三十六話 殴り込みじゃねぇよ!
翌日。裁奈探偵事務所に十二日ぶりに五人は集まっていた。
「裁奈さん、お久しぶりっす」洋平は笑顔を向ける。
「おう、久しぶりだな和泉。やっぱ、グループメッセージだけでやり取りしてるのと、顔見るのとじゃ気持ちも違うな」
裁奈は口角を上げる。
――お互いに今日までにあったことの情報共有をし、今後の動きの確認をすることになる。
「裁奈さん、上道院エネルギー株式会社に一人で殴り込み行ってたんすか⁉ 俺達に一言でも言ってくれればよかったのに……」
洋平は裁奈からの報告を聞き、思わず声を上げる。
「アホか、和泉。殴り込みじゃねぇよ。調査だ、調査。こういうのは一人のが動きやすい。まあ結局、尻尾は掴めずだったけどね。ただ、上道院毅王は今回の魔法関連の事件には関係ないのかもしれん」
「そうなんですか? というと?」晴夏が声を出す。
「毅王のボディーガードに『志之崎刀護』って奴がいたんだが、アタシが《荊罰魔法》を使ってるにも関わらず、魔法を使っていなかったようだ……。それに、毅王の口振りからして、本当に魔法のことは知らない様子だった。上道院コーポレーションはデケェ会社だから、他の会社と王誠が動いてる可能性もあるけどな。少なくとも、毅王と王誠の兄弟で動いてる訳じゃなさそうだ……」
「そっか~。何が目的で動いてるんだろうね……。魔法を使える人を集めて……」空乃が難しそうな顔をしている。
「……魔法が使えることは、マナを知覚できること。前に空乃ちゃん達から推測で聞いてた、上道院コーポレーションの事業でマナを利用しようとしてるのかも。もしくは、別の組織が王誠と組んで何かを企んでるのかな……」
舞里がゆっくりと話す。
「現状じゃ分かんねぇな。とりま、アタシは探偵事務所に戻るわ。街に召喚獣が撒かれたのも気がかりだ……。情報を整理してまた動いていきたい。あと、どっかのタイミングで和泉に手伝ってほしい仕事があんだ。いいか?」
裁奈は洋平の目を見る。
「いいですよ。俺だけでいいんすか?」洋平は尋ねる。
「ああ、基本はアタシが動くから大丈夫だ。見ておいてほしい仕事があってな……」
裁奈はどこか思い詰めたような表情だ。
「……分かりました。俺を鞭でしばき回すとかじゃなければ大丈夫です!」
洋平は意識的に笑顔で返答する。
「安心しろ。和泉をしばき回すために連れ出す訳じゃねぇ」裁奈は軽く笑う。
情報共有後は、今まで通り稽古を続ける。
そして今後は、各々魔法関連の事件の調査をすることになった。
調査といっても、洋平と晴夏、空乃は大学に通い怪しい人間がいないか確認する。
裁奈は情報を整理後、単独で動いていく。
舞里は今まで同様、探偵事務所の仕事と裁奈のサポートをすることになった――。




