四十五話 乱戦カフェ①
四日後の金曜、十八時。
住宅街からやや離れた場所にある、上道院コーポレーション経営のカフェ付近の歩道にて。
「野村さん、緊張するかもですけど、俺らいるんで心配しないでくださいね」
洋平は野村に声をかける。
「ええ、あなた達がメッセージで今日の計画を教えてくださったので、不安感は少ないです……。もしかしたら戦闘になるかもしれないのですよね? その際は空乃さんが私を連れて脱出してくださると聞いたのも安心です……」
野村は言葉ではこう言っているが、心配そうな様子が伝わってくる……。
「私がしっかり野村先輩を守るので、ご安心ください!」
空乃が胸を叩いて見せる。
「……はい! よろしくお願い致します」
野村の表情が少し明るくなる――。
野村と一緒にカフェに洋平達は入っていく。
カフェの大きめのテーブルには王誠、絡瀬、高上の三人が座っていた。
他には人はいない。表の看板にも〝CLOSED〟の文字があった。
また、カフェ自体が広く、テーブルが二十台はありそうだ。
「王誠さん、研究の進捗共有で来ました。あと、後ろのお三方は私のことで相談に乗ってもらってる人達です……。一緒にいてもらってもよいですか?」
野村はやや緊張気味に話す。
「狐調……。この下民共を連れて来て、何のつもりだ……?」
王誠は明らかに苛立ちを表す。
「……私、前回あなた達と会ってから、体調が悪いのです。何かされましたか?」
野村は静かに問いかける。
同時に洋平達が野村の前に出る。
「何を言い出すかと思えば……。だが、一々連れてくる手間が省けたとも言える。高上……貴様の出番だ……」
王誠は高上の方を一瞬見る。
「ホッホッホ。では、いきますぞ……!」
高上は何かを念じる。刹那、野村の身体はゆらりと揺れる。
そして、雰囲気そのものが変わる。百戦錬磨の戦士のようだ。
「この童の身体はワシが貰い受ける。どうする? ヌシらが大人しくついてくるなら、危害は加えんぞい」
〝野村を憑依で乗っ取ったと思われる高上〟が言葉を出す。
「クソッ、気を付けてたんだが、一瞬かよ……。晴夏、空乃俺らでコイツらを無力化する。あまり時間はかけてらんねェ」
洋平は二人に目くばせする。
同時にポケットの中でスマホを操作しておく。
「野村先輩は僕が念力で抑える……」
晴夏が短く答える。
「おけ。あのお爺ちゃんは寝てるのか、無防備だ。手早く私がヤルよ……」
空乃が高上に高速で接近する。
「フハハ、月下空乃。貴様の相手は俺だ! 完膚無きまでに叩きのめす! 《将剣魔法――ソハヤノツルキ》……!」
炎を纏っている一振の刀が王誠の右手から出現し、空乃の忍刀を防ぐ。
「また王誠先輩ですか……。前にボコボコにしたんだから、もういいでしょ?」
空乃は冷ややかに言葉を投げる。
「黙れ、あの頃の俺ではない……。ボロ雑巾にしてやるから、待っていろ……!」
王誠は以前とは比べ物にならない速度で剣を振るう。
「へ~、前よりかなり動きが洗練されてるね。修行でもしたんですか? まあ、でも私の方が強いですけど」
空乃は王誠の攻撃を見切り、躱しつつも的確に忍刀で攻撃する。
王誠はかろうじて弾き返す。
「くっ、素の身体能力では及ばぬか……。及ばぬなら足すまでだ……! 《雷魔法――雷纏》……!」
王誠は身体中から、凄まじい稲光を散らす。
相当なマナを込めたのだろう……一気に身体能力が上がり、王誠は空乃と互角に剣を交える。
「おお! やりますね、王誠先輩。私もギア上げていきますよ……」
王誠と空乃は幾度となく剣戟音を鳴り響かせる――。




