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マナの天啓者  作者: 一 弓爾
調査
44/102

四十四話 異常体調

 隣の空き部屋にて。


「俺達は人文科学科の二年生です。俺は和泉洋平です」

 軽く会釈する。


「僕も同じく人文科学科の小岩井晴夏です」

 晴夏も会釈している。


「私は月下空乃です! 野村先輩に聞きたいことがあるんです!」


「はい。構いませんよ」

 野村は落ち着いた様子だ。


「えっと、その~、急にこんなこと言われてもだと思うんですけど、何か最近変なこととかありませんか? 例えば、魔法みたいなのを見かけたり……」

 空乃は話しながら、急にこんなことを言うと引かれないかと気にしているようだ。


「魔法……ですか……? 特に何もないかと思いますけど……。強いて言えば、肩こりがあるくらいでしょうか……。これは研究で疲れてるだけかもしれませんが」

 野村は真面目な顔で答える。


「そうですよね~。すみません、急にこんな質問しちゃって……」

 空乃は取り繕うように笑う。


「……野村さん、肩こり以外にも何か異常があるんじゃないですか? 例えば、頭がぼーっとしたり、『何かに取り憑かれている』ように身体が重たい感じがしたりしませんか?」

 晴夏が苦しげな表情で尋ねる。おそらく、テレパシーで野村の心を読んでいるのだろう……。


「…………そうです。実は、十日程前から何かに取り憑かれたように、身体が重いのです。何故分かったのですか……?」

 野村は不思議そうに尋ねる。


「僕は……『霊感』があって、何となく取り憑かれてる人が分かるんです。いつ頃からか分かりますか?」

 晴夏はあえてテレパシーのことは伏せているようだ。


「え? わたくし、霊に取り憑かれてるということですか……? たしか……十日前だと上道院王誠さんと会った時以来ですね……。ゼミが一緒なので、しばらく休んでいる王誠さんに研究の進捗共有や資料を渡しに行ったのです。彼は上道院コーポレーションのお仕事も手伝いつつ大学に通ってますから、たびたび、わたくしが対応しているのです」

 野村はやや上を見つつ、思い出しながら話している。


「……なるほど。これはあくまで可能性の話ですけど、王誠先輩が魔法等で何かしたのかもしれません……。王誠先輩以外に思い当たる人はいますか?」

 晴夏が尋ねる。


「魔法……。科学を志す身としては、にわかには信じがたいです……。しかし、実際に異常が出ているのも事実です……。王誠さんと会った時に絡瀬さん、あともう一人逞しいお爺さんもいました。お爺さんは初めてお会いしましたね。たしかお名前は高上武揚こうがみぶようさんだったかと記憶しています。その他は今まで通り大学に通っていました」

 野村は半信半疑な様子だが、状況を伝えていく。


「高上……! 野村先輩、その時何かされたりしませんでしたか? 目を凝視されたりとか」

 洋平は高上の名前が出たことに反射的に質問をする。


「いえ……そのようなことは……。研究の共有をすることを意識していたので、気づけていないだけかもしれませんが……。高上さんをご存じなのですか?」


「……以前に会ったことがあって、『憑依などの霊的な魔法』を使っていたんです……。名前が出たもので、つい急に質問しちゃいました。すみません……」

 洋平は軽く謝る。


「いえいえ、憑依などの霊的な魔法ですか……。……今の状況とちょうど合ってますね……」

 野村は不安げな表情をする。


「野村先輩、次に王誠先輩と会う機会ってありますか? もしあれば僕達もついていっていいですか?」

 晴夏が真面目な口調で提案する。


「え……。……異常があるのもたしかですものね……。ちょうど四日後の金曜日に上道院コーポレーション経営のカフェで会う予定です。……王誠さんには伝えない方がいいですよね?」

 野村は晴夏を見る。


「そうですね……。隠し事をしているようで拒否感があるかもしれませんが、万が一魔法関連の事件に巻き込まれてたら良くないので、ご協力お願いしたいです」


「……分かりました。王誠さんと会うカフェの場所、時間を伝えます。よければ、連絡先を交換していただけませんか? そちらに送っておきますので」

 野村はスマホを取り出す。


 洋平達は野村と連絡先を交換する。


「それでは、失礼します。何か困ったことがあれば僕達の誰でもいいので、連絡してください」

 晴夏がそう言い、部屋から退出する――。




「晴夏……お前ェ顔色悪ィぞ。大丈夫か?」

 洋平は晴夏を心配し声をかける。


「大丈夫だよ……。でも、野村さんの心を読むのは大変だった……。というか、かなり読みづらかった……。霊とか呪いみたいなのが騒いでたんだ……。あの状況を放っておくのは絶対良くないよ……」

 晴夏は野村を心配している様子だ。


「そうか、すまんな。いつも大変な役割してもらって……」

 洋平は晴夏の目を見る。


「大丈夫だよ。ヨウ君がそう言ってくれるだけでも、頑張った甲斐があるよ。後で、ヨウ君の心読ませてね」

 晴夏は苦しげながら優しく微笑む。


「晴夏、ありがとね。私じゃ野村さんの『魔法的異常』は分からなかったよ……。疲労が長期で蓄積してるのと、氣が乱れた感じなのは分かったけどさ……」

 空乃は自分の意見も添える。


「お前ェら、すげェな。あの一瞬でそんなこと分かるんだな! 俺は単純に綺麗な人だな~、何も巻き込まれてないといいな、くらいしか思ってなかったわ」

 洋平は軽く笑う。


「ヨウ君……もっと緊張感持ってよ? もう……僕達がいないと何もできないんだから……」

 晴夏は呆れたような、嬉しそうなような顔をする――。


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