどの備品を消し去りながら、洋平を狙う。
絡瀬の手の動きに合わせ、光線は上下左右に動き洋平を徐々に追い込んでいく……。
「真面目がねも、大概めんどいことしてんぜ。しゃあねェ、躱しつつ突っ込む……!」
洋平は光線を炎狼噴迅の加速で何とか避けながら、絡瀬に近づく。
あと、四歩だ……。
とりあえず、お前ェからぶっ倒す……!
刹那、洋平は左方向から、炎の塊を受けて吹き飛ばされる。
ぶつかったテーブルが炎と共に弾け飛ぶ……。
「お待ちしておりましたよ……成尾さん……」
絡瀬は淡々と呟く。
「ごめんなさい、遅れました……。色々と業務があったので……」
成尾は静かに返答する。
「痛ェな……。つか、お前ェ火の玉女じゃねェか……。高上も上道院とつるんでたから、お前ェもそっち側だとは思ってたが、こんなタイミングで来るとはよォ……」
洋平は二人を睨む。
「よく会うね……。でも、君めんどくさい魔法使うからあまり関わりたくない……」
成尾はマイペースな口調で話す。
「うっせェよ。俺も最初に半殺しにされてから、お前ェのことは嫌いだ。まとめてぶちのめす……!」
とはいえ、どう戦う? 《体質同調魔法》の自動発動を使うのもアリではある。
絡瀬の場合、五属性の魔法を使っているため、今の俺の知覚力じゃ完全に同調しきれずおそらくダメージをもらう。
だが、成尾は今までの戦いから、シンプルな《火炎魔法》を使う可能性が高い。
成尾の魔法に体質同調しながら、戦うのも一案ではある……。
敵との距離があったため、洋平は仲間の様子を一瞬確認する。
空乃は王誠と戦っている。
王誠は稲光を散らしながら剣戟を振るっている。
しかし、空乃の方が一枚上手だ。
王誠の攻撃をいなし、確実な一撃を何度も入れているのだろう。王誠は傷が増えて、《回復魔法》を使いながら何とか戦っている様子だ。
晴夏は野村……〝憑依している高上〟に苦戦しているようだ――。




