四十話 陰陽師一族
三日後、裁奈が報告したいことがあるとのことで、裁奈探偵事務所に五人は集まっていた。
洋平は三日前にあった、裁奈との出来事が頭の中で処理しきれずにいた。
裁奈のしている〝粛清〟。そして、抱きしめ合っていたことだ……。
「おう、みんな集まったか?」裁奈が話し始める。
一瞬、洋平の方を見るも特に気にしている様子ではない。
俺が気にし過ぎなのか……? コレが大人の距離感……? 分からん…………。
「ヨウ君は直接会ってたかもだけど、僕らは久しぶりですね! 裁奈さん」
晴夏が元気に挨拶する。
「そうだな、晴夏。舞里から聞いてるぜ。だいぶ強くなったみてぇだな」
裁奈は口角を上げる。
「舞里ちゃん、そんなこと言ってくれてたんだ! はい! 結構強くなれたと思います!」
晴夏は嬉しそうな顔をする。
「……晴夏ちゃん、素直だし、努力家だから。この調子で一緒に強くなりたい……」
舞里も嬉しそうに微笑む。
「ヨウも強くなったよ! 炎狼を使えるようになってから、見違える程だよ。私もやりがいあるよ~。氣というよりはマナなのかな? マナの扱いもうまくなってると思う!」
空乃は明るく笑う。
「空乃の半殺し稽古のおかげだ。いつもありがとな。氣とマナは違いがあるんだろうけど、俺にはよく分からんのだよなァ……」洋平は頭をかく。
「アタシの理解にはなるが、マナとはエネルギーの最小単位の名称だ。マナエネルギーの一種に『氣』というものがあると考えると理解しやすいかもな」
裁奈が推測も含めた言葉を出す。
「なるほど、たしかにそう考えると分かりやすいかも……」
洋平は納得した声を出す。
「そうそう、みんなに集まってもらったのは、情報共有したいことがあったからなんだ。上道院コーポレーションの方は新しい情報はない。ただ、『魔法』の方に注目して調査してると可能性が一つ新たに出てきた。典両区には、大昔『宮宇治』っていう陰陽師一族がいたんだ。随分前に滅びたって話だったんだが、どうもまだ典両区にいるみてぇなんだ。みんなは噂程度でもいいんだが、心当たりあるか?」
全員から「聞いたこともない」との返答がある。
「そもそも、そんな情報どこから出てきたんですか?」洋平は気になり尋ねる。
「仲が良い情報屋にこの手の魔法とか陰陽師とかが好きな奴がいてね。調べてるうちに存在を知ることができたらしい。どこに住んでるかまでは分からねぇんだが、典両区にはいくつか霊山がある。そのうちのどこかに住んでるんじゃねぇかって話だ。マナの知覚ができるにはそれなりの適性や才能が必要だ。陰陽師ともなれば十分適性はありそうだしな……」
「そっか。上道院コーポレーションに目が向きがちだったけど、マナの知覚者が多そうな組織で考えると、陰陽師っていうのはあり得そうですね」
晴夏が顎に手を添える。
「ふむふむ……。霊山のどこかって可能性があるなら、私片っ端から探しに行ってみましょうか?」
空乃が冗談ではないトーンで話す。
「いや、空乃。アンタが強いのはよく分かってる。でも、単独で探しに行くのは止めておこう。アタシも含めてだが、まだ強さが足りてないかもしれねぇ。敵の規模や能力値が未知数な部分も大きい。しばらくは、今の調子で稽古と調査を並行しつつ、探っていこう。陰陽師の件はアタシが情報屋と協力して調べてみる。核心的な情報が得れたら、全員で動きたい。どうだろう?」
裁奈は全員の目を見る。
全員から同意の返事があり、この場は解散となる――。




